上 下
44 / 124
第三章.さよなら大好きだよ

41.閑話、キーリー視点

しおりを挟む
 あの日、あの時、くそ野郎の魔法の所為で、俺の可愛いシャルルはいなくなった。残ったのは、笑わない人形のようなシャルルだ。 
 以前は、こいつのことが好きなんだと思っていた。でも、元に戻って、勘違いだったと気付いた。見た目が同じでも、全然違った。今更気付いても、もう遅い。

 シャルルが逃げ出したから、捕まえた。保護するためだったが、罵られた。俺は、シャルルに尽くしているつもりで、全く感謝されていないことを初めて知った。言われて納得したが、許せなかった。
 俺を罵るのは、構わない。だが、俺のシャルルの身体を奪ったのは、許せなかった。
 俺は、シャルルのおかげで、あいつに出会えた訳だが、あいつはすっげぇ迷惑だったろう。何も関係ないのに巻き込まれて、頑張っていた。頑張らなくていい、と言ったのに。 
 シャルルの勝手を許す訳にはいかない。ジョエルと監視することにした。


 ジョエルが、シャルルが変だと言い出した。あいつが変なのは今に始まったことではないが、シャルルが変なのは気になる。食事を名目に様子を伺うことにした。  
 確かに、シャルルは変だった。いつも無感動に真っ直ぐ前だけを見て歩くヤツだったのに、周囲を見回しながら歩いている。まるで、あいつのようだった。  
 いつか何処かで聞いたような会話が続く。あいつのことを思い出す。イライラする。俺は、あいつを守らないといけないんだ。ツライ。 
「お前、いい加減にしろよ。これ以上、変なことするな!」 
「私が何したって言うの? 変かもしれないけど、悪いことなんてしてないよ」
 あれが悪いことじゃなければ、なんなんだ! 不満があるのは、分かった。だが、何をしてもいいとは言わせねぇ。

「るる!」 
 タケルが来た。いつぶりだ? お前は、シャルルがどっちでもいいのか? 黒けりゃ何でもいいのか。
 だが、こいつの方がシャルルがわかるらしい。
「える、るる、もどった」
「戻った? まさか、また?」
 戻った? 戻った? 何に戻った。
「シャル、うちのイケメン、どう思う?」
「ムカつく」   

 即答だった。そんなことを言う心当たりは、1つしかなかった。
「あいつかもしれない!」 
「ルルー、記憶はどうなってる? わたしたちのことは、覚えてないのよね」
 そうだ。あいつが戻ってきても、もうあいつじゃない。あいつはあんなに頑張っていたのに、全てを捨てた。俺のことを全て消した。なのに。 
「知らん!」
と言われて、めちゃくちゃ嬉しかった。我慢できなかった。すげぇ後悔した。


 抱きついたら、拒否られた。
 そりゃそうだ。俺は、見ず知らずの誰かなんだ。そんなことをして受け入れられる訳がない。だけど。
 あいつが拒絶したのは、俺だけじゃなかった。あいつの笑顔を、俺が奪ってしまった。

 シャルルは、猫だけは受け入れたらしい。ジョエルは、助っ人を呼びに出かけて行った。戻るまで、シャルルを守るのが、俺の役割だ。次は失敗しない。

 シャルルに姿を見せることなく、護衛を果たすのが、目標だ。村の人間に周知するのは、簡単だ。だが、話を聞かない男が1人いる。案の定、接触した。
「やあ、お嬢さん、久しぶりだね。君と添い遂げる障害は、消え去った。さあ、こちらへおいで」
 やむを得ず、シャルルの横を通り過ぎ、バカ男をヘッドロックして引きずり連れる。適当な部屋へ放り込んだ。 
「お前は、バカか! 今、シャルルは人間恐怖症だ、と言っただろう。そんな状態で結婚したがるヤツが、何処にいるんだよ。しばらく出てくんな。俺も隠れてんだから。いいな。シャルルが部屋に戻るまで、この場を動くな。悪化するぞ」 
「また時間さっこ」
「阿呆か! 反省しろ!!」

 シャルルを部屋に戻して、食事を持って行った。  
 食事がとれるなら心配はいらないという気持ちと、外に出たかったと罵るシャルルの顔が浮かぶ。
 魔獣の飯の心配なんかより、自分を大切にしていいのに。やっぱり、シャルルは、あいつなのか。
 俺は、シャルルに何をしてやれるだろう。あいつの笑顔をもう一度見たい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生錬金術師・葉菜花の魔石ごはん~食いしん坊王子様のお気に入り~

豆狸
ファンタジー
異世界に転生した葉菜花には前世の料理を再現するチートなスキルがあった! 食いしん坊の王国ラトニーで俺様王子様と残念聖女様を餌付けしながら、可愛い使い魔ラケル(モフモフわんこ)と一緒に頑張るよ♪ ※基本のんびりスローライフ? で、たまに事件に関わります。 ※本編は葉菜花の一人称、ときどき別視点の三人称です。 ※ひとつの話の中で視点が変わるときは★、同じ視点で場面や時間が変わるときは☆で区切っています。 ※20210114、11話内の神殿からもらったお金がおかしかったので訂正しました。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

処理中です...