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序章 悪女追放
「李翠雨、俺はお前のような女が死ぬほど嫌いだ。その姿を見ると反吐が出る」
春栄国の皇宮にある庭園にて、皇帝黎翔偉は、殺伐とした声を放った。
〝双劉の目〟と人々に恐れられている黒と銀の瞳で睨みつけているのは、目の前にいる妃、李翠雨である。
「今すぐ古狸宮に居を移せ。その顔、二度と俺に見せてくれるな」
それはつまり、翠雨に『狂い死ね』と命令したのも同然のこと。
あまりの仕打ちに、周りの妃たちが言葉を失っている。いい気味とばかりにほくそ笑む妃もいた。
翠雨がおもむろに顔を上げた。
艶やかな黒髪は乱れ、陶器のように滑らかな頬も赤く腫れている。
翔偉は目を瞠った。
(殴られたのか?)
なぜか胸をえぐられたような気になったが、翔偉は気づかぬフリをする。
(この女は殴られるだけのことをしたのだ。後宮の規律を乱し、平穏を壊した。哀れみなど不要だ。……そうに決まっている)
翠雨は猫に似た翡翠色の瞳で翔偉をじっと見つめたのち、地面に手をつき深々と頭を下げた。
「陛下のおおせのままに」
後宮に混乱を招いた悪女の、因果応報とも呼べる見事な転落劇を、皆が哀れみの目で傍観していた。
だから、気づくわけがなかったのだ。
地面に這いつくばっている翠雨が、密かに口元に笑みを浮かべていることになど……
第一章 私を殺した男
ひと月前。
冬賀国の公主、李翠雨は、輿入れのために春栄国の皇宮に向かう輿に乗っていた。
都の官道には多くの馬車が往来し、立ち並ぶ露店には故郷では見たことがないような品が並んでいる。そこかしこに派手な紙で作られた提灯や花が飾られ、鼓や打鈴の音色が賑やかに鳴り響いていた。
(これが大陸一と名高い春栄国の都なのね。なんて華やかで暖かいのかしら)
簾の隙間から外の様子を眺めながら、翠雨は翡翠色の目を輝かせた。
翠雨の生まれ育った冬賀国は、大陸の北に位置し、一年を通して気温が低い。これほど暖かな風を肌に感じるのは二十年生きてきた中で初めてだ。
「今は、黎龍景様の誕生祭の最中なのです。七日かけて行われる盛大な祭事で、毎年国中から多くの人が集まるのですよ」
向かいに座っている明明が言った。そばかす顔に栗毛の彼女は、翠雨の身の回りの世話係として、輿を運ぶ男たちとともに春栄国の皇室から寄こされた女官だ。年は、二十歳の翠雨よりいくらか上である。
(黎龍景……?)
胸に引っかかりを覚え、翠雨は首を傾げた。
「黎龍景様とは、初代帝のこと?」
「はい。今帝、黎翔偉様のご先祖にあたる御方です」
「そう……」
歴史書か何かで、その名を目にしたのかもしれない。
それにしても、胸に突然湧いた、このモヤモヤとした気持ちは何なのだろう?
「黎龍景様は、数多の戦いを勝ち抜き、領土を広げられ、春栄国の躍進の立役者となられました。霊獣を率いる妖王を倒した伝説の偉人として、今なお国民に慕われています」
明明と目が合うと、すぐにササッと逸らされた。一ヶ月に及ぶ旅の間、明明は翠雨に対し、一貫してこのような態度を取っている。新たな主人と親しくするつもりはさらさらないらしい。
(きっと、私のことが怖いのね)
翠雨の顔立ちは、人にきつい印象を与えるようだ。
白い肌に背中まで伸びた黒い髪、そして猫に似た翡翠色の瞳。悪さをする夜猫みたいだと、兄や姉からはさんざんなじられた。
輿が大きく揺れた拍子に、薄紅色の花びらがひらりと中に舞い込んでくる。翠雨は自分の膝に落ちた小さな花びらを拾い上げ、うっとりと見惚れた。
簾の隙間から、薄紅の花を咲かせた木々が、道沿いに連なっているのが見えた。咲き誇る花々は、陽の光を受けて淡く輝いている。
(これが桜? なんて美しいの)
桜は、寒い冬賀国には生えていない。
