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33.緑小鬼ごっこ
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折角、ダンジョンと緑小鬼を沢山手に入れたので、緑小鬼キングとして手入れをすることにした。
家に転がっていた練習用の竹刀や弓を渡して、適性や嗜好を調べ、それに見合う武器を作成し、配布していく。魔力量が大してある訳でもないので、一度に揃えられないのは歯がゆいが、毎日こつこつ作り続けた。
緑小鬼の戦闘力は大したことはないのだが、武器は無駄に豪華な宝剣で、防具は、アルミニウムで制作した。
はじめはマグネシウムで作っていた。軽い金属と言ったら、マグネシウムだよね、と思い付きのまま作った。だけど、ごはんを温めようと焚き火をしたら、引火して大惨事になった。慌てて消火してアルミで作り直した。鉄だと重そうだったし、革は入手が面倒だったからだ。アルミって、そんなに強いイメージがないのだが、もっと格好いいのはないだろうか。デザインに凝れば、改善されるだろうか。
装備を揃えてやりたかったことは、自分の鍛錬である。パパに稽古は見てもらっているが、実力が人外すぎて、あまり稽古相手としては適当ではない。稽古をすればするだけ落ち込むばかりなのだ。だから、私の剣術稽古の相手など、緑小鬼で充分だと思ったのである。
流石に、スノットリングと一対一で戦おうとは思わないが、沢山いるので、一対多の稽古も、弓兵や魔法使いを混ぜての稽古もできるのである。物足りなくなったら、ボギーやゴブリンを足したり、入れ替えたりしてもいい。魔法なしで、一番大きなウルクハイに一対多で勝てるようになるのが、当面の目標だ。
ウルクハイは、熊みたいに大きい。本当にこれが小鬼なのか疑問なのだが、ここにいるということは、お父様の分類上は、緑小鬼なのだろう。
気をつけなければならないのは、うっかり殺してしまわないことと、あんまりやられてばかりいると下剋上を企むヤツが出てくることだ。
死にさえしなければ、薬か魔法でいくらでも復活させられる。下剋上志望者は、見つけ次第、魔法でしばけばおとなしくなるのだが、あんまり構うと稽古が中断されるのが面倒だった。
この稽古のいいところは、成果がわかりやすいところだ。一度に相手にする人数が増えたり、強い個体に取り替えることで、上達した実感を得やすい。稽古をするのが楽しい。
だが、しかし、魔法なしで緑小鬼を圧倒するのは、難しい。死なせていいのであれば、簡単だ。急所を一突きしたら終了だ。だが、死なせたくないから、それは禁じ手なのだ。防具の隙間を狙えば、防具が壊れて補修が面倒だし、そんなことを気にして戦えば、防具の上を剣で叩くか、いっそ竹刀で急所を狙うかしかない。竹刀であれば、私の腕力程度で落ちる個体はいない。
私は、単純な体格だけなら、スノットリングに劣る。力で圧倒できる相手もいない。持久力でも勝てそうにない。どうやって倒せばいいのか、わからない。殴ったくらいじゃ、起き上がって戦線復帰するからだ。
攻撃を避ける能力だけ上がっている気がする。四方から狙われても、後ろを見ずに避けれる回数は増えた。弓攻撃も、ほぼ勘だけで避けたり、剣ではじいたりができるようになってきた。だが、避けているだけでは、倒せない。疲労だけが溜まって、剣で刺されて、下剋上される。めんどくさい。
ならず者を成敗した時のように、骨でも折ればいいのだろうか。魔法の力を借りずに、折れるだろうか。骨が折れれば痛い。私の鍛錬のために、部下の骨を折るのは、可哀想じゃないか?
