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スイートルーム
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「さ、く、ら」
悠馬が寄りかかって来る。
「な、なに?」
キスしてから、妙に悠馬を意識してしまう。
「期末テストも無事終わったよ」
「どうだった?」
「問題なし。特に数学と物理はカンペキ。さくら先生のおかげだよ」
「良かったね」
「ありがと」
また顔をすり寄せてくる。すりすり、今も甘え方は変わらない。
「あ、ちょっと胸に当ってる」
悠馬を意識しているせいか、乳房が張っているような気がする。そこに刺激を加えられてはたまらない。
「悠馬、ダメだよ。離れて」
「どうしたの?感じちゃった?」
「そんなわけないでしょ!」
澄んだ目でニコっと笑ってくる。
「ねえ、泳ぎに行かない?」
「え……」
受験生と泳ぎに行くなんて、いいんだろうか?
「ちょっと気分転換したいんだよね」
「そ、そうだね」
もう成績的には何の不安もない。でも、ちょっと待って、水着姿を見られるってこと?いやいや、それはマズいかも。
「で、でもさ、私なんだか恥ずかしい」
「何が?」
「だって、水着姿……」
「小さい頃、お風呂いっしょに入ったじゃん」
かあっと顔が赤くなった。
「そ、それとは違うでしょ!」
「いまさら恥ずかしがらなくても」
「だって……」
悠馬はため息をついた。
「仕方ない。クラスの奴らと行くか。ただ、女子がペタペタ触って来るのがウザいんだよね」
そ、そうか。マズい。玲子さんが心配したのもそれだ。ここは私が防波堤にならなくちゃ。だって、私に与えられたミッションだもの。
「わ、わかった。行こう」
「わお、うれしい。じゃ、セットしておくね」
「水着買いに行かなくちゃ」
「オレも行っていい?」
「いやぁ、ダメダメ」
「ダメなの?」
「決まってるじゃない!」
「なーんだ。じゃ、リクエストしていい?」
「リクエストって?」
どうせ、極小ビキニとか言うんでしょ……
「ワンピースの水着にしてくれないかな?」
え、ちょっと意外。
「だって、 そのほうがボディラインがはっきり見えるでしょ?」
「やだ」
思わず顔を覆う。
「見たいなあ、さくらのナイスバディ」
いいよ、見せてあげる、悠馬になら。
そのことを玲子さんに話すと、思わず吹き出した。
「悠馬もやっぱり男なのね」
とっくに男ですけど。私、年上なのに完全に翻弄されてますけど。
「私、たくさんの人に水着姿見られるのが恥ずかしくて」
「大丈夫よ、まかせておいて」
「悠馬は、ほんとに私でいいのかな?」
「いいに決まってるじゃない。ああ見えて悠馬は一途な性格なのよ。ずっと前から、さくらちゃんひとすじ。それにしても、ワンピースがいいなんて、あの子もエロスの本質を知っているわね」
「もう、やめてくださいよ」
玲子さんはふっと真顔になった。
「ありがとう、さくらちゃん。悠馬を拒絶しないでくれて」
「拒絶なんて……」
「さくらちゃんと付き合ってくれれば、ほんとに安心なんだけど」
(そうなるんだろうな、きっと)
その日、二村家の運転手・小宮さんの運転する車に乗った。
「ね、どこに行くの?湘南の海?」
「あんな混雑しているところに行くわけないだろ。さくらのナイスバディに、エロい視線が降り注ぐだろ?」
「また、そういうことを言う……」
もう、恥ずかしくて仕方がない。車は意外にも都心方面に進んで行く。
「え、どこ?」
やがて車は赤坂のホテルの玄関に到着した。
「お待ちしておりました二村様」
ホテルの従業員が恭しく出迎えた。さすが御曹司。
「まずは、お部屋にご案内いたします」
「お世話になります。お願いします」
いつものユルい雰囲気とは違い、キリリと礼儀正しい。育ちの良さが滲み出ている。
(え……)
しかも、私の腰に手を回し、さりげなくエスコートする。それがまた、ごく自然で長い間恋人同士であるような自然さだ。
(手慣れてるな)
こんな扱いを受けたことのない私でさえ、そう感じる。
「こちらでございます」
ドアが開けられると、そこは美しい庭園に面した部屋だった。
「当ホテル特別会員様専用のシークレットスイートルームでございます。二村様にはごひいきにしていただいております」
「はい、小さい頃から何度か来たことがあります」
「本日は二十二時まで、当室と屋外プールを貸し切りでご利用いただけます」
「か、貸し切りですか?」
「はい、貸し切りでございます」
私の親も大きな会社の専務で、何不自由なく育てられた。それでも、この経済格差に驚くばかりだ。
「屋外プールへは専用エレベーターと通路をご利用ください。他のお客様と顔を合わせずに行くことができます」
「知っています」
「本日は、ことに紫外線が強そうなのでご注意くださいませ。日が暮れてからのナイトプールもロマンチックでおすすめですよ。それでは、これで失礼いたします。何かありましたらフロントまでご用命ください」
「ありがとう」
ホテルマンは丁寧にお辞儀をして去って行った。
「さくら、ちょっと強烈な日差しだね」
「うん、やけどするのが怖い」
「夕方になってから行こうか」
「そうしてもらえれば……」
「じゃ、軽くお昼を食べようか」
「うん」
私はロコモコ丼。悠馬は特大のハンバーガー。部屋の中だけど、ハワイアンな感じになった。
「あんまり食べるとお腹出ちゃうな」
「平気平気。だれも見てない」
耳元でフフっと笑う。
「見てるのは、オレだけ……」
「ひっ……」
心臓が暴れちゃうじゃない。
「女の扱い、ずいぶん慣れてるね」
「そんなことないよ」
「だって……」
「親父に言われたんだ。きちんとエスコートできないと、さくらに恥をかかせるぞ、って。それで教えてもらったわけ」
「へえ」
「さ、少し昼寝でもしようか?」
「うん。じゃ、あっちの部屋、使わせてもらうね」
「なに言ってるの?さ、こっち来て」
ダブルベッドに座って、横をポンポンと叩く。
「大丈夫、襲わないから」
「ほんとに?」
「うん、今日はね」
悠馬が寄りかかって来る。
「な、なに?」
キスしてから、妙に悠馬を意識してしまう。
「期末テストも無事終わったよ」
「どうだった?」
「問題なし。特に数学と物理はカンペキ。さくら先生のおかげだよ」
「良かったね」
「ありがと」
また顔をすり寄せてくる。すりすり、今も甘え方は変わらない。
「あ、ちょっと胸に当ってる」
悠馬を意識しているせいか、乳房が張っているような気がする。そこに刺激を加えられてはたまらない。
「悠馬、ダメだよ。離れて」
「どうしたの?感じちゃった?」
「そんなわけないでしょ!」
澄んだ目でニコっと笑ってくる。
「ねえ、泳ぎに行かない?」
「え……」
受験生と泳ぎに行くなんて、いいんだろうか?
