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女子アナウンサー・萌桃
十
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モモは児をあやすと、静かにベビーベッドに寝かせた。最後の授乳が終わったのだ。
部屋を出て、庭を進んで行く。
「待て」
バジルの声が聞こえた。
「どこへ行く」
「サラ様のところへ」
「捕らえろ」
バラバラと男たちが集まって来てモモを押さえつけた。
「連れて来い」
一同は国王の部屋に入った。モモを床に跪かせる。
「どういうつもりだ。首を刎ねられたいか」
「はい、殺してくださいませ」
国王はフッと笑った。
「なるほど、望むところというわけか」
「性奴隷としての務めは果たしたと思いますので。サラ様のもとに」
「ならばバジルはどうする?」
「しかるべきお嬢様と再婚なさり、また新しい性奴隷を調達されるのでは?」
国王とバジルは顔を見合わせた。
その時、侍女が児を抱いてきた。何か不安なのか、火が着いたように泣いている。
「ここに、お前を求めている児がいる。お前はこの児を見捨てるのか」
「性奴隷の乳など飲まないほうがよいかと」
「この泣き声が聞こえないのか。見捨てることができるのか」
モモは言葉を失い立ち尽くした。
「……できない」
モモは国王の前であることも忘れ、乳を出して児に吸わせた。今まで泣き叫んでいたのが噓のように無心で吸い付いてくる。
「ああ」
思わず声を漏らす。
「モモ、いつまでも私の側にいてくれ。一緒にこの児を育ててくれ」
バジルが懇願する。国王が続けた。
「モモ、今より性奴隷の身分より開放する」
「えっ」
「サラの児をこの世に遺した功績はあまりにも大きい。それに報いよう」
国王の言葉が厳かになった。
「モモ、バジルの側室になることを命じる」
「そ、側室?」
「そうだ。サラの生家の養女となりバジルに嫁ぐのだ」
「しかし、バジル様は?」
「私は今後正室を迎えるつもりはない。モモが妻になってくれれば十分だ」
「王家の掟により、お前をバジルの正室にすることは出来ないが事実上の正妻だ。これはサラの最後の願いであり、サラの生家の望みでもある。どうしてもこのを育ててもらいたいとのことだ」
国王は少し柔らかい表情になると、モモの乳に吸い付いている児を見た。
「その児の名はサクラだ」
「サクラ?」
「そうだ。サラの生命を受け継ぎ、そしてお前の祖国の花の名だ。サクラの中に、二人の母親は存在し続けるのだ。よいな、モモ」
「はい、この児のために生きて参ります」
「それだけではないぞ」
バジルが笑いながら言う。
「サクラも一人では淋しいだろう。弟や妹が欲しくなるに決まっている。もう避妊器具は装着するな」
「次に生まれてくるのは今度こそバジルとお前の児だ。王家に繋がる重臣としてサクラを支えるのだ」
モモは、あまりのことに声が出ない。
「幸い第一、第二王子には男児がいて、王家の継承に不安は無い。モモは自分たちのことだけ考えればよい。昔から夫婦仲が悪いと、そこに付け込む輩が出て、それが原因で家の中が乱れたりするものだ。その点、お前はたいそう床上手と聞いている。バジルも他の女には目もくれないだろう。好ましいことだ」
「そ、そんなことはございません」
「さっそくお前の居室を整える。しばらく待て」
その夜、サクラを真ん中にして三人で寝た。幼い中にサラの面影を宿すサクラを見て、まるで生まれ変わりのように思えた。
「サラ様」
サラを背後から抱きしめ、快楽に溺れさせた夜が鮮やかに蘇る。
モモの性技は、その後もバジルを虜にし続けた。
「ああ、モモの中はまるで蟻地獄のようだ」
「ふふ、もう逃げられませんよ」
「ああ、だめだ……」
「ご自身が選んだのですからね。精のすべてを吸い尽くして差し上げます」
二人の間には一男一女が生まれ、サクラの側近として、そして兄弟として支え続けた。
この家系から国王が出ることはなかったが、王家の要として繁栄したという。
部屋を出て、庭を進んで行く。
「待て」
バジルの声が聞こえた。
「どこへ行く」
「サラ様のところへ」
「捕らえろ」
バラバラと男たちが集まって来てモモを押さえつけた。
「連れて来い」
一同は国王の部屋に入った。モモを床に跪かせる。
「どういうつもりだ。首を刎ねられたいか」
「はい、殺してくださいませ」
国王はフッと笑った。
「なるほど、望むところというわけか」
「性奴隷としての務めは果たしたと思いますので。サラ様のもとに」
「ならばバジルはどうする?」
「しかるべきお嬢様と再婚なさり、また新しい性奴隷を調達されるのでは?」
国王とバジルは顔を見合わせた。
その時、侍女が児を抱いてきた。何か不安なのか、火が着いたように泣いている。
「ここに、お前を求めている児がいる。お前はこの児を見捨てるのか」
「性奴隷の乳など飲まないほうがよいかと」
「この泣き声が聞こえないのか。見捨てることができるのか」
モモは言葉を失い立ち尽くした。
「……できない」
モモは国王の前であることも忘れ、乳を出して児に吸わせた。今まで泣き叫んでいたのが噓のように無心で吸い付いてくる。
「ああ」
思わず声を漏らす。
「モモ、いつまでも私の側にいてくれ。一緒にこの児を育ててくれ」
バジルが懇願する。国王が続けた。
「モモ、今より性奴隷の身分より開放する」
「えっ」
「サラの児をこの世に遺した功績はあまりにも大きい。それに報いよう」
国王の言葉が厳かになった。
「モモ、バジルの側室になることを命じる」
「そ、側室?」
「そうだ。サラの生家の養女となりバジルに嫁ぐのだ」
「しかし、バジル様は?」
「私は今後正室を迎えるつもりはない。モモが妻になってくれれば十分だ」
「王家の掟により、お前をバジルの正室にすることは出来ないが事実上の正妻だ。これはサラの最後の願いであり、サラの生家の望みでもある。どうしてもこのを育ててもらいたいとのことだ」
国王は少し柔らかい表情になると、モモの乳に吸い付いている児を見た。
「その児の名はサクラだ」
「サクラ?」
「そうだ。サラの生命を受け継ぎ、そしてお前の祖国の花の名だ。サクラの中に、二人の母親は存在し続けるのだ。よいな、モモ」
「はい、この児のために生きて参ります」
「それだけではないぞ」
バジルが笑いながら言う。
「サクラも一人では淋しいだろう。弟や妹が欲しくなるに決まっている。もう避妊器具は装着するな」
「次に生まれてくるのは今度こそバジルとお前の児だ。王家に繋がる重臣としてサクラを支えるのだ」
モモは、あまりのことに声が出ない。
「幸い第一、第二王子には男児がいて、王家の継承に不安は無い。モモは自分たちのことだけ考えればよい。昔から夫婦仲が悪いと、そこに付け込む輩が出て、それが原因で家の中が乱れたりするものだ。その点、お前はたいそう床上手と聞いている。バジルも他の女には目もくれないだろう。好ましいことだ」
「そ、そんなことはございません」
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「ふふ、もう逃げられませんよ」
「ああ、だめだ……」
「ご自身が選んだのですからね。精のすべてを吸い尽くして差し上げます」
二人の間には一男一女が生まれ、サクラの側近として、そして兄弟として支え続けた。
この家系から国王が出ることはなかったが、王家の要として繁栄したという。
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