それなのに、なぜか懐かしいような気持ちが込み上げる。人は美しいものを目にしたとき、そういった感情を抱くことがあるのだと、かつて何かの書物で読んだ。
この大陸は、春栄国、夏乱国、秋律国、冬賀国の四国から成っている。
大国の春栄国と夏乱国が火花を散らす中、小国の秋律国と冬賀国は様子見というのが、長年繰り広げられてきた政治情勢だ。
李翠雨は、冬賀国の四番目の公主として生まれた。
母はもともと楽団の舞女で、宮中儀の際に皇帝の目に留まり、後宮入りが決まった。しがない平民の出に過ぎない母は、妃の中でもっとも位が低く、生まれたときから翠雨の立場は弱かった。
ほかの皇子や公主のように、質のよい着物や身の回り品を揃えてもらえることは皆無、食べ物すらろくに与えられない幼少期を過ごした。
さらに翠雨は、生まれつきの不運を持っていた。やたらと死にかけるのだ。
宮中に入り込んだ狼に襲われたり。突風に煽られて池に落ち、なぜか潜んでいた人食魚に食われかけたり。流れ矢が奇怪な動きをして窓から房の中に入り込み、あわや心臓を貫くところだったり。
一生に一度巡り合うか合わないかの災難をことごとく引き寄せるものだから、ついたあだ名は〝厄災姫〟。いずれ宮中に災いを呼び寄せるだろうと、父にも兄弟姉妹にも爪はじきにされてきた。
儀式に自分だけ呼ばれないことは日常茶飯事。ほかの兄弟姉妹のように、教育係の師傅もつけてもらえず、読み書きはほぼ独学で習得した。
父帝はことあるごとに公主たちに髪飾りや繡品を贈ったが、翠雨だけは例外だった。挙句、女官たちからも厄災姫と蔑まれる始末。
いつしか翠雨は、何事にも期待を抱かないようになった。
そういうふうに生きるしかなかったのである。
あるとき、賢帝と崇められた春栄国の皇帝が落馬で急死した。敵国の夏乱国がこの好機を逃すわけもなく、混乱の最中に春栄国に進軍。誰もが、春栄国の衰退を予感した。
だが亡き父に代わって軍の指揮をとった春栄国の太子、黎翔偉は、見事な戦略で夏乱国に反撃。誰彼ともなく〝血濡れの狂帝〟と呼ぶようになった残虐なまでの猛将ぶりを発揮し、夏乱国に圧勝した。
これに慌てたのは、春栄国の皇帝が崩御するやいなや夏乱国側についた秋律国と冬賀国だった。
数多くの鉄鉱山を保持している秋律国は、鉄の献上で春栄国に取り入った。ところが土地にも気候にも恵まれていない冬賀国には、献上するものがない。そこで、姫のひとりを春栄国に輿入れさせようという話が持ち上がる。
冬賀国の四人の公主のうち、未婚なのは翠雨とひとつ上の姉姫だけだった。ひとつ上の姉姫は、他国の横暴な新皇帝に嫁ぐことを嫌がったため、必然的に翠雨が選ばれる。父皇帝にとっては、厄災姫を追い出せるいい機会でもあったのだろう。
翠雨は父皇帝の命令に素直に従った。
そして十分な嫁入り道具も持たぬまま、追い出されるようにして故郷を出発したわけである。
長旅が終わり、たどり着いた春栄国の宮廷は、高い城壁に囲まれたひとつの街のような場所だった。壮大な景観に目移りしながら輿に揺られて奥に進むと、宮廷の中核である皇宮に行き着く。
朱塗りの門を抜ければ、主殿らしき巨大な楼閣が目の前にそびえていた。輿を降りて、いよいよ皇宮内に足を踏み入れる。
皇宮は、政所である本宮、皇帝の住処である東宮、武所である西宮、後宮である北宮の四つの宮殿により成っていた。
宮殿を繋ぐ庭園はそれぞれに異なる趣向が凝らされ、行き交う女官や官吏の服装も小綺麗で、冬賀国の皇宮とは比べ物にならないほど豪華だ。
本宮の長廊を歩む。
「見て。あの方が、冬賀国の姫じゃない?」
「あの噂は本当なのかしら?」
女官たちの声がした。
「悪女という噂でしょ? 本当かもしれないわね。性悪そうな顔をしているもの」
(悪女……? もしかして厄災姫の噂が転じて、そんなふうに呼ばれるようになったのかしら?)
