21 / 221
団長の娘
しおりを挟む
「そういえばさ、ちょっと気になるんだけれどいいかな?」
「何でしょうか?」
「襲来の場所はどうやって知っているんだ? この前はここに来るってのが確実にわかってたよな。何か法則でもあるのか?」
その質問に答えたのはサラだった。
「はい、それは大聖堂にある真実の焔という火が存在していて、そこに記されるんです。見ればわかりますよ、ちょうどよいですこれからみんなでそこに行くので幸一さんも行ってみましょう」
「ちょうどよいな、それを明日見に行くところだ、一緒に行こう」
国王がそういった時、ガチャとドアを開ける。
「国王様、今帰還しました」
ドアの方からそんな声が聞こえると、幸一達は視線をそっちに移す。
一人は紺色の髪、肩までかかったショートヘアー。騎士のような恰好をしている少女。
その少女が幸一に接近し、品定めをするようにじっと見る。
「君がうわさに聞くセクハラ勇者か──」
「そ、その名前はやめてください」
先ほどのセクハラ疑惑、一部の人はいまだに幸一の事を疑っており影でそういったあだ名をつけていた。
おそらく彼女にもそのあだ名が伝わっていたのだろう。
幸一が慌ててその呼び方を否定する。
「あ、マグブライトさん、お久しぶりです」
すると隣の席にいたイレーナが頭を下げて挨拶をする。
彼女の名はマグブライト、本来は魔王軍との戦いなどで冒険者たちを束ねる兵士団長だ。今までは地方の治安維持活動に行っていて昨日帰国し今日ここにいる。
父親が元兵士団長だった影響から、男っぽい口調やそぶりをしているが本来は気さくでとても話しやすい人物である。
恥じらう表情をしながら幸一を見つめる。
「次は私をターゲットにしようとしているのかね? 私、そういった色恋事は未経験でね」
「へ、変な冗談はやめてください──、返す言葉に困りますから」
「本当かね? いきなり密室に連れ込んで押し倒したり──」
「しません!!」
「信じるよ、これでも乙女なのだからね」
そうやってマクブライドがニヤリと笑みを浮かべて幸一をおちょくる、するとそれに対し良い顔をしない人物が一人だけいた。
「…………」
マクブライドに後ろにいる、沈黙のまま幸一を少し睨むように見つめる少女。
「あ、ラミス、気にしなくていい。彼は悪い奴なんかじゃない。それになにかあったら私が彼を切り落とすから安心してくれ」
「んな物騒なことを──」
「ああ──すまない、彼女には事情があってね。紹介するよ、彼女はラミスだ。私のルームメイトであり親友でもある、よろしくな」
彼女はアブラム・ラミス。灰色の髪の毛にドリルのような髪型をしたツインドリルが特徴であった。
彼女は幸一から目をそらしながら、ぺこりとお辞儀をした。
話が本題に戻る。明日の真実の焔への出席だ。
「とりあえず明日は特に用事はない、大聖堂にある真実の焔だっけ?是非見に行かせてくれ」
「わかりました、じゃあ明日の九時頃に宮殿の出口の前にいてください」
サラの言葉に幸一はうなずく。そして話は終わり国王やラミス、マクブライド達は部屋に帰っていた。
夜、雲ひとつなく、夜空には満天の星が鮮やかに描かれていた。
「おかえりなさい、マクブライド様」
「ラミス、ただいま」
任務である宮殿の巡回を終えて寮のエントランスに戻ったマクブライド。そこにはルームメイトで後輩のアブラム・ラミスがそこにいた。
「ひどいです、私を置いてどこかに行ってしまうだなんて……」
「すまないな、どうしても用があって抜けなくならなくてはならなくてね。それと、二人でいるときは様なんてつけないでくれ。約束だろ!!」
寮の廊下を歩きながら、二人は話し始める。
「ラミス、今は大丈夫か? 今回のことであのトラウマを思い出すのではないかと心配でね──」
昼間のやりとりの問いにラミアははっと息を呑み、下を向いてキョロキョロしながら話し出す。
「あ、その──、大丈夫です。何とか我慢します。だから安心して……くだ……さい」
「そうは見えないよ、無理はしなくていい。やっぱり怖いみたいだね」
「やっぱり、男の人は……怖い」
そううつむきながら囁く、心の底からの怯えだった。
ラミスは中央政府の権力が届かない、地方領主の生まれで5人家族の末っ子だった。
そしてその中で不遇な扱いを受けていたと聞く。
ずっと下の身分で時にはストレスのはけ口に暴力を受けた事もあったという。
いつも自分を頼ってくれる可愛い後輩。ルームメイトでもあるラミス、マグブライトは家族のように、親友のように接していた。
「気にするでないぞ!! 君のせいなどではない、だから安心してくれ」
作り笑いの笑みを見せて言葉を返す。その表情はどこかおどけたような表情をしていた。
マグブライトの得意技──。
彼女は一見すると生真面目で堅そうだが、時折おどけたり茶目っ気があるところがある。そうやって緊張している相手をリラックスさせるのが得意だった。
「ありがとうございます、マクブライド」
「こちらこそ、何かあったら絶対にお前を守るからな……」
決意を宣言しラミスの両肩をつかむ。
そして二人は自分の部屋に入って行った。
ドアを開けながらマクブライドは決心する。
(ラミスは私が守る!!)
心の中で大きく宣言する。
自分の友であるラミス、彼女にもう悲しい想いはさせない。そんな決意を胸に彼女は夜を過ごした。
「何でしょうか?」
「襲来の場所はどうやって知っているんだ? この前はここに来るってのが確実にわかってたよな。何か法則でもあるのか?」
その質問に答えたのはサラだった。
「はい、それは大聖堂にある真実の焔という火が存在していて、そこに記されるんです。見ればわかりますよ、ちょうどよいですこれからみんなでそこに行くので幸一さんも行ってみましょう」
「ちょうどよいな、それを明日見に行くところだ、一緒に行こう」
国王がそういった時、ガチャとドアを開ける。
「国王様、今帰還しました」
ドアの方からそんな声が聞こえると、幸一達は視線をそっちに移す。
一人は紺色の髪、肩までかかったショートヘアー。騎士のような恰好をしている少女。
その少女が幸一に接近し、品定めをするようにじっと見る。
「君がうわさに聞くセクハラ勇者か──」
「そ、その名前はやめてください」
先ほどのセクハラ疑惑、一部の人はいまだに幸一の事を疑っており影でそういったあだ名をつけていた。
おそらく彼女にもそのあだ名が伝わっていたのだろう。
幸一が慌ててその呼び方を否定する。
「あ、マグブライトさん、お久しぶりです」
すると隣の席にいたイレーナが頭を下げて挨拶をする。
彼女の名はマグブライト、本来は魔王軍との戦いなどで冒険者たちを束ねる兵士団長だ。今までは地方の治安維持活動に行っていて昨日帰国し今日ここにいる。
父親が元兵士団長だった影響から、男っぽい口調やそぶりをしているが本来は気さくでとても話しやすい人物である。
恥じらう表情をしながら幸一を見つめる。
「次は私をターゲットにしようとしているのかね? 私、そういった色恋事は未経験でね」
「へ、変な冗談はやめてください──、返す言葉に困りますから」
「本当かね? いきなり密室に連れ込んで押し倒したり──」
「しません!!」
「信じるよ、これでも乙女なのだからね」
そうやってマクブライドがニヤリと笑みを浮かべて幸一をおちょくる、するとそれに対し良い顔をしない人物が一人だけいた。
「…………」
マクブライドに後ろにいる、沈黙のまま幸一を少し睨むように見つめる少女。
「あ、ラミス、気にしなくていい。彼は悪い奴なんかじゃない。それになにかあったら私が彼を切り落とすから安心してくれ」
「んな物騒なことを──」
「ああ──すまない、彼女には事情があってね。紹介するよ、彼女はラミスだ。私のルームメイトであり親友でもある、よろしくな」
彼女はアブラム・ラミス。灰色の髪の毛にドリルのような髪型をしたツインドリルが特徴であった。
彼女は幸一から目をそらしながら、ぺこりとお辞儀をした。
話が本題に戻る。明日の真実の焔への出席だ。
「とりあえず明日は特に用事はない、大聖堂にある真実の焔だっけ?是非見に行かせてくれ」
「わかりました、じゃあ明日の九時頃に宮殿の出口の前にいてください」
サラの言葉に幸一はうなずく。そして話は終わり国王やラミス、マクブライド達は部屋に帰っていた。
夜、雲ひとつなく、夜空には満天の星が鮮やかに描かれていた。
「おかえりなさい、マクブライド様」
「ラミス、ただいま」
任務である宮殿の巡回を終えて寮のエントランスに戻ったマクブライド。そこにはルームメイトで後輩のアブラム・ラミスがそこにいた。
「ひどいです、私を置いてどこかに行ってしまうだなんて……」
「すまないな、どうしても用があって抜けなくならなくてはならなくてね。それと、二人でいるときは様なんてつけないでくれ。約束だろ!!」
寮の廊下を歩きながら、二人は話し始める。
「ラミス、今は大丈夫か? 今回のことであのトラウマを思い出すのではないかと心配でね──」
昼間のやりとりの問いにラミアははっと息を呑み、下を向いてキョロキョロしながら話し出す。
「あ、その──、大丈夫です。何とか我慢します。だから安心して……くだ……さい」
「そうは見えないよ、無理はしなくていい。やっぱり怖いみたいだね」
「やっぱり、男の人は……怖い」
そううつむきながら囁く、心の底からの怯えだった。
ラミスは中央政府の権力が届かない、地方領主の生まれで5人家族の末っ子だった。
そしてその中で不遇な扱いを受けていたと聞く。
ずっと下の身分で時にはストレスのはけ口に暴力を受けた事もあったという。
いつも自分を頼ってくれる可愛い後輩。ルームメイトでもあるラミス、マグブライトは家族のように、親友のように接していた。
「気にするでないぞ!! 君のせいなどではない、だから安心してくれ」
作り笑いの笑みを見せて言葉を返す。その表情はどこかおどけたような表情をしていた。
マグブライトの得意技──。
彼女は一見すると生真面目で堅そうだが、時折おどけたり茶目っ気があるところがある。そうやって緊張している相手をリラックスさせるのが得意だった。
「ありがとうございます、マクブライド」
「こちらこそ、何かあったら絶対にお前を守るからな……」
決意を宣言しラミスの両肩をつかむ。
そして二人は自分の部屋に入って行った。
ドアを開けながらマクブライドは決心する。
(ラミスは私が守る!!)
心の中で大きく宣言する。
自分の友であるラミス、彼女にもう悲しい想いはさせない。そんな決意を胸に彼女は夜を過ごした。
0
お気に入りに追加
107
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる