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第四章.愛する私のシャルルへ

59.雑談

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「先生、クロの製造工場って知ってる?」
 昨日、ジョエルと先生をナンパに送り出したら、別荘の周りがお姉さんだらけになってしまったので、今日は、部屋でダラダラ過ごしていた。暇だ。
 遊びに来た日は、海を見てるだけで時間がつぶせたが、もうすっかり見飽きた。お姉さんを見てる方が面白いくらいだが、見つかるとめちゃくちゃ怖い思いをしたので、もうやめた。
「噂を聞いたくらいだね。実在するなら買い取ってみたかったが、そうする前に潰れていたよ」
「買い取るんだ」
 セクハラ先生が買い取ったら、より一層嫌な世界になりそうだ。買われなくて良かったね。
「買い取れば、自由にできるだろう? 解散させることもできたかもしれない。だが、私が見つける前に、博士が壊してしまったそうだ」
「シュバルツは、お金持ちになったの? 買い取ったの?」
 無人島ギリギリ生活をしていたシュバルツは、生きてただけでスゴイと思うんだけど、博士って、どういうことなのか、まったく想像ができないんだよなぁ。何がどうしてそうなったのか。
「いや、博士は、、、お嬢さん向きの話ではないから、知らない方がいいだろう。博士はあまり金に頓着はしていなかったから、資金力はなかった。だが、発明品を人を殴れる程度に持っていてね。力はあった。お嬢さんが、噛んでいるんだろう?」
「わ、私は3日だけの仲だよ? 無理でしょ」
 現物を山程渡した携帯食料はわかるが、窓は木よりもガラスがいいんだよねー、なんて雑談から発明まで繋げてしまうのが、シュバルツのスペックだ。寝る前に暇つぶしに話した那砂知識をどんな形でどんな風に利用したか、、、私の所為ではなく、シュバルツがスゴすぎるだけだと思う。私自身も何を話したか、記憶に残っていないのに。本当に、どうやって炉とか作ったのかな!
「お嬢さんは、まだわかってないようだね。博士は、お嬢さんの狂信者だった。お嬢さんができると言うなら、できると信じて疑わなかった。お嬢さんが欲しがった物を全部作ると言っていたよ。欲しがりついでに、知識も与えたね? 当時は皆、居もしない妻の幻想を抱いていると思っていたのにねぇ」
 いや、知識を与えたって、無理だろ。知識元の私は、独力でなんて作れる気がしないし、無人島で外部と協力せずに作るとか、どう考えても無理だ。
「うぐっ。シュバルツが、私にすごい懐いてたのは知ってる。先生は、親しげに話してるけど、絶対、嫌われてたでしょう」
「その通りだよ。昨日の髪色を変える魔法が決定的だった。博士に取り入りたくて開発したんだよ。なのに、髪を黒くして行ったら、追い出された」
「ただでさえクロ以外受け入れないのに、クロ以外が黒くなって近寄ってくるなんて、そりゃあ亀裂入るよ」
 騙しに来てるとしか、思われないよね。
「いや、クロも受け入れていなかったよ。妻以外はいらない、と公言していた」
 なんでだよ! 一人はシンドイじゃん。元気に皆と仲良く幸せに暮らして欲しかったよ。クロだから無理だった、ってコトならわかるけど。
「ああ、今すぐ殴りに行きたい。ジョエルと一緒に」
「わたしと?」
「そう。シュバルツの問題は、ジョエルがいたら大半片付くんだよー。もう何度、ジョエル助けて! って思ったことか」
 先生でも良さそうな気はするのだけど、仲良くできないんじゃね。
「そ、そうなのか。悪かったね、助けに行けなくて」
「ジョエルが助けに来てくれて、ついでにシュバルツと結婚してくれたら、私は安心して帰って来れたよ」
 本当にままならないものだね。ああ、でもそうしたら、今度は私が困るのか。
「なんでジョエルは、2人3人って分裂して増えたりしないんだろうねぇ。増えたら絶対喜ぶよ。外のお姉さんとか」 
「期待に応えるのが、難しすぎる」

「シュバルツ存命時になくなってたなら、私の出身地は工場じゃないんだね」
「それは、興味深い話題だね」
「知ってどうすんだよ。お前は関係ないだろ?」
「うーん。あんまり歓迎したくない事態ではあるんだけど、うちの家族はシャルルに面倒をみてもらってるみたいだから、私も何かした方がいいかと。だって、生きてたら困ってるとこしか想像できないじゃん」
 隔世遺伝でないのなら、両親のどちらかはクロだ。誘拐されたり、誘拐されたり、誘拐されたりしてるかもしれない。誘拐された先は、どうなるんだろうか? そういえば、怖いしか考えてなかったが。
「俺がシャルルに出会った場所なら教えてやれるが、きっとシャルルは流者だぞ? 家なしだったし、黒髪の噂もなかったところに、ひょいと現れたんだから」
 キーリーが知らないなら、後はシャルルしか知らないだろう。聞きに行きたくはない。
「先生の魔法で、どうにかなる?」
「時間さっ」
「「「それは、もういい」」」
「それは冗談としても、心惹かれる研究テーマだ。見つからないとは思うが、探してみよう」
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