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第二部 第七章 終わりの始まり

世界の崩壊後(4)

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 ほんと、今日はついてないわ……。この半年間、住んでいた街から別の街へ遥と一緒に逃げるように訪れて、また別の街へ行くことを繰り返してきた。

 一箇所に留まることはできない理由が、わたしと遥にはあったから。

 極力、人とは関わらないよう、厄介なことも面倒なことも避けてきたつもり。巻き込まれたくはなかったの。



 なのに、今日はどうしてこう立て続けに面倒ごとが起こるのよ……!

 物資が底を尽きそう、強姦の場を見てしまう、当事者たちに追われ、挙句の果て機械人形に見つかって狙われる羽目になるなんて!

 本当に最悪だわ!

 なんて、思っていると二体の機械人形は体をこちらに向けた。

 一体は腕が異様に長く、もう一体は背中から触手が四本伸びてウネウネ動き気持ち悪い!



「う、嘘だろ!?」

「に、逃げろ!」

「いやぁっ!」

「ま、待ってよ!」



 男女の四人は叫び逃げ惑う。声に反応し触手人形が彼らを狙い、腕の長い機械はわたしと遥を狙う。



「奏」

「やるしかないわね!」



 二人で雑貨の棚を持ち上げ投げ飛ばす。長い腕を振り乱し棚を破壊する人形の背後へ、素早く回り込み左右から同時に回し蹴りを入れる。



「……いっ、たくはくないけど!」



 脚に衝撃が伝わりビリビリと痺れるけどすぐに収まった。人形も数秒は動けなくなるけど、すぐ体勢を整え再度襲う。



「ああもう! 面倒くさいし、鬱陶しいのよ!」



 怒鳴るわたしに向かって長い腕を伸ばし捕まえようとするけれど、軽やかなステップで手を躱す。

 遥は、懐に飛び込みその腰を掴むと大振りに体を投げた。壁に激突し、大の字になった胴体へ飛び蹴りを見舞う。



「さすが遥だわ! 強いし、いつだってわたしを護ってくれるし!」



 拍手しながら遥を褒めるわたしに、表情は変わらず無表情のまま呟く。



「奏、そういうことはいいから。まだ終わってない」



 機械人形はまだ動き続ける。火花を散らしながらも、長い腕を垂らし顔はわたしたちを捉えたまま。ギギッ、と関節から音を鳴らし垂らした腕が伸びた。

 捕まえようと、わたしたちの目の前で手の平を広げる。

 わたしと遥がそんな手に捕まるわけないでしょ! あと触れられるのはごめんよ!

 機械人形の両手首を掴み取る。



「悪いけど、いつまでも相手をしてる暇はないの。だから、壊すわ!」



 掴む手に力を込め、握力だけで粉々に破壊し、懐へ潜り込むと頭を掴みもう一度壁へ叩きつけてやる!

 それを何度も繰り返し頭を壊せば、次にやること左手を手刀の形にして機械人形の腹部を貫き引き抜く。まだ終わりじゃないわよ!

 指先を曲げ、また減り込ませて機械の心臓を抉る。握り潰し、完全に行動不能にしてから四肢もぎ取り、バラバラにして最後は胴体を脚で踏みつけ修復不可能なまでに破壊!



「ふーっ! 終わったわ!」

「ストレスでも溜まってた?」



 わたしの破壊する様を見守っていた遥がそう訊く。



「そうかも。でもこれで、少しはスッキリしたわ」

「そっか。それは良かったけど、あと一体いるよ?」

「そうね」



 残る一体はどこにいるのかと辺りを見渡すその視線の先、触手の人形に捕まった四人の姿を見つけた。

 そう、見つけたのはいいんだけど……。



「あれに混ざるのは嫌なんだけど……」

「ぼくも、嫌だな……」



 触手が、抵抗する四人の全身に絡みつき縛り上げネバネバとした液体を垂らし、くちゅくちゅとじゅるじゅると水音が聞こえる。

 そんな状況ならば、エロいことを想像するでしょうけどそうじゃないの……。

 四人揃って、皮膚も肉も骨すら溶かし死に絶えているのよ……。血溜まりすら床に作ることもなく、四人は触手の機械人形に喰われてしまった。

 あの触手は酸ね。人間を容易く溶かし、絶命させられるほど強力なもの。血が残らないのも吸われ続けているから。

 四人を養分にして喰い終わると、やはり次に狙われるのはわたしと遥なわけで……。



「こうなるわよね……」

「当然と言えば、当然かな」



 二度目の戦闘へ。といっても、わたしたちにこれをまともに相手をする気はなく。



「遥」

「いいよ、奏」



 体を密着させ抱き合うと、額をコツと合わせた。二人の影が重なり合い揺らめき、黒い龍の姿へ輪になって∞の形を作り互いの尻尾を噛む。



 触手の機械人形が走り、わたしたちに近寄るけど距離にして二メートルの所で唐突に体が浮き天井に激突。そのまま床へ落下し、その真下には黒い龍の二匹が口を開け噛みつき、体をバラバラに解体して喰らうのではなく破壊するために噛み砕いていく。

 その結果、わたしたちはだた抱き合うだけど何もせず機械人形を片づける。

 体を離すと黒い龍は音もなく姿を消す。



「はぁー、やっと終わったわ」

「うん。終わった」

「さて、次の街へ行くわよ。遥!」

「ん」



 こうして機械人形がいなくなり屋内から外へ出て行く。

 手を繋ぎ、次なる場所へ向かう。同じ場所に長く留まることはない。

 ある程度、その場に留まり食料の調達と情報収集をしてからまた次なる場所へ。その理由は、〝神殺し〟を見つけるため。



 この世界を救うのも、悪神に対抗できるのも神殺しだけ。

 だから、わたしたちは街を転々としこの世にいるの情報を集め捜している。彼らに協力して、わたしたちが悪神に殺されず生き抜くために。
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