翠雨は目を瞬いた。
(明明が怯えたような態度なのは、悪女という噂のせいだったのね。私のきつい顔立ちのせいもあるとは思うけど)
噂というものは、出所が遠ければ遠いほど、形を変えるものらしい。
とはいえ嫌われることには慣れているから、たいして気にならなかった。
やがて、円柱が連なる荘厳とした謁見の間に行き着く。最奥にある高座には、金模様の施された豪奢な朱塗りの龍椅が置かれていた。
「皇帝陛下との謁見が控えておりますので、こちらでお待ちくださいませ。私は翠雨様の房を整えて参ります」
明明がそう言い残し、翠雨の前からそそくさと立ち去った。
翠雨は床にぺたんと膝をつき、皇帝の訪れを待つことにした。
旅疲れからうとうとし始めたとき、にわかに足音が聞こえる。ようやく皇帝が現れたようだ。
まどろみから引き戻された翠雨は、慌てて最敬礼である跪拜礼をした。
「面を上げよ」
殺伐とした声が冷たい空間に響き渡り、翠雨はゆっくりと顔を上げた。
龍椅に腰かけた紺色の龍袍姿の皇帝が、高慢に翠雨を見下ろしていた。緻密な金の刺繍が施された帯に、足もとで輝く高級な玉がふんだんにあしらわれた佩。
高く結い上げられた背中までの黒い髻髪に、男らしくきりりと整った眉。筋の通った鼻梁に、冷酷さを漂わせる薄めの唇。そして、右が銀、左が黒の虹彩異色眼。
たしか、齢二十六と聞いている。
あっという間に夏乱国をねじ伏せたその手腕と、〝血濡れの狂帝〟というふたつから想像できるような野蛮さはなく、凛々しいながら繊細さも持ち合わせた美しい男だった。
彼をひと目見たとたん、翠雨は雷に打たれたような衝撃を受けた。
全身が激しく脈打ち、汗が噴き出す。息をすることすらままならない。
先ほど耳にしたばかりの古の英雄の名が、思考を裂くようにして頭に浮かんだ。
(――黎龍景!)
封印されていたはずの記憶が、雪崩のように押し寄せる。
翠雨は身体によみがえった恐怖に必死に耐えた。
心臓が割れそうな動悸を感じながらも、どうにか叩頭する。
「……冬賀国から参りました、李翠雨でございます。春栄国の偉大なる天子との此度の巡り合わせ、心より光栄に存じます」
双劉の目が、ギロリと翠雨を睨みつける。
「お前を迎え入れたのは政治のためだ。面倒ごとだけは起こしてくれるな。そのことをわきまえよ」
「……承知いたしました」
翠雨は深々と頭を下げたまま、震える声でそう答えた。
翔偉は長旅を労う言葉ひとつかけることなく、従者を連れて、すぐにその場から立ち去った。
「ああ、なんてことなの……」
広い房に取り残された翠雨は、震えの止まらぬ体を抱きしめながら嘆き声を上げた。
翠雨の夫となる男が、あろうことか前世の翠雨を殺した仇――黎龍景に瓜ふたつだったからである。
翠雨の前世の名は、槐といった。
新緑の目に長く伸びた黒髪、そして生まれつき、頭から二本の鹿の角が生えていた。槐は、霊獣の父と人間の母から生まれた半妖だったのだ。
霊獣は、恐ろしい姿をした特別な力を持つ獣である。人間は霊獣を恐れ、忌み嫌い、ことごとく討ち取ろうとした。
槐の生涯は哀れだった。
持ち前の治癒術で村の人々を救ったにもかかわらず、人とは違う見かけのせいで、霊獣の住処である鼠翁山に追いやられた。
そこで霊獣たちに、徐々に慕われ、やがて妖王として知られるようになる。
だが生まれて初めての癒しの日々を送っていたところを、妖王の討伐に来た武将、黎龍景に殺されたのだ。そのとき槐は、まだ十七歳だった。
(黎龍景、絶対に許さないわ)
記憶がよみがえった今、翠雨の心の中は、黎龍景への憎しみであふれ返っていた。
「翠雨様。顔色がお悪いようですが、どうかなさいましたか?」
北宮の内房へ案内されてからも思い悩んでいた翠雨に、荷をほどいていた明明が声をかけてくる。
「……なんでもないわ」
「そうですか。長旅でお疲れでしょうから、ゆっくりお休みになられてください」
気を利かせたのか、明明が房をあとにした。
明明がいなくなったあとも、翠雨は翔偉のことばかり考えていた。
(本当にそっくりだったわ)
唯一の違いは、瞳の色だ。
翔偉の特徴的な虹彩異色眼に対し、龍景の瞳はふたつとも黒かった。闇をそのまま映し込んだかのようなふたつの瞳を、今でもはっきり思い出せる。
龍景はその後天下を取り、春栄国の初代皇帝になったようだ。翔偉の先祖にあたるわけだから、ふたりの顔が似ていてもおかしくはない。
