乙女ゲームに転生したらチートだったけど平凡に生きたいのでとりあえず悪役令息付きの世話役になってみました。

おでかけ

22.道すがら

話してみると意外と気さくだった少年は自分のことをブランと呼ぶように言った。


「では、私のことはイオとでも。」

せっかくだし自己紹介させてもらおう。

「こちらはマルル、背中におぶさっているのはフレドリック様です。」


別に疑ってる訳では無いが苗字などは伏せておこう。


「よろしくな！マルルとフレドリック。」


ん～。


こいつ真実を言ったら首飛ぶな。
今更だけど、フレドリックのお家は領主であると共に公爵家としても有名であった。

おかげでフレドリックの父と1番上の兄は、毎日仕事が大変そうだが仕方ないだろう。


領主として、首都の半分を治めなければならないのだから……。



つまり、エレメス・ファインとは知らぬ人いない名家であった。






「ブランさんは森で狩りでもしてたんですか？」


ちらと馬にかかってる弓を見る。

「ん、そんなところだ。勝手に家を抜けてきたから帰ったらさぞや怒られるんだがな。」

そう言ってにやにや笑ってた。度胸あるな。


「イオこそおかしな奴だよな。魔術士はみんなどこかしら髪伸ばしているではないのか？」

魔法は精霊や、世の常に助けてもらう力。
  ダウェールという大魔術士が昔精霊王を呼び出したことがあった。
精霊王ソレは魔力を持つものの体の一部を欲しがった。ダウェールは自分の髪を切り、精霊王に渡したところいたく気に入りったそうだ。

それに習い魔術士はひと房だろうと、髭だろうと伸ばすものが多い。

信仰心の現れだろう。

ついでに、大魔術士ダウェールはイオが通っていた魔法学院の初代校長であり、建設者である。



「魔術士の資格は取ってますが、今は別の仕事をしているので。」


ふぅ～ん。



「それは魔術士よりも大事なのかね。」


訝しげに言ったことは聞き流しておこう。

俺にとってフレディ様の傍にいることが彼を、そして俺自身を救うことになると信じて。