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第五章 真実に近づく者たち

新担任の正体は(2)

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 昼休み、燐と桜は隣のクラスの夏目を捜しに教室を覗くが姿はなく先に部室へ向かったのだろうと。二人も、部室へ向かい誰よりも先に来ている美哉が二人を出迎えてくれた。



「いらっしゃい。あら? 夏目は一緒ではないのですか?」



 笑顔で迎え入れる美哉だったが、夏目の姿が見えないことに首を傾げる。



「あれ? てっきり先に部室へ行ってるものかと」

「教室に夏目くんの姿がなかったのでもう来ているものだと」



 燐も桜も、普段の行動から部室に来ているものだと思っていた。美哉は、二人と共に来るものだと。

 スマホを取り出し、夏目へメッセージを送る。



 ――『夏目、今どこにいますか?』



 いつものならすぐに既読がつくが、今日に限ってつかない。スタンプを送っても返信はない。

 美哉の反応から、夏目からの連絡がないことを察し顔を見合わせる燐と桜。

 そこへ、部室の扉が開き中へ入室してきたの真冬と陽菜の二人だ。



「真冬、陽菜、いらっしゃい」



 二人にも笑顔で迎え入れる美哉。ただし、視線はスマホの画面へ向いているが。そんな彼女に、真冬は楽しげな笑みを作り訊く。



「今日、新しい教師が赴任したことは知ってる?」

「ええ、知ってますよ。確か、女性の新米教師でしたよね?」



 頷きながら答える。未だに、何も反応が返ってこない画面を見ながら。



「そう! その教師がすっごい美人なのよ!」



 と、少し興奮気味に実際に見た感想を述べる真冬。



「巨乳で、腰もだけど手足が長く細くて高身長! おまけにエロい雰囲気を纏って。これじゃあ、男共はもう釘つけでしょうよ。藍色の髪で長い三つ編みを一本に束ね、見た目はおっとりした感じだったわ。でも、胸なんかははち切れんばかりに主張して揺れまくるし!」



 などと、笑いながら言う真冬の感想が男子と変わらない目線だと、部室にいる美哉たちが口には出さないが同じことを思う。



「……それを私に伝えてに来たのですか?」



 どうでもいい、と言いたげに返す美哉。



「え? だって、逢真がその新米教師に鼻の下を伸ばし、美哉よりそっちに気が向く。そんな展開が起きれば面白いからに決まってるでしょ」



 なんて、美哉に煽るように目を細め笑顔で言い放つ。

 その発言に、美哉も顔は笑ってはいるが目は本気で怒りへと変わっていく。



「うふふふふっ。真冬ったら、全然これっぽっちも面白くないことを言いますね。そんな展開が起きることは、天地がひっくり返ってもありえないというのに」

「あははっ! どうかしらね~? 逢真だって男だし、そういうエロしかない女に落ちるかもよ?」



 ピキッ、と青筋を立てた美哉が怒りの感情を露わにする。



「真冬! そんなことはありませんっ! 夏目は、”私に”にぞっこんなんです! 相思相愛なんですっ!」



 部長椅子から立ち上がり、身を乗り出し頬を膨らませ怒る姿は、子供っぽくそんな美哉を知らない燐と桜は可愛い一面だと呑気に思う。



「ぷっ、あははははははっ! 美哉が可愛いわ!」

「もうっ! 真冬!」



 真冬は腹を抱え大笑いし、そのそばに寄った美哉はポカポカと叩く。

 そして、その光景を黙って見守っていた陽菜が、美哉へ新米教師の情報を与える。



「でも、その新米教師、瑠々川四音って、言うんだけど、逢真くんの、クラス担任だよ」

「えっ……?」



 その情報に、美哉は腕を上げた状態で固まり表情が怒りから不安と涙目に変わっていく。机の上に置いたスマホを手に取り、慌てて電話をするが夏目に繋がらない。

 これには、美哉は居ても立っても居られず部室から飛び出す。



「先輩!?」

「美哉先輩!?」



 美哉のあとを燐と桜も慌てて追いかけ、真冬と陽菜もついて行く。

 不安やらで頭がいっぱいの美哉の背後から、陽菜が余計に不安を募らせる発言が飛ぶ。



「そう言えば、逢真くんを、資料室に行く姿と、一緒に瑠々川先生がいたの、ヒナ見たよ」

「なっ!? そ、そういうことはもっと早くに言ってください!」



 廊下を歩く速度が、走る速度に変わる美哉。

 風紀委員長の真冬は本来、それを注意する立場のはずが美哉の必死な様子が面白く、この先に起こる展開が楽しみすぎて「あははっ!」と声を出してずっと笑っていた。



 美哉を筆頭に資料室へ向かう一行。
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