円窓の向こうに視線をやる。
どこからともなく流れてきた薄紅の花びらが、風に吹かれひらひらと舞っていた。
(私が殺されたのも、桜が満開の頃だった)
前世での死に際、桜舞う夜空を背景に、冷ややかに自分を見下ろした龍景の顔を覚えている。
たしか、一太刀で首を落とされた。
あの男は悪名高い妖王の首を意気揚々と持ち帰り、名声を上げたのだろう。
「失礼いたします」
悔しさから浅い呼吸を繰り返していると、 戸の向こうから女の声がした。
女官をぞろぞろと引き連れて入って来たのは、濃紫色の襦裙に身を包んだ、赤茶色の髪の女である。年は、二十代半ばといったところ。吊り上がった一重の目が、酷薄な印象を受ける。
「第九妃の楊梅でございます。ご挨拶に参りました」
「はじめまして。李翠雨でございます」
「遠路はるばる、春栄国にようこそいらっしゃいました。分からないことがあればなんでも私に聞いてくださいね」
梅が言う。
楊氏は、春栄国でも歴史ある家門で、代々官職についていた。梅の父楊功はたしか尚書令だ。必要な情報は、ここに来る道すがら明明が機械的に教えてくれた。
「お心遣いに感謝いたします」
「それにしても、おきれいな御方」
梅が、細い目をさらに細めて微笑んだ。
「後宮には、翠雨様を含め、十三人の妃がいます。陛下はどの妃の寝処にもまんべんなくいらっしゃいますから、翠雨様にもいずれ順番が巡ってくるでしょう。いい夜となりますように」
(いい夜……?)
翠雨は絶句した。
後宮入りした自分のすべきことは分かっている。
操など捨てる覚悟でこの地に来た。帝が醜男だろうと性悪だろうと、どうでもよかった。嫌われ者の自分など、相手を選べる立場ではないと心得ていたからだ。
それでも、その相手が憎き仇と同じ顔をした男となると、話が違ってくる。
同じ顔をしているとはいえ違う人間、復讐までは考えていないが。
(あの男に体を開くくらいなら、舌を噛み切って死んでやる)
心の中で誓いを立てていると、梅が後ろに控えている女官を呼んだ。
「例のものを」
「かしこまりました」
女官が、三方に乗った寿桃包を翠雨に差し出した。祝い事には欠かせない、鮮やかな粉紅色の桃形の菓子である。
「贈り物です」
「私にですか……? ありがとうございます」
後宮は怖い場所という先入観を抱いていただけに、思わぬ歓迎を受け、ささくれ立っていた心がわずかに凪いだ。
だが三方の中を見るなり、翠雨は息を止めた。こんもりと盛られた寿桃包の上を、大量の蟻が這っていたからだ。
「さあどうぞ、今すぐ召し上がってくださいな。出来立ての方がおいしいですわよ?」
梅が、先ほどとは打って変わったしたたかな笑みを浮かべる。彼女の後ろにいる女官たちも、クスクスと嫌な笑い声を響かせていた。
翠雨はすべてを悟った。
(歓迎なんてとんでもない。分かりやすい新人いびりというわけね)
どうやら後宮は、想像どおりの場所のようだ。
これまでの翠雨なら、自分のような者には相応しい扱いと思っただろう。
だが、気性の激しかった槐の頃の記憶を取り戻した今の翠雨は、怒りに燃えた。
(人間って本当に心の醜い生き物ね)
翠雨は三方に手をかけると、迷うことなくひっくり返した。
寿桃包が四方へと転がっていき、女官たちが悲鳴を上げる。
「まあ、梅様からの贈り物になんてことを!」
「梅様の親切心を無下にするなんて、許されることではありませんわ!」
翠雨は戯言には意も介さず、梅を挑発するように嫣然と微笑んだ。
「ごめんなさい。私に食虫の趣向はございませんの」
梅の顔が、あからさまに強張った。
「私が贈り物に虫を入れたとでも言いたいの? 虫などついていませんわ」
静かだが、圧を感じる口調。
「李翠雨、俺はお前のような女が死ぬほど嫌いだ。その姿を見ると反吐が出る」
春栄国の皇宮にある庭園にて、皇帝黎翔偉は、殺伐とした声を放った。
〝双劉の目〟と人々に恐れられている黒と銀の瞳で睨みつけているのは、目の前にいる妃、李翠雨である。
「今すぐ古狸宮に居を移せ。その顔、二度と俺に見せてくれるな」
それはつまり、翠雨に『狂い死ね』と命令したのも同然のこと。
あまりの仕打ちに、周りの妃たちが言葉を失っている。いい気味とばかりにほくそ笑む妃もいた。
翠雨がおもむろに顔を上げた。
艶やかな黒髪は乱れ、陶器のように滑らかな頬も赤く腫れている。
翔偉は目を瞠った。
(殴られたのか?)