「ちょっと気分転換したいんだよね」
「そ、そうだね」
もう成績的には何の不安もない。でも、ちょっと待って、水着姿を見られるってこと?いやいや、それはマズいかも。
「で、でもさ、私なんだか恥ずかしい」
「何が?」
「だって、水着姿……」
「小さい頃、お風呂いっしょに入ったじゃん」
かあっと顔が赤くなった。
「そ、それとは違うでしょ!」
「いまさら恥ずかしがらなくても」
「だって……」
悠馬はため息をついた。
「仕方ない。クラスの奴らと行くか。ただ、女子がペタペタ触って来るのがウザいんだよね」
そ、そうか。マズい。玲子さんが心配したのもそれだ。ここは私が防波堤にならなくちゃ。だって、私に与えられたミッションだもの。
「わ、わかった。行こう」
「わお、うれしい。じゃ、セットしておくね」
「水着買いに行かなくちゃ」
「オレも行っていい?」
「いやぁ、ダメダメ」
「ダメなの?」
「決まってるじゃない!」
「なーんだ。じゃ、リクエストしていい?」
「リクエストって?」
どうせ、極小ビキニとか言うんでしょ……
「ワンピースの水着にしてくれないかな?」
え、ちょっと意外。
「だって、 そのほうがボディラインがはっきり見えるでしょ?」
「やだ」
思わず顔を覆う。
「見たいなあ、さくらのナイスバディ」
いいよ、見せてあげる、悠馬になら。
そのことを玲子さんに話すと、思わず吹き出した。
「悠馬もやっぱり男なのね」
とっくに男ですけど。私、年上なのに完全に翻弄されてますけど。
「私、たくさんの人に水着姿見られるのが恥ずかしくて」
「大丈夫よ、まかせておいて」
「悠馬は、ほんとに私でいいのかな?」
「いいに決まってるじゃない。ああ見えて悠馬は一途な性格なのよ。ずっと前から、さくらちゃんひとすじ。それにしても、ワンピースがいいなんて、あの子もエロスの本質を知っているわね」
「もう、やめてくださいよ」
玲子さんはふっと真顔になった。
「ありがとう、さくらちゃん。悠馬を拒絶しないでくれて」
「拒絶なんて……」
「さくらちゃんと付き合ってくれれば、ほんとに安心なんだけど」
(そうなるんだろうな、きっと)
その日、二村家の運転手・小宮さんの運転する車に乗った。
「ね、どこに行くの?湘南の海?」
「あんな混雑しているところに行くわけないだろ。さくらのナイスバディに、エロい視線が降り注ぐだろ?」
「また、そういうことを言う……」
もう、恥ずかしくて仕方がない。車は意外にも都心方面に進んで行く。
「え、どこ?」
やがて車は赤坂のホテルの玄関に到着した。
「お待ちしておりました二村様」
ホテルの従業員が恭しく出迎えた。さすが御曹司。
「まずは、お部屋にご案内いたします」
「お世話になります。お願いします」
いつものユルい雰囲気とは違い、キリリと礼儀正しい。育ちの良さが滲み出ている。
(え……)
しかも、私の腰に手を回し、さりげなくエスコートする。それがまた、ごく自然で長い間恋人同士であるような自然さだ。
(手慣れてるな)
こんな扱いを受けたことのない私でさえ、そう感じる。
「こちらでございます」
ドアが開けられると、そこは美しい庭園に面した部屋だった。
「当ホテル特別会員様専用のシークレットスイートルームでございます。二村様にはごひいきにしていただいております」
「はい、小さい頃から何度か来たことがあります」
「本日は二十二時まで、当室と屋外プールを貸し切りでご利用いただけます」
「か、貸し切りですか?」
「はい、貸し切りでございます」
私の親も大きな会社の専務で、何不自由なく育てられた。それでも、この経済格差に驚くばかりだ。
「屋外プールへは専用エレベーターと通路をご利用ください。他のお客様と顔を合わせずに行くことができます」
「知っています」
「本日は、ことに紫外線が強そうなのでご注意くださいませ。日が暮れてからのナイトプールもロマンチックでおすすめですよ。それでは、これで失礼いたします。何かありましたらフロントまでご用命ください」
「ありがとう」
ホテルマンは丁寧にお辞儀をして去って行った。
「さくら、ちょっと強烈な日差しだね」
「うん、やけどするのが怖い」
「夕方になってから行こうか」
「そうしてもらえれば……」
「じゃ、軽くお昼を食べようか」
「うん」
私はロコモコ丼。悠馬は特大のハンバーガー。部屋の中だけど、ハワイアンな感じになった。
「あんまり食べるとお腹出ちゃうな」
「平気平気。だれも見てない」
耳元でフフっと笑う。
「見てるのは、オレだけ……」
「ひっ……」
心臓が暴れちゃうじゃない。
「女の扱い、ずいぶん慣れてるね」
「そんなことないよ」
「だって……」
「親父に言われたんだ。きちんとエスコートできないと、さくらに恥をかかせるぞ、って。それで教えてもらったわけ」
「へえ」
「さ、少し昼寝でもしようか?」
「うん。じゃ、あっちの部屋、使わせてもらうね」
「なに言ってるの?さ、こっち来て」
ダブルベッドに座って、横をポンポンと叩く。
「大丈夫、襲わないから」
「ほんとに?」
「うん、今日はね」
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