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42.最弱の龍
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誕生会の主役そっちのけで、黒曜を抱えるママがブライスとフランクリンにたかられていた。何をやってるんだ、あの阿呆共が。
「人妻に言い寄るのは、お辞め頂けませんか?」
ズカズカ駆け寄りたい気持ちを押し殺し、女の子らしい歩みで近寄った。こんな阿呆のために、計画を変更させられるなんて許せない。
「違うよ、琥珀ちゃん。我々は、君の窮地を救おうと」
「そうだ。我らは、貴女に求婚した」
私の性別もわからない程度の関心しかない阿呆が、何か言っている。
「ママも、はっきり断って下さい。私には、もう婚約者がいるのだと」
エスメラルダがいなかったとしても、この阿呆どもはない。経済的にも、性別的にも、性格的にも、能力的にも有り得ない。検討の余地が、一切ないのだ。実母ではないから遠慮しているにしたって、こいつらはない。
「琥珀ちゃん、そんなこと、誰も許していないわ」
ほお。こんな状況でまで、まだ言うか。母に比べたら芯は通っているのかもしれないが、もう聞く耳を持つ気はない。
「お父様、父さん、パパ、お母様、ママ。誰か1人でも、親の承諾を得た人はいるのですか? そんなものが必要なら、今すぐにでも、許しを得に行ってきてください。子どもができた後に承諾を得れば良いなら、まだ私は承諾がいらないですよね?
私も、今すぐ結婚するとは申しませんよ。自活することは可能ですが、あと10年、可能であれば、あと19年は待つ予定でおります。何が不足なのでしょうか」
お母様たちが結婚を決めた場には、目撃者が多数いたらしい。村で語り草になっているのだから、知りたくはなかったのだが、聞いてしまったことがある。まったく感動的ではなく、なんとなくそういうことになりました的な、締まらない話だった。
すべてバレているのだから、無駄だ。偉そうに、何を言っているんだ。阿呆親たちめ!
「婚約者がいたのか?」
ブライスは、色を失くした。赤子男め、ザマァみろ。
「ええ。親の評判は悪い様ですが、私の最愛のとても美しく可愛らしい人です。認められなければ、家を出て結婚致しますので、許可など必要御座いません」
「そうか、ならば共に結婚しようじゃないか!」
フランクリンが、笑顔で提案してきたが。
それは、私から、エスメラルダを奪うつもりだと言うことだな? 私は、エスメラルダに頼まれても増員を許すつもりはない。女もいらないが、男など話にもならない。フランクリンは、私目線ではただの気持ち悪い男だが、もしかしたら緑小鬼界では色男かもしれない。許容できない。消し炭にするか。全ての精霊の力を持って、この世に存在した証もことごとく消し去ってくれよう。
6龍の名前を挙げ、全ての精霊の名を連ねる。数が多すぎる。早く唱えきってしまいたい。絶対、成功させるためには、省略できない。
「お兄ちゃん、ちょっと待った。なんでいつも端折る詠唱をしてるの?! ママ、そのバカ2人とも、どっかに飛ばして。お兄ちゃん、お兄ちゃん、大丈夫だよ。エスメラルダは、お兄ちゃんのことが大好きだから。そう言ってたから。エスメラルダも、お兄ちゃんだけだから!」
エスメラルダが? それは、本当か? それは、何よりも嬉しい! だが、もう半分くらい詠唱は終わってしまった。今更、やめられない。どうにかして、誤魔化すことはできるだろうか。
「みんな、大好きですよ」
適当すぎるお願いに、何が起きるかヒヤヒヤしたが、カラフルなホタルの光のような物が、大量発生しただけで終わった。
私の周囲にだけ発生して、目が焼けるかと思ったが、視力に影響は出なかった。危なかった。
置き去りにした親たちが、一瞬で集まってきた。
「琥珀! 大丈夫?」
翡翠のおかげで、かろうじて意識は保っているものの、魔力を奪われすぎて、身体に自由がきかない。お母様の手から、逃れることができなかった。無断で抱かれているのが、腹立たしい。母親面しないで欲しい。
「琥珀は、どうしたんだ?」
パパは、お母様から私を奪い取ってくれた。良かった。これで安心して寝れる。
「琥珀まで、龍になっちゃったみたい」
「「「なんでだ!」」」
パパだけで良かったのに、父3人に取り囲まれた。また嫌がらせをされてしまう。痛いのも、気持ち悪いのも嫌だ。どこかへ行ってくれ。または、パパ1人で逃げてくれ!
