22 / 41
偽りの一週間2
しおりを挟む
コトリ、と音が聞こえてきて、しばらくすると階段を登る音がする。時計を見ると零時を回ったところだった。不思議に思っていたけど、どうしてこんなにフロー様の帰りって遅いのだろう。
しかし、今はそれどころじゃない。
フロー様が寝室に行ったら、行動を起こさなければならない。
夢だと思っていたあの熱烈な行動……。
数々のイメージはある。後は実行できるかどうかだ。『ジャニス! 恥ずかしがってたら即バレよ!』リッツィ姉さんの叱咤が思い出される。どれだけ練習させられたか……。
やるんだ。やらなければ。私はできる。
パタン、とフロー様の寝室が締まる音を聞いて私はすぐさまそこへ向かった。
フロー様の寝室のドアの前にきて確信する。フロー様はニッキーをくるのを待っているのだ。でなきゃトラップ魔法が解かれているわけがない。
躊躇していいる場合じゃない! いざいかん!
「フロー! おかえりなさい!」
バン、とドアを開けて一目散にフロー様のもとへ行くと、心を無にしてフロー様に抱き着いた。
「ただいま、いいこにしていたかい?」
甘い、フロー様の優しい声が聞こえてくる。
「フローがいなくて寂しかったわ」
「……」
ニッキーがそうしていたように抱き着いてみたが、緊張して言葉が続かない。てか、勢いよく抱き着いたけど、顔が近い、体温が! 恥ずかしすぎる!
なるべくフロー様に顔を見られないように抱き着いていたが、フロー様に優しく体を離された。
「ニッキー」
「は、……う、うん?」
じっと私を眺めるフロー様に冷や汗がでる。まさか、秒でバレた? するとゆっくりとフロー様が頬をこちらに差し出した。こ、こ、これは……知ってる! ニッキーはキスをするのが好きなんだよね!
あああああっ! ままよ!
ちゅっ、ちゅっ、と何回も軽くキスをして顔が見られないようまた抱き着いた。
お願いだから、もう許してください。
これ以上私にはムリ! ムリなのぉおおおお!
「どうしたんだい? 恥ずかしがって」
そんな私の頭をフロー様が優しく撫でてくれた。やめてくれーっ! 惚れちゃうから―!
心臓はバクバクで、もう顔も真っ赤だ。でも、気取られてはいけない。いけないからぁ!
「愛してるよ」
「え、ええと、あの、う、うん! 私もフローが世界一大好き!」
「……今日はこのまま一緒にベッドで寝ようか」
「うっ……うれしい……」
「ニッキー?」
「フローと眠れるなんて素敵!」
フロー様に抱き着いたまま、持ち上げられるとそのままベッドに運ばれた。
軽々と私を運べるんだ……。
なんだか的外れなところに感心してしまう。フカフカのベッドに横たわったフロー様の腕の中に閉じ込められてなすすべもなく固まってしまう。
「君が優しい子だって、僕は知っている。ますます大好きだよ」
「わ、私も大好きよ」
かろうじて答えるとフロー様の体が揺れていて、見上げると楽しそうに笑っていた。こんなに嬉しそうに笑うフロー様は初めて見た。零れるような笑顔に、ひと時みとれてしまった。
「大好きだって言ってもらえて嬉しい」
「……」
ギュッと抱きしめられて、ぐりぐりと頭に頬で擦られてから額にキスをされた。ドキドキして、今まで感じたことのないようなフワフワした感覚に戸惑う。
嬉しそうなフロー様。幸せそうなフロー様はなんてキラキラして素敵なのだろう。
ずっとこのままこの腕の中に包まれていたい。そんなふうに感じているとフロー様の後ろにニッキーの肖像画が見えた。
そこで、はっとして、自分がニッキーのふりをしていることを肝に銘じた。
甘い、ニッキーである時間。 私とは味わえないだろう幸せな感覚。
こんな姿を見せられて、フロー様のニッキーへの想いに泣きそうになった。
しかし、今はそれどころじゃない。
フロー様が寝室に行ったら、行動を起こさなければならない。
夢だと思っていたあの熱烈な行動……。
数々のイメージはある。後は実行できるかどうかだ。『ジャニス! 恥ずかしがってたら即バレよ!』リッツィ姉さんの叱咤が思い出される。どれだけ練習させられたか……。
やるんだ。やらなければ。私はできる。
パタン、とフロー様の寝室が締まる音を聞いて私はすぐさまそこへ向かった。
フロー様の寝室のドアの前にきて確信する。フロー様はニッキーをくるのを待っているのだ。でなきゃトラップ魔法が解かれているわけがない。
躊躇していいる場合じゃない! いざいかん!