なぜか胸をえぐられたような気になったが、翔偉は気づかぬフリをする。
(この女は殴られるだけのことをしたのだ。後宮の規律を乱し、平穏を壊した。哀れみなど不要だ。……そうに決まっている)
翠雨は猫に似た翡翠色の瞳で翔偉をじっと見つめたのち、地面に手をつき深々と頭を下げた。
「陛下のおおせのままに」
後宮に混乱を招いた悪女の、因果応報とも呼べる見事な転落劇を、皆が哀れみの目で傍観していた。
だから、気づくわけがなかったのだ。
地面に這いつくばっている翠雨が、密かに口元に笑みを浮かべていることになど……
第一章 私を殺した男
ひと月前。
冬賀国の公主、李翠雨は、輿入れのために春栄国の皇宮に向かう輿に乗っていた。
都の官道には多くの馬車が往来し、立ち並ぶ露店には故郷では見たことがないような品が並んでいる。そこかしこに派手な紙で作られた提灯や花が飾られ、鼓や打鈴の音色が賑やかに鳴り響いていた。
(これが大陸一と名高い春栄国の都なのね。なんて華やかで暖かいのかしら)
簾の隙間から外の様子を眺めながら、翠雨は翡翠色の目を輝かせた。
翠雨の生まれ育った冬賀国は、大陸の北に位置し、一年を通して気温が低い。これほど暖かな風を肌に感じるのは二十年生きてきた中で初めてだ。
「今は、黎龍景様の誕生祭の最中なのです。七日かけて行われる盛大な祭事で、毎年国中から多くの人が集まるのですよ」
向かいに座っている明明が言った。そばかす顔に栗毛の彼女は、翠雨の身の回りの世話係として、輿を運ぶ男たちとともに春栄国の皇室から寄こされた女官だ。年は、二十歳の翠雨よりいくらか上である。
(黎龍景……?)
胸に引っかかりを覚え、翠雨は首を傾げた。
「黎龍景様とは、初代帝のこと?」
「はい。今帝、黎翔偉様のご先祖にあたる御方です」
「そう……」
歴史書か何かで、その名を目にしたのかもしれない。
それにしても、胸に突然湧いた、このモヤモヤとした気持ちは何なのだろう?
「黎龍景様は、数多の戦いを勝ち抜き、領土を広げられ、春栄国の躍進の立役者となられました。霊獣を率いる妖王を倒した伝説の偉人として、今なお国民に慕われています」
明明と目が合うと、すぐにササッと逸らされた。一ヶ月に及ぶ旅の間、明明は翠雨に対し、一貫してこのような態度を取っている。新たな主人と親しくするつもりはさらさらないらしい。
(きっと、私のことが怖いのね)
翠雨の顔立ちは、人にきつい印象を与えるようだ。
白い肌に背中まで伸びた黒い髪、そして猫に似た翡翠色の瞳。悪さをする夜猫みたいだと、兄や姉からはさんざんなじられた。
輿が大きく揺れた拍子に、薄紅色の花びらがひらりと中に舞い込んでくる。翠雨は自分の膝に落ちた小さな花びらを拾い上げ、うっとりと見惚れた。
簾の隙間から、薄紅の花を咲かせた木々が、道沿いに連なっているのが見えた。咲き誇る花々は、陽の光を受けて淡く輝いている。
(これが桜? なんて美しいの)
桜は、寒い冬賀国には生えていない。
それなのに、なぜか懐かしいような気持ちが込み上げる。人は美しいものを目にしたとき、そういった感情を抱くことがあるのだと、かつて何かの書物で読んだ。
この大陸は、春栄国、夏乱国、秋律国、冬賀国の四国から成っている。
大国の春栄国と夏乱国が火花を散らす中、小国の秋律国と冬賀国は様子見というのが、長年繰り広げられてきた政治情勢だ。
李翠雨は、冬賀国の四番目の公主として生まれた。