私の稽古には、緑小鬼全員は必要ない。用のない個体は、それぞれ勝手に稽古してもらうか、きのこ栽培をしてもらうことにした。売る用でも緑小鬼の食い扶持を増やすのでもなく、自分で食べる用である。家にあった異世界きのこを持ち出して、緑小鬼に栽培を命じてみたら、うまくいってしまった。
自分で育ててまで食べたいとは思わないが、育ててくれる人がいるなら、悪くない。他にも何かできることがないか検討中だが、お父様のお金で養っているうちは、どうでもいいかな、とも思う。
今日は、私の血が流れすぎたので、稽古を終了した。きのこを焼いてもらって、みんなでおやつを食べながら、ダンジョン会議をするのである。
10階の最奥は、緑小鬼キングか、不在時はスフェーンの部屋になるが、その道中の小部屋に配置する人材をどうしたら楽しいダンジョンになるかという検討をする会議だ。
折角のダンジョンだ。緑小鬼の住まいとしての利用だけじゃ、もったいない。自分で侵入して遊ぶのである。
間取りを全て把握した私が楽しむ要素は、もう戦闘くらいしか考えられない。お父様が配置したあんな適当なものではなく、もっと機能的に、嫌らしく、難しい組み合わせを考えるのだ。
緑小鬼キングが私で、攻略者も私なのが、とても悩ましい。会議とは言っているものの、部下たちが何を言ってるのか、言葉がまったくわからないのも、悩ましい。
みんなは私の言葉がわかるようになったようなのに、私は変わらず「ぎゃぎゃぎゃ」としか聞こえない。言語能力が下っ端な上に、みんなだけ意見交換をしていて、疎外感もモリモリだ。地図の上に駒を置いているので、話し合いの結果はわかるものの、そうなった経緯はわからないので、余程変だな、と思った箇所に強権を発動して変更させるしか能がない。折角話し合って決めた結果なのに、ワガママを発揮するお山の大将だと思われていることだろう。
キングとして、ポンコツすぎる気がした。やはり緑小鬼語の習得が必要だと思われる。だが、彼らは細かい意思疎通が取れているようなのに、私の耳には「ギャ」「ギュ」「ギョ」の3種類しか聞き取れないのだ。この組み合わせだけで、円滑なコミュニケーションが取れるものなのだろうか。ネイティブでないと聞き取れない発音が隠れているような気がしてならない。それとも、耳が聞き取れる周波数の違いだろうか。そうなのだとしたら、勉強だけではなく、耳の性能をあげないことには、どうにもならない。魔改造するか、という考えが過ぎった。
いけない。これは、スライムの発想だ。危険思想だ。他人はダメだが、自分なら構わない気がしている。自分を律する何かが必要だ。あんな阿呆の息子には、なってはいけない。
家に転がっていた練習用の竹刀や弓を渡して、適性や嗜好を調べ、それに見合う武器を作成し、配布していく。魔力量が大してある訳でもないので、一度に揃えられないのは歯がゆいが、毎日こつこつ作り続けた。
緑小鬼の戦闘力は大したことはないのだが、武器は無駄に豪華な宝剣で、防具は、アルミニウムで制作した。
はじめはマグネシウムで作っていた。軽い金属と言ったら、マグネシウムだよね、と思い付きのまま作った。だけど、ごはんを温めようと焚き火をしたら、引火して大惨事になった。慌てて消火してアルミで作り直した。鉄だと重そうだったし、革は入手が面倒だったからだ。アルミって、そんなに強いイメージがないのだが、もっと格好いいのはないだろうか。デザインに凝れば、改善されるだろうか。
装備を揃えてやりたかったことは、自分の鍛錬である。パパに稽古は見てもらっているが、実力が人外すぎて、あまり稽古相手としては適当ではない。稽古をすればするだけ落ち込むばかりなのだ。だから、私の剣術稽古の相手など、緑小鬼で充分だと思ったのである。
流石に、スノットリングと一対一で戦おうとは思わないが、沢山いるので、一対多の稽古も、弓兵や魔法使いを混ぜての稽古もできるのである。物足りなくなったら、ボギーやゴブリンを足したり、入れ替えたりしてもいい。魔法なしで、一番大きなウルクハイに一対多で勝てるようになるのが、当面の目標だ。
ウルクハイは、熊みたいに大きい。本当にこれが小鬼なのか疑問なのだが、ここにいるということは、お父様の分類上は、緑小鬼なのだろう。
気をつけなければならないのは、うっかり殺してしまわないことと、あんまりやられてばかりいると下剋上を企むヤツが出てくることだ。
