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─明堂院 凛翔の日記─
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7月13日
日記を書こうだなんて思ったことはありませんでしたが、今日とても面白い出来事がおこったので、書き記してみようと思います。
私は、昔からなんでも出来ました。別に努力などしなくても成功させることは簡単でしたし、常に一番であることも出来ました。
そんな私に群がる人間は多く、そいつらは私のことを露ほども知らない癖に、私を素晴らしい人間だと誉めそやします。
私のことを知りもしないのに、何故そんなことを言えるのでしょうかと、私はいつも心の中で嘲笑っていました。
それは、鷲尾大学に入学してからも同じでした。
他はまだしも、心理学の人間も群がる様には笑いを堪えるのに大変な努力を要しました。仮にも、人の内面を見る勉強をしている奴らが、私の本性も見抜けないとは、頭の弱い奴ばかりだなと思ったものです。
それでも、何人か、本当に片手で数えるほどですが、私に違和感を覚えている者がいます。それでも、明確な何かはわかっていないらしいようでしたが、まぁ、他の人間よりは将来有望かもしれないと思ったものです。
ですが、今日、私は一人の女性と出会いました。
正確には、見かけた、という方がいいでしょうか。彼女は遠目から私を見ると、最初は何も思っていなかったのでしょうが、その数秒後には、恐怖に飛び上がり、そそくさと逃げていきました。
私以外には見つかっていなかったようですが、その姿は私の目から離れませんでした。
明確な拒絶。
それをしてくる人間は他にいなかったので、とても興味を注がれました。
早速私は彼女のことを調べることにしました。
彼女の名前は『御嘉 雪麗』というそうです。
9月25日
今日も御嘉さんについて書いていこうと思います。
何故こんなにも日付が開いてしまったかというと、御嘉さんが私のことを避けるので、中々見かける機会がなかったからです。
そのかわり、見かけたときはその姿が消えるまでずっと観察しているのですが。
彼女は何か、暗いものを抱えているのだなと感じました。
家庭環境でしょうか?なんだか、他の方よりも達観していて一歩引いたところから物事を見ている様が、とても印象的でした。
それは、諦めにも似たようなものを感じました。ですが、彼女は現状に決して満足しているわけではない、という様に感じられました。ただ、じっと耐えている様が脳裏にこびりついて、離れませんでした。
10月19日
今日は、外出先でばったりと御嘉さんを見つけました。
彼女は二人の女性、ご友人の辻野 万里さんと、倉梨 波瑠華さんですね。彼女のことは、あれから調べて様々なことを知りました。勿論、交友関係も含めて。三人でショッピングを楽しんでいるようでしたので、私はそれを観察することにしました。
友人二人に囲まれている彼女は、普段の無表情からは想像も出来ないほど楽しそうに笑っていました。それでも、他人から見れば控えめだとは思いますが、それは素敵な笑顔だと思いました。
彼女も、二人には心を開いている様子で遠慮もなく、気兼ねなく御嘉 雪麗という人間をさらけ出していました。
一つ嬉しかったのが、彼女が私のことを二人に話しているということですね。恐怖しているといった内容でしたが、そんなことよりも、そこまで彼女が私のことを意識しているということに歓喜しました。
嬉しい限りです。
3月10日
彼女を観察し始めて約八ヶ月が経ちました。そろそろ進級の時期になり、私は三年生、彼女は二年生となりました。
ずっと、彼女を見ていて気が付きましたが、彼女は第二図書館がお気に入りのようです。確かにあそこは彼女が落ち着きそうな場所ですね。私も行ってみましたが、なるほど、とても良い場所だと思いました。
私は閲覧履歴を見て、彼女が読んだ全ての本を読むことにしました。そうして、私はまたも歓喜することになるのです。本を読んでみて分かったのですが、彼女と私の好みはよく似ています。この感じでは、心理学について考えていることも同じではないのでしょうか?
