とける。

おかだ。

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第46話

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「ちょっと待ってろ。今ナビ入れるから」

「・・・うん」

病院で処置を受けてから二日後、退院が許された陽真は喜島と病院の駐車場にいた。

助手席に座って静かに車窓から灰色のコンクリートの景色をぼうっと眺める陽真を喜島が静かに見つめる。

「喜島」

「ん?」

「俺の事・・・──。ッ借金ってさ、って前そう言ったよね?」

車内がシンと静まり返り、陽真の寂しそうな視線が喜島の横顔を見つめる。

「ああ。どうした?そんな事聞いて」

「じゃあ、もう喜島は俺とセックスしないの?」

「・・・・俺はしたいよ。けど、悠太がしたくないならしない」

喜島の怒り眉が困った様に下がり、陽真に視線を合わせると柔らかく微笑んだ。

陽真の潤んだ瞳からハラハラと涙がこぼれ落ちる。

「・・・俺、喜島の事大好きだよ。」

「うん」

「でも、俺がいると喜島に迷惑かけちゃう、から・・・」

「・・・悠太?」

溢れる涙で視界が霞む。

陽真より少し大きな喜島の手のひらが、優しく陽真の背をさする。

「もう勝手に居なくなったりしない。誓う。だから泣くな」

「ッ喜島、俺喜島が好きだよ。大好き・・・」

真っ直ぐに見据えた陽真の悲しげな瞳に喜島が口を噤む。

「・・・でも俺ッ、喜島の事、何も知らない。俺、喜島の事を苦しめたくないよ・・・重荷になりたくない」

優しく抱きしめた陽真の体が小さく震えている。

病院の駐車場は全く静かで、互いの心音が煩いくらいだ。

「俺も悠太が好きだよ。好きだから聞いて欲しい。聞きたくない事もあるだろうけど、話さないといけない。お前の父親の事だ」

「え?」

「お前の父親が金を借りた伊吹ファイナンス、数年前までは別の人間が仕切ってた。うちの組の古株で、俺が伊武会に入るよりも前から居た」

喜島の視線が膝の上で固く握った手のひらに落ちる。

その手は僅かに震えていて、苦々しげな表情から明るい話では無いことが容易に想像できた。

「組の中でも黒い噂のあるやつで、気前よく金を貸すやつだった。お前の父親もそうだよ。何だと思う?」

「・・・・分からない」

。金を貸す時、子供の有無を聞くんだ。アイツは十二歳~十五歳頃の子供が好きで、海外に違法の風俗店を持ってた。自分が店のオーナーになって、借金で首の回らなくなった親に売られた子供を囲ってた。自分好みの子供がいる親に高金利で金を貸して、子供を担保にさせる。そしてまるでコレクションでもする様に子供を集めてたんだ」

喜島が震えた唇で深いため息をつく。

「そんな訳ない!父さんは俺が産まれる前から借金してたって!!喜島は、父さんが俺を売ったって言うのかよ!?」

「違う!お前の父親はお前の母親の腹にお前がいるなんて知らなかったんだ。だけどあいつは知ってた。金を貸す前に、家族の調査をする。その時に母親の腹の中に子供ゆうたがいる事を知ったんだ。だから金を貸した。産まれたばかりは貴重だからな。それがどんなに異常でも、異常で育った子供は異常を異常だと思わない」

感情に任せたまま掴みかかった喜島の胸倉から陽真がダラりと腕を落とす。

父親が死んだ時手に握っていたの意味がやっとわかった。

「お前の父親はお前が男に犯されてるのを知らなかったんだ。自分が護れていると錯覚してた。でも実は違った。護れていると思ってたお前は既に傷付いていた。だから死んだ」

「・・・・」

初めは遺書の意味が全くわからなかった。

自分が憎かったのか?

邪魔だった?

父親が死んだ時は流れなかった涙が溢れて、喜島に抱きついてワンワン泣いた。

喜島の筋張った手のひらが陽真の震える背中をさする。

「あのな、悠太」

「お前の父親、殺したの俺なんだ・・・」

頭上から降ってきた有り得ない言葉に、陽真が喜島の胸にうずめていた頭を上げた。

「・・・・・は、?」

じっと陽真を見つめる喜島の瞳は、否定すること無く赤髪の少年を見下ろしていた。
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