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肆
第21話
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襖一枚を隔てて数人の男達が息を飲んで会話を見守る。
郊外に建つ立派な御屋敷は伊武会の拠点の一つだ。
それに加えて、トップである伊武聡一郎とその息子で若頭の伊武恭介、そして養子として入った若頭補佐の喜島芥の自宅でもあった。
その屋敷内で騒ぎが起きたようで、数人の組員が正座をして襖に聞き耳を立てていた。
「なんでだ!別に俺が肩代わりしたってアンタに金が入るのに変わりはないはず!」
「お前に返済能力があると思えないが?」
声を荒らげる喜島が伊武の言葉に苦い顔をする。
「陽真悠太の方がないと思いますが。まだ十八歳、まともに働く事さえまだ叶っていない」
「・・・別にマトモに働いた金が欲しいわけじゃない。風俗だろうがなんだろうが働かせればいい。ああ言うのが好きな物好きはこの世に沢山いる」
喜島を馬鹿にするように笑った伊武が、正面に立つ喜島の頬を撫でた。
「やけに肩入れするな。同じなのがそんなに嬉しかったか?」
「ちがうッ」
真っ直ぐに伊武を見つめて静かにそう言った。
伊武が舌打ちをして椅子に座り直す。
イラついているのか息が荒い。
「俺に忠誠を誓うなら見逃してやってもいい」
「元々大人しく従ってますよ」
「俺にじゃなくて親父にだろ?何時までも義兄貴面してナメやがって。そんなに俺の反応が楽しいか?」
伊武に押し倒されるままにソファに腰掛け、冷めた瞳で伊武を見上げる。
「何時までも義弟のつもりで駄々を捏ねているのはお前の方だ、恭介」
「っ?!」
「失礼。義兄として意見を言った方が聞く耳を持って頂けると思って」
ニッコリと笑った喜島が、惚けたままの伊武の頬にキスをした。
「"若は、俺にどうして欲しいんですか?"」
喜島のボヤけた視界に動揺する伊武の姿を捉える。裸眼だと、自分の鼻が相手の頬に触れる距離ですら視界がぼやける。
「俺は別に風俗だろうが構いませんよ?なんせ慣れているもので。俺にはあの時拾って貰えた恩義がある。忠誠を誓った"伊武"になら何でもします」
「ッ──!」
頬に鋭い痛みが走って、瞬間身体が後ろによろめいた。喜島の口内に鉄の味が広がる。
「・・・あの子はこれ以上巻き込みたくない。太陽みたいな子なんです。俺と同じ場所では生きちゃいけない。弟みたいな──」
「もういい。ガキの事なんてどうでもいい。喜島、金融事業は取り上げだ。今日から暫く俺の下で雑用として働いてもらう」
喜島の曇った顔が明るくなった。
「ありがとう、恭介!」
喜島に優しく抱擁され、どうしようもなく心が震えた。
喜島の少し汗ばんだ首筋から、汗と、父親と同じコロンの香りがした。
この男はいつもそうだ。
父親の次は同じ境遇の男。
いつも自分だけ見てくれなかった。
手を掴もう、手に入れようとするとするりと交わして逃げてしまう。
──それならばいっそ、
「次は、失敗しない」
郊外に建つ立派な御屋敷は伊武会の拠点の一つだ。
それに加えて、トップである伊武聡一郎とその息子で若頭の伊武恭介、そして養子として入った若頭補佐の喜島芥の自宅でもあった。
その屋敷内で騒ぎが起きたようで、数人の組員が正座をして襖に聞き耳を立てていた。
「なんでだ!別に俺が肩代わりしたってアンタに金が入るのに変わりはないはず!」
「お前に返済能力があると思えないが?」
声を荒らげる喜島が伊武の言葉に苦い顔をする。
「陽真悠太の方がないと思いますが。まだ十八歳、まともに働く事さえまだ叶っていない」
「・・・別にマトモに働いた金が欲しいわけじゃない。風俗だろうがなんだろうが働かせればいい。ああ言うのが好きな物好きはこの世に沢山いる」
喜島を馬鹿にするように笑った伊武が、正面に立つ喜島の頬を撫でた。
「やけに肩入れするな。同じなのがそんなに嬉しかったか?」
「ちがうッ」
真っ直ぐに伊武を見つめて静かにそう言った。
伊武が舌打ちをして椅子に座り直す。
イラついているのか息が荒い。
「俺に忠誠を誓うなら見逃してやってもいい」
「元々大人しく従ってますよ」
「俺にじゃなくて親父にだろ?何時までも義兄貴面してナメやがって。そんなに俺の反応が楽しいか?」
伊武に押し倒されるままにソファに腰掛け、冷めた瞳で伊武を見上げる。
「何時までも義弟のつもりで駄々を捏ねているのはお前の方だ、恭介」
「っ?!」
「失礼。義兄として意見を言った方が聞く耳を持って頂けると思って」
ニッコリと笑った喜島が、惚けたままの伊武の頬にキスをした。
「"若は、俺にどうして欲しいんですか?"」
喜島のボヤけた視界に動揺する伊武の姿を捉える。裸眼だと、自分の鼻が相手の頬に触れる距離ですら視界がぼやける。
「俺は別に風俗だろうが構いませんよ?なんせ慣れているもので。俺にはあの時拾って貰えた恩義がある。忠誠を誓った"伊武"になら何でもします」
「ッ──!」
頬に鋭い痛みが走って、瞬間身体が後ろによろめいた。喜島の口内に鉄の味が広がる。
「・・・あの子はこれ以上巻き込みたくない。太陽みたいな子なんです。俺と同じ場所では生きちゃいけない。弟みたいな──」
「もういい。ガキの事なんてどうでもいい。喜島、金融事業は取り上げだ。今日から暫く俺の下で雑用として働いてもらう」
喜島の曇った顔が明るくなった。
「ありがとう、恭介!」
喜島に優しく抱擁され、どうしようもなく心が震えた。
喜島の少し汗ばんだ首筋から、汗と、父親と同じコロンの香りがした。
この男はいつもそうだ。
父親の次は同じ境遇の男。
いつも自分だけ見てくれなかった。
手を掴もう、手に入れようとするとするりと交わして逃げてしまう。
──それならばいっそ、
「次は、失敗しない」
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