死にさえしなければ、薬か魔法でいくらでも復活させられる。下剋上志望者は、見つけ次第、魔法でしばけばおとなしくなるのだが、あんまり構うと稽古が中断されるのが面倒だった。
この稽古のいいところは、成果がわかりやすいところだ。一度に相手にする人数が増えたり、強い個体に取り替えることで、上達した実感を得やすい。稽古をするのが楽しい。
だが、しかし、魔法なしで緑小鬼を圧倒するのは、難しい。死なせていいのであれば、簡単だ。急所を一突きしたら終了だ。だが、死なせたくないから、それは禁じ手なのだ。防具の隙間を狙えば、防具が壊れて補修が面倒だし、そんなことを気にして戦えば、防具の上を剣で叩くか、いっそ竹刀で急所を狙うかしかない。竹刀であれば、私の腕力程度で落ちる個体はいない。
私は、単純な体格だけなら、スノットリングに劣る。力で圧倒できる相手もいない。持久力でも勝てそうにない。どうやって倒せばいいのか、わからない。殴ったくらいじゃ、起き上がって戦線復帰するからだ。
攻撃を避ける能力だけ上がっている気がする。四方から狙われても、後ろを見ずに避けれる回数は増えた。弓攻撃も、ほぼ勘だけで避けたり、剣ではじいたりができるようになってきた。だが、避けているだけでは、倒せない。疲労だけが溜まって、剣で刺されて、下剋上される。めんどくさい。
ならず者を成敗した時のように、骨でも折ればいいのだろうか。魔法の力を借りずに、折れるだろうか。骨が折れれば痛い。私の鍛錬のために、部下の骨を折るのは、可哀想じゃないか?
私の稽古には、緑小鬼全員は必要ない。用のない個体は、それぞれ勝手に稽古してもらうか、きのこ栽培をしてもらうことにした。売る用でも緑小鬼の食い扶持を増やすのでもなく、自分で食べる用である。家にあった異世界きのこを持ち出して、緑小鬼に栽培を命じてみたら、うまくいってしまった。
自分で育ててまで食べたいとは思わないが、育ててくれる人がいるなら、悪くない。他にも何かできることがないか検討中だが、お父様のお金で養っているうちは、どうでもいいかな、とも思う。
今日は、私の血が流れすぎたので、稽古を終了した。きのこを焼いてもらって、みんなでおやつを食べながら、ダンジョン会議をするのである。
10階の最奥は、緑小鬼キングか、不在時はスフェーンの部屋になるが、その道中の小部屋に配置する人材をどうしたら楽しいダンジョンになるかという検討をする会議だ。
折角のダンジョンだ。緑小鬼の住まいとしての利用だけじゃ、もったいない。自分で侵入して遊ぶのである。
間取りを全て把握した私が楽しむ要素は、もう戦闘くらいしか考えられない。お父様が配置したあんな適当なものではなく、もっと機能的に、嫌らしく、難しい組み合わせを考えるのだ。
緑小鬼キングが私で、攻略者も私なのが、とても悩ましい。会議とは言っているものの、部下たちが何を言ってるのか、言葉がまったくわからないのも、悩ましい。
みんなは私の言葉がわかるようになったようなのに、私は変わらず「ぎゃぎゃぎゃ」としか聞こえない。言語能力が下っ端な上に、みんなだけ意見交換をしていて、疎外感もモリモリだ。地図の上に駒を置いているので、話し合いの結果はわかるものの、そうなった経緯はわからないので、余程変だな、と思った箇所に強権を発動して変更させるしか能がない。折角話し合って決めた結果なのに、ワガママを発揮するお山の大将だと思われていることだろう。
キングとして、ポンコツすぎる気がした。やはり緑小鬼語の習得が必要だと思われる。だが、彼らは細かい意思疎通が取れているようなのに、私の耳には「ギャ」「ギュ」「ギョ」の3種類しか聞き取れないのだ。この組み合わせだけで、円滑なコミュニケーションが取れるものなのだろうか。ネイティブでないと聞き取れない発音が隠れているような気がしてならない。それとも、耳が聞き取れる周波数の違いだろうか。そうなのだとしたら、勉強だけではなく、耳の性能をあげないことには、どうにもならない。魔改造するか、という考えが過ぎった。
いけない。これは、スライムの発想だ。危険思想だ。他人はダメだが、自分なら構わない気がしている。自分を律する何かが必要だ。あんな阿呆の息子には、なってはいけない。
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