母はもともと楽団の舞女で、宮中儀の際に皇帝の目に留まり、後宮入りが決まった。しがない平民の出に過ぎない母は、妃の中でもっとも位が低く、生まれたときから翠雨の立場は弱かった。
ほかの皇子や公主のように、質のよい着物や身の回り品を揃えてもらえることは皆無、食べ物すらろくに与えられない幼少期を過ごした。
さらに翠雨は、生まれつきの不運を持っていた。やたらと死にかけるのだ。
宮中に入り込んだ狼に襲われたり。突風に煽られて池に落ち、なぜか潜んでいた人食魚に食われかけたり。流れ矢が奇怪な動きをして窓から房の中に入り込み、あわや心臓を貫くところだったり。
一生に一度巡り合うか合わないかの災難をことごとく引き寄せるものだから、ついたあだ名は〝厄災姫〟。いずれ宮中に災いを呼び寄せるだろうと、父にも兄弟姉妹にも爪はじきにされてきた。
儀式に自分だけ呼ばれないことは日常茶飯事。ほかの兄弟姉妹のように、教育係の師傅もつけてもらえず、読み書きはほぼ独学で習得した。
父帝はことあるごとに公主たちに髪飾りや繡品を贈ったが、翠雨だけは例外だった。挙句、女官たちからも厄災姫と蔑まれる始末。
いつしか翠雨は、何事にも期待を抱かないようになった。
そういうふうに生きるしかなかったのである。
あるとき、賢帝と崇められた春栄国の皇帝が落馬で急死した。敵国の夏乱国がこの好機を逃すわけもなく、混乱の最中に春栄国に進軍。誰もが、春栄国の衰退を予感した。
だが亡き父に代わって軍の指揮をとった春栄国の太子、黎翔偉は、見事な戦略で夏乱国に反撃。誰彼ともなく〝血濡れの狂帝〟と呼ぶようになった残虐なまでの猛将ぶりを発揮し、夏乱国に圧勝した。
これに慌てたのは、春栄国の皇帝が崩御するやいなや夏乱国側についた秋律国と冬賀国だった。
数多くの鉄鉱山を保持している秋律国は、鉄の献上で春栄国に取り入った。ところが土地にも気候にも恵まれていない冬賀国には、献上するものがない。そこで、姫のひとりを春栄国に輿入れさせようという話が持ち上がる。
冬賀国の四人の公主のうち、未婚なのは翠雨とひとつ上の姉姫だけだった。ひとつ上の姉姫は、他国の横暴な新皇帝に嫁ぐことを嫌がったため、必然的に翠雨が選ばれる。父皇帝にとっては、厄災姫を追い出せるいい機会でもあったのだろう。
翠雨は父皇帝の命令に素直に従った。
そして十分な嫁入り道具も持たぬまま、追い出されるようにして故郷を出発したわけである。
長旅が終わり、たどり着いた春栄国の宮廷は、高い城壁に囲まれたひとつの街のような場所だった。壮大な景観に目移りしながら輿に揺られて奥に進むと、宮廷の中核である皇宮に行き着く。
朱塗りの門を抜ければ、主殿らしき巨大な楼閣が目の前にそびえていた。輿を降りて、いよいよ皇宮内に足を踏み入れる。
皇宮は、政所である本宮、皇帝の住処である東宮、武所である西宮、後宮である北宮の四つの宮殿により成っていた。
宮殿を繋ぐ庭園はそれぞれに異なる趣向が凝らされ、行き交う女官や官吏の服装も小綺麗で、冬賀国の皇宮とは比べ物にならないほど豪華だ。
本宮の長廊を歩む。
「見て。あの方が、冬賀国の姫じゃない?」
「あの噂は本当なのかしら?」
女官たちの声がした。
「悪女という噂でしょ? 本当かもしれないわね。性悪そうな顔をしているもの」
(悪女……? もしかして厄災姫の噂が転じて、そんなふうに呼ばれるようになったのかしら?)
