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第八章 偽りの神人

近づく一手(2)

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 アザゼルと四音は異空間の創造に着手。拉致られ奴隷となった人々を助け、一時的にそちらへ避難させるためだ。神山町の全体を模すため時間が掛かる。二人はしばらく、そちらで手一杯になるため指揮は最年長の紅に任せることに。

 紅はまず、残る悪神の子である次男のことを直矢に訊く。



「さて、直矢くん。次男のことを教えてくれるかい?」

「うん、いいよ。えっと、次男は黒曜の機体に腕が四本で頭部はヘルメットのようなフォルム、戦闘データがインストールされてて、元となったのはお父さんなんだ」



 俺が、元になった悪神の子……。二度、戦った時に収集したのだろうな。ということは、次男の戦い方は接近タイプの肉弾戦か。



「なるほど。他には何かあるかい?」

「他には……、顔には絵文字のように浮かび上がり、怒りや悲しみ、喜びを分かりやすく表示するかな。あと、僕から見て感情表現が大袈裟でうるさい。肉弾戦を得意としてるよ。自らの手で相手を嬲り、痛みつけ、泣き喚く様を見て楽しみ、快感を得るクソ野郎」



 と、直矢は話す。

 はっ。さすが、悪神の子だ。確かに、そんな奴はクソ野郎だな。嬲り、痛みつけ、泣き喚く様を見て楽しみ、快感を得るなんて。俺とは、絶対に合わない。

 紅は、直矢の話を聞き腕を組み考え込む。



「あの、ちょっといい?」

「ぼくらから、提案があるんだけど」



 奏と遥の二人が同時に挙手して名乗り出る。



「その次男の相手、わたしと遥に任せてほしいの」

「うん。ぼくたちで倒す」



 ほう。二人で次男の相手をしたいと。何か、理由があるみたいだが。



「それは、どうしてだ? 俺は別に、奏と遥に任せてもいいとは思うが何か理由でもあるのか?」



 俺の問いに、奏と遥は一度だけ頷き答える。



「話を聞く限り、そいつは今までに何人も手に掛けてきたと思うの。わたしと遥は、力があっても自分たちの身を護ることで手一杯で誰も助けてこれなかったから……」

「だから、今度こそは人を傷つける奴をぼくたちの手で倒したい」

「ここには、夏目お兄さんもみんなもいてくれる。わたしたち二人だけの時とは違う。直矢くんを護るためにも、人々を助けるためにもわたしたちの力で何かしたいの」

「大丈夫、心配しないで。ぼくたちは、〝二人で一つ〟だから平気」



 あまり喋らない遥がここまで口にして、奏も倒すと意気込む姿勢を見せるとは。それほど二人の中で、力がありながら助けられなかったことが悔いのように残ってるのか。

 二人がそこまで言うのなら、意思を尊重して任せよう。



「分かった。次男の相手は、二人に任せる。ただし、負けることも死ぬことも許さん。必ず生きて勝て。紅、いいか?」

「夏目くんがそう言うなら、オレは反対しないよ」

「……っ! ありがとう、夏目お兄さん!」

「うん。絶対に生きて勝つ」

「じゃあ、奏ちゃんと遥ちゃんが次男の相手をしている間にオレたちは救出作戦に出る」



 紅の作戦はこうだ。

 塔の建設内部の機械人形は、破壊力のある俺を筆頭に相棒たちと直矢と美哉が続くことに。紅と東雲先輩は、労働奴隷にされている人を救出。神前先輩と燐は、機械人形を産み続けている女性を救出。立花先輩と桜は、救出した人々の治療と結果を張り守護する役目。



「夏目くんには、塔の建設内部で大いに暴れてもらう。奏ちゃんと遥ちゃんには、目立つように動いて次男の目を引きつけ戦闘へ」

「ああ、分かった。フェンリルも、そろそろ大暴れしたいだろうからな」

「うむ。久しく、暴れておらぬからな。我輩の牙と爪で、一網打尽にしてくれよう」

「分かったわ! 遥、やってやるわよ!」

「そうだね、奏。やろう」

「よし。それじゃあ、行動開始」



 大まかな作戦が決まり紅の言葉に各自、立ち上がり行動を起こす。

 紅と東雲先輩は塔に関する情報収集に、神前先輩と立花先輩は使えそうな医療器具の調達、桜と燐はアザゼルたちが街を創造されるまでの避難場所の確保へ。

 俺たち、奏と遥の残る面々も避難場所に大勢が集まることを見越して食料の調達へと動き出す。
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