「私の時もそうだったんだけど、龍たちって、今一つ人望? 精霊望? がないみたいで、可愛い琥珀の方がいいや、ってなったんだと思う」
なんだ、それは。そんな話なら、どこの誰でも神龍になれてしまうじゃないか。世界最強種というわりに、お手軽すぎないか。
「それで、琥珀は、どの龍に成り変わったんだ?」
「継いだんじゃないよ。増えたんだよ。それぞれの龍から、少しずつ精霊を奪い取って。うちの子は、1人も行かなかったみたいだけど」
それは、風の精霊も大地の精霊もまだ名を呼んでなかったからだ。お母様に助力を得る様で、なんか嫌だな、と後回しにしたからだろう。
お母様は、2体の龍から根こそぎ精霊を奪った最強の龍ということになっているが、私は、名を呼んだ精霊全てを引き入れられた訳ではない。造反を考えるほど、龍からの扱いが悪く、使いでのない精霊ばかりなのだろう。数も少ない。最弱の龍なのではないだろうか。緑小鬼キングの方が、良かった。意味がわからないし、地味に格好悪い。
「人妻に言い寄るのは、お辞め頂けませんか?」
ズカズカ駆け寄りたい気持ちを押し殺し、女の子らしい歩みで近寄った。こんな阿呆のために、計画を変更させられるなんて許せない。
「違うよ、琥珀ちゃん。我々は、君の窮地を救おうと」
「そうだ。我らは、貴女に求婚した」
私の性別もわからない程度の関心しかない阿呆が、何か言っている。
「ママも、はっきり断って下さい。私には、もう婚約者がいるのだと」
エスメラルダがいなかったとしても、この阿呆どもはない。経済的にも、性別的にも、性格的にも、能力的にも有り得ない。検討の余地が、一切ないのだ。実母ではないから遠慮しているにしたって、こいつらはない。
「琥珀ちゃん、そんなこと、誰も許していないわ」
ほお。こんな状況でまで、まだ言うか。母に比べたら芯は通っているのかもしれないが、もう聞く耳を持つ気はない。
「お父様、父さん、パパ、お母様、ママ。誰か1人でも、親の承諾を得た人はいるのですか? そんなものが必要なら、今すぐにでも、許しを得に行ってきてください。子どもができた後に承諾を得れば良いなら、まだ私は承諾がいらないですよね?
私も、今すぐ結婚するとは申しませんよ。自活することは可能ですが、あと10年、可能であれば、あと19年は待つ予定でおります。何が不足なのでしょうか」
お母様たちが結婚を決めた場には、目撃者が多数いたらしい。村で語り草になっているのだから、知りたくはなかったのだが、聞いてしまったことがある。まったく感動的ではなく、なんとなくそういうことになりました的な、締まらない話だった。
すべてバレているのだから、無駄だ。偉そうに、何を言っているんだ。阿呆親たちめ!
「婚約者がいたのか?」
ブライスは、色を失くした。赤子男め、ザマァみろ。
「ええ。親の評判は悪い様ですが、私の最愛のとても美しく可愛らしい人です。認められなければ、家を出て結婚致しますので、許可など必要御座いません」
「そうか、ならば共に結婚しようじゃないか!」
フランクリンが、笑顔で提案してきたが。
それは、私から、エスメラルダを奪うつもりだと言うことだな? 私は、エスメラルダに頼まれても増員を許すつもりはない。女もいらないが、男など話にもならない。フランクリンは、私目線ではただの気持ち悪い男だが、もしかしたら緑小鬼界では色男かもしれない。許容できない。消し炭にするか。全ての精霊の力を持って、この世に存在した証もことごとく消し去ってくれよう。
6龍の名前を挙げ、全ての精霊の名を連ねる。数が多すぎる。早く唱えきってしまいたい。絶対、成功させるためには、省略できない。
「お兄ちゃん、ちょっと待った。なんでいつも端折る詠唱をしてるの?! ママ、そのバカ2人とも、どっかに飛ばして。お兄ちゃん、お兄ちゃん、大丈夫だよ。エスメラルダは、お兄ちゃんのことが大好きだから。そう言ってたから。エスメラルダも、お兄ちゃんだけだから!」
エスメラルダが? それは、本当か? それは、何よりも嬉しい! だが、もう半分くらい詠唱は終わってしまった。今更、やめられない。どうにかして、誤魔化すことはできるだろうか。
「みんな、大好きですよ」
適当すぎるお願いに、何が起きるかヒヤヒヤしたが、カラフルなホタルの光のような物が、大量発生しただけで終わった。
私の周囲にだけ発生して、目が焼けるかと思ったが、視力に影響は出なかった。危なかった。
置き去りにした親たちが、一瞬で集まってきた。
「琥珀! 大丈夫?」
翡翠のおかげで、かろうじて意識は保っているものの、魔力を奪われすぎて、身体に自由がきかない。お母様の手から、逃れることができなかった。無断で抱かれているのが、腹立たしい。母親面しないで欲しい。
「琥珀は、どうしたんだ?」
パパは、お母様から私を奪い取ってくれた。良かった。これで安心して寝れる。
「琥珀まで、龍になっちゃったみたい」
「「「なんでだ!」」」
パパだけで良かったのに、父3人に取り囲まれた。また嫌がらせをされてしまう。痛いのも、気持ち悪いのも嫌だ。どこかへ行ってくれ。または、パパ1人で逃げてくれ!
「私の時もそうだったんだけど、龍たちって、今一つ人望? 精霊望? がないみたいで、可愛い琥珀の方がいいや、ってなったんだと思う」
なんだ、それは。そんな話なら、どこの誰でも神龍になれてしまうじゃないか。世界最強種というわりに、お手軽すぎないか。
「それで、琥珀は、どの龍に成り変わったんだ?」
「継いだんじゃないよ。増えたんだよ。それぞれの龍から、少しずつ精霊を奪い取って。うちの子は、1人も行かなかったみたいだけど」
それは、風の精霊も大地の精霊もまだ名を呼んでなかったからだ。お母様に助力を得る様で、なんか嫌だな、と後回しにしたからだろう。
お母様は、2体の龍から根こそぎ精霊を奪った最強の龍ということになっているが、私は、名を呼んだ精霊全てを引き入れられた訳ではない。造反を考えるほど、龍からの扱いが悪く、使いでのない精霊ばかりなのだろう。数も少ない。最弱の龍なのではないだろうか。緑小鬼キングの方が、良かった。意味がわからないし、地味に格好悪い。
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