翠雨は目を瞬いた。
(明明が怯えたような態度なのは、悪女という噂のせいだったのね。私のきつい顔立ちのせいもあるとは思うけど)
噂というものは、出所が遠ければ遠いほど、形を変えるものらしい。
とはいえ嫌われることには慣れているから、たいして気にならなかった。
やがて、円柱が連なる荘厳とした謁見の間に行き着く。最奥にある高座には、金模様の施された豪奢な朱塗りの龍椅が置かれていた。
「皇帝陛下との謁見が控えておりますので、こちらでお待ちくださいませ。私は翠雨様の房を整えて参ります」
明明がそう言い残し、翠雨の前からそそくさと立ち去った。
翠雨は床にぺたんと膝をつき、皇帝の訪れを待つことにした。
旅疲れからうとうとし始めたとき、にわかに足音が聞こえる。ようやく皇帝が現れたようだ。
まどろみから引き戻された翠雨は、慌てて最敬礼である跪拜礼をした。
「面を上げよ」
殺伐とした声が冷たい空間に響き渡り、翠雨はゆっくりと顔を上げた。
龍椅に腰かけた紺色の龍袍姿の皇帝が、高慢に翠雨を見下ろしていた。緻密な金の刺繍が施された帯に、足もとで輝く高級な玉がふんだんにあしらわれた佩。
高く結い上げられた背中までの黒い髻髪に、男らしくきりりと整った眉。筋の通った鼻梁に、冷酷さを漂わせる薄めの唇。そして、右が銀、左が黒の虹彩異色眼。
たしか、齢二十六と聞いている。
あっという間に夏乱国をねじ伏せたその手腕と、〝血濡れの狂帝〟というふたつから想像できるような野蛮さはなく、凛々しいながら繊細さも持ち合わせた美しい男だった。
彼をひと目見たとたん、翠雨は雷に打たれたような衝撃を受けた。
全身が激しく脈打ち、汗が噴き出す。息をすることすらままならない。
先ほど耳にしたばかりの古の英雄の名が、思考を裂くようにして頭に浮かんだ。
(――黎龍景!)
封印されていたはずの記憶が、雪崩のように押し寄せる。
翠雨は身体によみがえった恐怖に必死に耐えた。
心臓が割れそうな動悸を感じながらも、どうにか叩頭する。
「……冬賀国から参りました、李翠雨でございます。春栄国の偉大なる天子との此度の巡り合わせ、心より光栄に存じます」
双劉の目が、ギロリと翠雨を睨みつける。
「お前を迎え入れたのは政治のためだ。面倒ごとだけは起こしてくれるな。そのことをわきまえよ」
「……承知いたしました」
翠雨は深々と頭を下げたまま、震える声でそう答えた。
翔偉は長旅を労う言葉ひとつかけることなく、従者を連れて、すぐにその場から立ち去った。
「ああ、なんてことなの……」
広い房に取り残された翠雨は、震えの止まらぬ体を抱きしめながら嘆き声を上げた。
翠雨の夫となる男が、あろうことか前世の翠雨を殺した仇――黎龍景に瓜ふたつだったからである。
翠雨の前世の名は、槐といった。
新緑の目に長く伸びた黒髪、そして生まれつき、頭から二本の鹿の角が生えていた。槐は、霊獣の父と人間の母から生まれた半妖だったのだ。
霊獣は、恐ろしい姿をした特別な力を持つ獣である。人間は霊獣を恐れ、忌み嫌い、ことごとく討ち取ろうとした。
槐の生涯は哀れだった。
持ち前の治癒術で村の人々を救ったにもかかわらず、人とは違う見かけのせいで、霊獣の住処である鼠翁山に追いやられた。
そこで霊獣たちに、徐々に慕われ、やがて妖王として知られるようになる。
だが生まれて初めての癒しの日々を送っていたところを、妖王の討伐に来た武将、黎龍景に殺されたのだ。そのとき槐は、まだ十七歳だった。
(黎龍景、絶対に許さないわ)
記憶がよみがえった今、翠雨の心の中は、黎龍景への憎しみであふれ返っていた。
「翠雨様。顔色がお悪いようですが、どうかなさいましたか?」
北宮の内房へ案内されてからも思い悩んでいた翠雨に、荷をほどいていた明明が声をかけてくる。
「……なんでもないわ」
「そうですか。長旅でお疲れでしょうから、ゆっくりお休みになられてください」
気を利かせたのか、明明が房をあとにした。
明明がいなくなったあとも、翠雨は翔偉のことばかり考えていた。
(本当にそっくりだったわ)
唯一の違いは、瞳の色だ。