「フロー! おかえりなさい!」
バン、とドアを開けて一目散にフロー様のもとへ行くと、心を無にしてフロー様に抱き着いた。
「ただいま、いいこにしていたかい?」
甘い、フロー様の優しい声が聞こえてくる。
「フローがいなくて寂しかったわ」
「……」
ニッキーがそうしていたように抱き着いてみたが、緊張して言葉が続かない。てか、勢いよく抱き着いたけど、顔が近い、体温が! 恥ずかしすぎる!
なるべくフロー様に顔を見られないように抱き着いていたが、フロー様に優しく体を離された。
「ニッキー」
「は、……う、うん?」
じっと私を眺めるフロー様に冷や汗がでる。まさか、秒でバレた? するとゆっくりとフロー様が頬をこちらに差し出した。こ、こ、これは……知ってる! ニッキーはキスをするのが好きなんだよね!
あああああっ! ままよ!
ちゅっ、ちゅっ、と何回も軽くキスをして顔が見られないようまた抱き着いた。
お願いだから、もう許してください。
これ以上私にはムリ! ムリなのぉおおおお!
「どうしたんだい? 恥ずかしがって」
そんな私の頭をフロー様が優しく撫でてくれた。やめてくれーっ! 惚れちゃうから―!
心臓はバクバクで、もう顔も真っ赤だ。でも、気取られてはいけない。いけないからぁ!
「愛してるよ」
「え、ええと、あの、う、うん! 私もフローが世界一大好き!」
「……今日はこのまま一緒にベッドで寝ようか」
「うっ……うれしい……」
「ニッキー?」
「フローと眠れるなんて素敵!」
フロー様に抱き着いたまま、持ち上げられるとそのままベッドに運ばれた。
軽々と私を運べるんだ……。
なんだか的外れなところに感心してしまう。フカフカのベッドに横たわったフロー様の腕の中に閉じ込められてなすすべもなく固まってしまう。
「君が優しい子だって、僕は知っている。ますます大好きだよ」
「わ、私も大好きよ」
かろうじて答えるとフロー様の体が揺れていて、見上げると楽しそうに笑っていた。こんなに嬉しそうに笑うフロー様は初めて見た。零れるような笑顔に、ひと時みとれてしまった。
「大好きだって言ってもらえて嬉しい」
「……」
ギュッと抱きしめられて、ぐりぐりと頭に頬で擦られてから額にキスをされた。ドキドキして、今まで感じたことのないようなフワフワした感覚に戸惑う。
嬉しそうなフロー様。幸せそうなフロー様はなんてキラキラして素敵なのだろう。
ずっとこのままこの腕の中に包まれていたい。そんなふうに感じているとフロー様の後ろにニッキーの肖像画が見えた。
そこで、はっとして、自分がニッキーのふりをしていることを肝に銘じた。
甘い、ニッキーである時間。 私とは味わえないだろう幸せな感覚。
こんな姿を見せられて、フロー様のニッキーへの想いに泣きそうになった。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される
未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」
目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。
冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。
だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし!
大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。
断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。
しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。
乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
銭ゲバ薬師と、思考過敏症の魔法機動隊長。
Moonshine
恋愛
昼も薄暗い、城のほとりの魔の森に一人で暮らす、ちょっと・・大分お金にガメツイけれど、腕の立つ薬師の少女のニコラと、思考過敏症に悩まされる、美麗な魔法機動隊長、ジャンのほのぼの異世界恋愛話。
世界観としては、「レイチェル・ジーンは踊らない」に登場するリンデンバーグ領が舞台ですが、お読みにならなくとも楽しめます。ハッピーエンドです。安心してお楽しみください。
本編完結しました。
事件簿形式にて、ミステリー要素が加わりました。第1章完結です。
ちょっと風変わりなお話を楽しんでいってください!
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる