そこに愛はあるか

竹輪

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愛を掴み取れ<その後のオマケ話:ロイ視点>

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 はあ、昨日もやっぱり止まられるわけもなくスウを抱いた。当の本人はヨロヨロになりながら、『やっぱり日頃の鍛練がたりねぇ』と言っている。女性の方が負担がかかるのだから仕方ないと思うのだがスウはそうは思わないらしい。スウは女性を大切に扱うのに自分は女性のカテゴリーから除外されている。元が男だったからかスウはいろんな面に関してこうである。

 スウははっきり言って強い。女性になったからと言って人間で勝てるものは多くないと思う。ハンター同士が争うことは無いし、巷の荒くれ者なんかはスウにとっては赤子の手を捻るようにたやすいだろう。現に結婚前に捕まえた賊なんて五人相手に秒殺だった。そのせいもあってスウは町では女子に多大な人気者である。隠れてファンクラブなるものがあるくらいだ。モチロン、男のファンもいる。私を背中に抱えてこの町に帰ってきたときのスウの格好といったら裸同然の大サービスだったらしく、その話は伝説と化している。スウの裸見た奴らみんな目つぶししてやりたいが、そうすると町の住人のほとんどになるので我慢するしかない。まったく不快でしかない。しかし、スウは男に触られるのを極度に嫌がるのでそちらは大変安心だ。私だけが特別なのだ。ふふん。

「あら、今日はスウちゃんは?」

 店番をしていると昼過ぎに魚屋のおかみが薬を買いに来た。そうはいっても皆暇なときにここへ来てスウと話をするのが日課だ。ケーキやお菓子、飲み物なんかを手土産に来ては長話するので店の一角にテーブルとイスがいつの間にか設置されているのだ。誰が持ってきたんだ。

「今日は休ませます」

「あら。あらあらごちそうさま。スウちゃんもたいへんねぇ」

 おかみは私の顔を覗き込んでそう言う。全部ばれてる感じだが別に説明してやる必要もない。

「こんにちは~~!あれ??スウちゃんは?」

「今日はお休みらしいよ、レモーネ」

「ふーん……。休日の次の日の午前中ってスウちゃんほとんどいないよね。今日は一日休まなきゃとか……。どんだけ……」

「「……」」

 話すこともないので黙っていると、ご婦人たちは顔を見合わせていた。用がないなら帰っていただきたい。そう思っていると二階からドタドタと凄い音がしてスウが降りてきた。

「ロイ!起こしてよ!寝過ごしちゃったじゃねぇか!」

「スウ……いや、気持ちよさそうに眠っていましたので」

「あ……トッチ。レモーネ、おはよ……こんにちは」

「スウちゃん、もうお昼よぉ。旦那様に、手加減してって言っとかないと」

「スウ、辛かったのですか?」

「ろ、ロ、ロ、ロ、ロイ!!違うから、俺は大丈夫だから」

「でも、スウももっとって……。昨日はいつもよりも……」

「いやーーーーーーッ!!!何言っちゃてくれてんの!?」

 ご婦人方はニヤニヤしながらスウを見ている。私はまた失言したようだ。スウが真っ赤な顔をしてなにやらワタワタしている。

「私はもう少し店番ができますのでスウは着替えてきてください」

 ハタと気付くとスウは下着をつけていない。ご婦人方の前だといってもこれはイケない。

「あ……ごめん……す、すぐ着替えてくっから!」

「あんまり忘れるとお仕置きですよ、スウ」

 ビクリとしてスウは二階に戻っていった。ご婦人方はまだ帰る気が無いようで、お菓子やお茶をテーブルにセットし始める。どうやらスウを待つようだ。

「うちは夫婦になってから三十年になるけどね……」

 ご婦人方の……多分トッチさんの方が私に話しかけた。

「はい」

「何にも言わないでも相手に伝わるなんてことはないのよ。何十年夫婦しててもね」

「……はい」

「スウちゃん……悩んでるわよ」

「え……」

 もう一人のご婦人も頷いた。

 どうやら私の妻には悩み事があるらしい。
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