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次の日から騎士団の人が食事はこちらに食べに来てくれることになり、その時間だけ貸し切りにすることになった。配達を頼んだことも謝罪されて、私とケイさんは店長に危ないところへ配達させてしまったと平謝りされた。
元旦那さんがいると言ってケイさんが給仕を断ったのでその時間帯は私が給仕を引き受けた。とはいっても注文分は先にテーブルに乗せて人数分スタンバイしているので水を入れに行くだけなのだ。
竜種はガイ様一人だけで、もちろんガイ様が団長だった。竜種は例外なく貴族なのでそんな人がこんな田舎のバルでご飯を食べているのが信じられない。でも、出されたものはきちんと食べていたのが好印象だった。あと、水をよく飲むので入れに行けるのが嬉しかった。不謹慎にもこのまま魔獣が退治できなかったらガイ様を見つめていられるのにと思ってしまう。
人を好きになるってこういう事なのかな、とガイ様を見ると思った。店に来てくれた日は飛び上がるほど嬉しかったし、来なかった日は酷く落ち込んだ。それでもこの恋が実らないことは分かっていたし、その姿を見られるだけで幸せだった。
ただ、やっぱり私の外見は誤解されるようだ。少しでもガイ様によくみられたくて、薄化粧なんてしたのも悪かったのかもしれない。他の団員に肉体関係を迫られることもあった。
「いくら出したらやれるんだよ。お高く留まりやがって」
そんな日は大抵ガイ様がいない日で、給仕の時に転ばされそうになったり、小突かれたりしたのでいい迷惑だった。やっぱり早く魔獣を倒して王都に戻ってくれないと困る。
そうして魔獣の駆除が終わって騎士団が王都に帰るという話をきいた。ガイ様が店に来るのも今日で最後だ。夜は貸し切りで宴会になる予定で、準備にてんてこ舞いになった。
「ルネ、団長はダメよ。竜種はダメ」
「ケイさん、そんなの分かってますよ。憧れて見ているのが楽しいんです。今日でそれも終わりですけれどね」
事情をすべて話していたのでケイさんが心配してくれていた。でも、ガイ様と何かあるなんてあり得なかった。
「それなら、いいけど」
「心配しなくても団長さんの方が私なんかお断りですよ」
「……今日の夜は団員みんなお酒が入るから気を付けないとね」
「はい」
ケイさんの言う通り、ちょっと団員の人が羽目を外すかもしれない。こういう時、トラブルになりやすいから気を付けないと。
その日はガイ様もバルで昼食を取っていた。私は最後にガイ様の姿を目に焼き付けようと思った。その日も水を飲むスピードが速くて、何回か水を入れに行った。でも、最後の日だからって声をかける勇気もなかったし、ガイ様が席を立つのをジッと見送ることしかできなかった。
「ありがとうございました」
お店から出る背中にそっと囁いたので精一杯だった。
「あれ」
昼食の後片付けをしているとガイ様が座っていた席にキラキラ光るものが有った。指でつまみ上げると透明で小さな貝殻のようにも見えた。
「それ、鱗だよ。珍しい事もあるんだね。団長が落としたんじゃない? 結構価値のあるものだよ。いいじゃん、貰っておきなよ」
「え? 価値があるならお返しした方がいいんじゃない?」
「体から落ちたものなんだから気づいてもいないわよ」
「じゃあ、貰います。……嬉しい」
大事そうに鱗を仕舞う私にケイさんが呆れ顔だった。でも奇跡で手に入れたこの鱗が有ればこの恋もちゃんと消化できると思った。
元旦那さんがいると言ってケイさんが給仕を断ったのでその時間帯は私が給仕を引き受けた。とはいっても注文分は先にテーブルに乗せて人数分スタンバイしているので水を入れに行くだけなのだ。
竜種はガイ様一人だけで、もちろんガイ様が団長だった。竜種は例外なく貴族なのでそんな人がこんな田舎のバルでご飯を食べているのが信じられない。でも、出されたものはきちんと食べていたのが好印象だった。あと、水をよく飲むので入れに行けるのが嬉しかった。不謹慎にもこのまま魔獣が退治できなかったらガイ様を見つめていられるのにと思ってしまう。
人を好きになるってこういう事なのかな、とガイ様を見ると思った。店に来てくれた日は飛び上がるほど嬉しかったし、来なかった日は酷く落ち込んだ。それでもこの恋が実らないことは分かっていたし、その姿を見られるだけで幸せだった。
ただ、やっぱり私の外見は誤解されるようだ。少しでもガイ様によくみられたくて、薄化粧なんてしたのも悪かったのかもしれない。他の団員に肉体関係を迫られることもあった。
「いくら出したらやれるんだよ。お高く留まりやがって」
そんな日は大抵ガイ様がいない日で、給仕の時に転ばされそうになったり、小突かれたりしたのでいい迷惑だった。やっぱり早く魔獣を倒して王都に戻ってくれないと困る。
そうして魔獣の駆除が終わって騎士団が王都に帰るという話をきいた。ガイ様が店に来るのも今日で最後だ。夜は貸し切りで宴会になる予定で、準備にてんてこ舞いになった。
「ルネ、団長はダメよ。竜種はダメ」
「ケイさん、そんなの分かってますよ。憧れて見ているのが楽しいんです。今日でそれも終わりですけれどね」
事情をすべて話していたのでケイさんが心配してくれていた。でも、ガイ様と何かあるなんてあり得なかった。
「それなら、いいけど」
「心配しなくても団長さんの方が私なんかお断りですよ」
「……今日の夜は団員みんなお酒が入るから気を付けないとね」
「はい」
ケイさんの言う通り、ちょっと団員の人が羽目を外すかもしれない。こういう時、トラブルになりやすいから気を付けないと。
その日はガイ様もバルで昼食を取っていた。私は最後にガイ様の姿を目に焼き付けようと思った。その日も水を飲むスピードが速くて、何回か水を入れに行った。でも、最後の日だからって声をかける勇気もなかったし、ガイ様が席を立つのをジッと見送ることしかできなかった。
「ありがとうございました」
お店から出る背中にそっと囁いたので精一杯だった。
「あれ」
昼食の後片付けをしているとガイ様が座っていた席にキラキラ光るものが有った。指でつまみ上げると透明で小さな貝殻のようにも見えた。
「それ、鱗だよ。珍しい事もあるんだね。団長が落としたんじゃない? 結構価値のあるものだよ。いいじゃん、貰っておきなよ」
「え? 価値があるならお返しした方がいいんじゃない?」
「体から落ちたものなんだから気づいてもいないわよ」
「じゃあ、貰います。……嬉しい」
大事そうに鱗を仕舞う私にケイさんが呆れ顔だった。でも奇跡で手に入れたこの鱗が有ればこの恋もちゃんと消化できると思った。
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