なんというか、私と彼女のアイデンティティはよく似ていると感じしました。本を読んでいて、私はもう一人の私を見つけたような気がしました。
そうして、私はある名案を思いついたのです。それは、彼女との接点を作る方法です。私は焦っておりました。何故なら、このままでは、彼女との繋がりをつくれないまま、卒業してしまうのではないかと思ったからです。そんなのは絶対に嫌です。私は彼女と繋がりたい。
そこで、私はかねてより書いていた心理学分析ノートを彼女に読んでもらおうと想いました。これを彼女が読めば、少しは私に興味を持ってくれるのではないかと考えたからです。元々、別のノートに書いていた日記を、分析ノートの最後のページに書き写し、彼女に私を知ってもらう。このノートを第二図書館へおけば、よく利用する彼女なればきっと見つけてくれるはずです。
全ては、御嘉 雪麗さん、貴女にこちらに堕ちてもらうために。
御嘉 雪麗さん、もしこのノートを読んだなら、もう私から逃げられるなど、出来ないと思ってくださいね。
日記を書こうだなんて思ったことはありませんでしたが、今日とても面白い出来事がおこったので、書き記してみようと思います。
私は、昔からなんでも出来ました。別に努力などしなくても成功させることは簡単でしたし、常に一番であることも出来ました。
そんな私に群がる人間は多く、そいつらは私のことを露ほども知らない癖に、私を素晴らしい人間だと誉めそやします。
私のことを知りもしないのに、何故そんなことを言えるのでしょうかと、私はいつも心の中で嘲笑っていました。
それは、鷲尾大学に入学してからも同じでした。
他はまだしも、心理学の人間も群がる様には笑いを堪えるのに大変な努力を要しました。仮にも、人の内面を見る勉強をしている奴らが、私の本性も見抜けないとは、頭の弱い奴ばかりだなと思ったものです。
それでも、何人か、本当に片手で数えるほどですが、私に違和感を覚えている者がいます。それでも、明確な何かはわかっていないらしいようでしたが、まぁ、他の人間よりは将来有望かもしれないと思ったものです。
ですが、今日、私は一人の女性と出会いました。
正確には、見かけた、という方がいいでしょうか。彼女は遠目から私を見ると、最初は何も思っていなかったのでしょうが、その数秒後には、恐怖に飛び上がり、そそくさと逃げていきました。
私以外には見つかっていなかったようですが、その姿は私の目から離れませんでした。
明確な拒絶。
それをしてくる人間は他にいなかったので、とても興味を注がれました。
早速私は彼女のことを調べることにしました。
彼女の名前は『御嘉 雪麗』というそうです。
9月25日
今日も御嘉さんについて書いていこうと思います。
何故こんなにも日付が開いてしまったかというと、御嘉さんが私のことを避けるので、中々見かける機会がなかったからです。
そのかわり、見かけたときはその姿が消えるまでずっと観察しているのですが。
彼女は何か、暗いものを抱えているのだなと感じました。
家庭環境でしょうか?なんだか、他の方よりも達観していて一歩引いたところから物事を見ている様が、とても印象的でした。
それは、諦めにも似たようなものを感じました。ですが、彼女は現状に決して満足しているわけではない、という様に感じられました。ただ、じっと耐えている様が脳裏にこびりついて、離れませんでした。
10月19日
今日は、外出先でばったりと御嘉さんを見つけました。
彼女は二人の女性、ご友人の辻野 万里さんと、倉梨 波瑠華さんですね。彼女のことは、あれから調べて様々なことを知りました。勿論、交友関係も含めて。三人でショッピングを楽しんでいるようでしたので、私はそれを観察することにしました。
友人二人に囲まれている彼女は、普段の無表情からは想像も出来ないほど楽しそうに笑っていました。それでも、他人から見れば控えめだとは思いますが、それは素敵な笑顔だと思いました。
彼女も、二人には心を開いている様子で遠慮もなく、気兼ねなく御嘉 雪麗という人間をさらけ出していました。
一つ嬉しかったのが、彼女が私のことを二人に話しているということですね。恐怖しているといった内容でしたが、そんなことよりも、そこまで彼女が私のことを意識しているということに歓喜しました。
嬉しい限りです。
3月10日
彼女を観察し始めて約八ヶ月が経ちました。そろそろ進級の時期になり、私は三年生、彼女は二年生となりました。
ずっと、彼女を見ていて気が付きましたが、彼女は第二図書館がお気に入りのようです。確かにあそこは彼女が落ち着きそうな場所ですね。私も行ってみましたが、なるほど、とても良い場所だと思いました。
私は閲覧履歴を見て、彼女が読んだ全ての本を読むことにしました。そうして、私はまたも歓喜することになるのです。本を読んでみて分かったのですが、彼女と私の好みはよく似ています。この感じでは、心理学について考えていることも同じではないのでしょうか?
なんというか、私と彼女のアイデンティティはよく似ていると感じしました。本を読んでいて、私はもう一人の私を見つけたような気がしました。
そうして、私はある名案を思いついたのです。それは、彼女との接点を作る方法です。私は焦っておりました。何故なら、このままでは、彼女との繋がりをつくれないまま、卒業してしまうのではないかと思ったからです。そんなのは絶対に嫌です。私は彼女と繋がりたい。
そこで、私はかねてより書いていた心理学分析ノートを彼女に読んでもらおうと想いました。これを彼女が読めば、少しは私に興味を持ってくれるのではないかと考えたからです。元々、別のノートに書いていた日記を、分析ノートの最後のページに書き写し、彼女に私を知ってもらう。このノートを第二図書館へおけば、よく利用する彼女なればきっと見つけてくれるはずです。
全ては、御嘉 雪麗さん、貴女にこちらに堕ちてもらうために。
御嘉 雪麗さん、もしこのノートを読んだなら、もう私から逃げられるなど、出来ないと思ってくださいね。
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