翔偉の特徴的な虹彩異色眼に対し、龍景の瞳はふたつとも黒かった。闇をそのまま映し込んだかのようなふたつの瞳を、今でもはっきり思い出せる。
龍景はその後天下を取り、春栄国の初代皇帝になったようだ。翔偉の先祖にあたるわけだから、ふたりの顔が似ていてもおかしくはない。
円窓の向こうに視線をやる。
どこからともなく流れてきた薄紅の花びらが、風に吹かれひらひらと舞っていた。
(私が殺されたのも、桜が満開の頃だった)
前世での死に際、桜舞う夜空を背景に、冷ややかに自分を見下ろした龍景の顔を覚えている。
たしか、一太刀で首を落とされた。
あの男は悪名高い妖王の首を意気揚々と持ち帰り、名声を上げたのだろう。
「失礼いたします」
悔しさから浅い呼吸を繰り返していると、 戸の向こうから女の声がした。
女官をぞろぞろと引き連れて入って来たのは、濃紫色の襦裙に身を包んだ、赤茶色の髪の女である。年は、二十代半ばといったところ。吊り上がった一重の目が、酷薄な印象を受ける。
「第九妃の楊梅でございます。ご挨拶に参りました」
「はじめまして。李翠雨でございます」
「遠路はるばる、春栄国にようこそいらっしゃいました。分からないことがあればなんでも私に聞いてくださいね」
梅が言う。
楊氏は、春栄国でも歴史ある家門で、代々官職についていた。梅の父楊功はたしか尚書令だ。必要な情報は、ここに来る道すがら明明が機械的に教えてくれた。
「お心遣いに感謝いたします」
「それにしても、おきれいな御方」
梅が、細い目をさらに細めて微笑んだ。
「後宮には、翠雨様を含め、十三人の妃がいます。陛下はどの妃の寝処にもまんべんなくいらっしゃいますから、翠雨様にもいずれ順番が巡ってくるでしょう。いい夜となりますように」
(いい夜……?)
翠雨は絶句した。
後宮入りした自分のすべきことは分かっている。
操など捨てる覚悟でこの地に来た。帝が醜男だろうと性悪だろうと、どうでもよかった。嫌われ者の自分など、相手を選べる立場ではないと心得ていたからだ。
それでも、その相手が憎き仇と同じ顔をした男となると、話が違ってくる。
同じ顔をしているとはいえ違う人間、復讐までは考えていないが。
(あの男に体を開くくらいなら、舌を噛み切って死んでやる)
心の中で誓いを立てていると、梅が後ろに控えている女官を呼んだ。
「例のものを」
「かしこまりました」
女官が、三方に乗った寿桃包を翠雨に差し出した。祝い事には欠かせない、鮮やかな粉紅色の桃形の菓子である。
「贈り物です」
「私にですか……? ありがとうございます」
後宮は怖い場所という先入観を抱いていただけに、思わぬ歓迎を受け、ささくれ立っていた心がわずかに凪いだ。
だが三方の中を見るなり、翠雨は息を止めた。こんもりと盛られた寿桃包の上を、大量の蟻が這っていたからだ。
「さあどうぞ、今すぐ召し上がってくださいな。出来立ての方がおいしいですわよ?」
梅が、先ほどとは打って変わったしたたかな笑みを浮かべる。彼女の後ろにいる女官たちも、クスクスと嫌な笑い声を響かせていた。
翠雨はすべてを悟った。
(歓迎なんてとんでもない。分かりやすい新人いびりというわけね)
どうやら後宮は、想像どおりの場所のようだ。
これまでの翠雨なら、自分のような者には相応しい扱いと思っただろう。
だが、気性の激しかった槐の頃の記憶を取り戻した今の翠雨は、怒りに燃えた。
(人間って本当に心の醜い生き物ね)
翠雨は三方に手をかけると、迷うことなくひっくり返した。
寿桃包が四方へと転がっていき、女官たちが悲鳴を上げる。
「まあ、梅様からの贈り物になんてことを!」
「梅様の親切心を無下にするなんて、許されることではありませんわ!」
翠雨は戯言には意も介さず、梅を挑発するように嫣然と微笑んだ。
「ごめんなさい。私に食虫の趣向はございませんの」
梅の顔が、あからさまに強張った。
「私が贈り物に虫を入れたとでも言いたいの? 虫などついていませんわ」
静かだが、圧を感じる口調。
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