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第四章 神山学園のレヴィアタン
レヴィアタンと陽だまり(6)
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大鎌を構えた真冬は、スルトへ向かって突貫。
スルトも、そんな真冬に対して脚を振り上げグラウンドの地面を割る。
轟音を響かせ、突っ込む真冬の足止めを狙ったがレヴィアタンの援護で意味をなさない。白い胴体を伸ばし、脇の下へ滑り込ませ体を持ち上げ上空へ。
スルトの真下に捉え、真冬を落とすレヴィアタン。大鎌を大振りに横へ、肉体を真っ二つに狙う。
「はあっ!」
真冬の狙い通りに大鎌の刀身は胴体へ、しかしスルトは斬られまいと筋力を膨張させ硬化の影響で阻まれ刃が通らない。
「ちっ! 面倒ね!」
舌打ちをし、何度も斬り込みを繰り返し振るうがやはり水の大鎌の刃は通らない。そこへ、レヴィアタンも参戦し追加攻撃を入れた。
頭上から滝の如く大量の水が、スルトの纏う炎を鎮火させようと浴びさあせたのだ。真冬も、その水を頭から被る格好となるが気にせずタイミングを見計らう。
「ウブッ、ンン、グッ……」
唐突の水量に、スルトの炎がようやく鎮火。それを待っていた真冬、手にする大鎌の柄を握りしめ体を捻り遠心力をつけ刀身を腹部に目掛け振る。
鎌の切っ先は、スルトの脇腹へ斬り込みを入れ腹部に刀身が届き肉を深く抉った。
「ウウッグゥッ!」
血飛沫が互いの間から吹き出し、真冬の視界を赤く染め上げる。膝をつくスルトへ、首を狙いもう一撃を振るうが炎を纏わせた手の平で防ぐ。
「……っ!?」
水を掴むことなど不可能なはずだが、スルトの神通力は健在で触れただけで消失させる。口からもれ出す火に気づいた真冬は、柄から手を放し後方へ飛び退く。
「――っ!」
スルトは、大口を開け火を吹く。それはまるでドラゴンが炎を吐き出す光景、火力は強く距離を取った真冬を飲み込むほど。
腕を交差させ顔を庇う体勢になるが、衣服を溶かし皮膚を焼く。
数秒の出来事に、見守っていた陽菜が泣きそうな声で叫ぶ。
「ま、真冬ちゃん……!」
火の本流から飛び出した真冬の両腕は重度の火傷を負う。腕全体の皮膚は爛れ、肉を溶かし骨が見える箇所もある。
「つっ……! ふーっ、ふーっ、んぐっ!」
真冬は歯を食いしばり、激痛に耐えながらも肩から腕が垂れ下がり動かせない。息も荒く、よく意識を保っていられるなと自分でも不思議なほど。
陽菜とレヴィアタンがそばへ駆け寄る。
「ま、真冬ちゃん、待ってて、すぐ治すから!」
両腕に淡い緑色の光が、傷口を包み込み癒やす。
レヴィアタンは、スルトを睨みつけ牙を見せ威嚇。
治癒の巫女の力のお陰で傷は癒え元通りに、大鎌は真冬の手から放れたと同時に物体のない液体へと変わり、割れた地面へ流れ染み込む。
スルトの方も、傷を神通力で癒やし塞ぐと立ち上がった。
「ありがと、ヒナ」
「ううん。これくらいしか、できないから」
「それでもよ。危ないから、下がってて」
「うん」
真冬は、一呼吸置いてレヴィアタンを見つめ目だけで伝える。
意図を読み取ったレヴィアタンは真冬へ、大量の水を全身に被せびしょ濡れにする。
武器を持たず、最初と同じように弾丸の如く突っ込む真冬。
スルトの元へ、一瞬で距離を詰め回し蹴りを見舞う。腕で防がれても動じず、連続の殴打へ切り替えてもそれさえ手の平で防がれた。
今度は、地面に両手をつき逆立ちからの連続の蹴り技を繰り出す。
しかしだ、どの攻撃も威力が弱い上にスルトの腕や手で防がれダメージが入らない。
「弱イ。弱スギル。力ヲ、使イ果タシカ。小娘?」
遂には、足首を掴まれ持ち上げられる真冬の体。
至近距離で、火を吹こうとするスルト。その攻撃を待っていた真冬は、ニヤリと笑う。
「この瞬間を待ってたのよ!」
そう叫び、自らスルトの顔へ抱きつく。逆さ吊りのまま腕を頭に回し力を込め、離れないよう固定する。
「無駄ナ、足掻キヲ」
スルトは構わず、大口を開けて火を吹く。
ゼロ距離からの攻撃を受けた真冬の体は焼かれ、絶え間ない激痛が襲い燃え上がる。
――はずだった。
「ナニッ!?」
燃え上がるどころか吹く火を消し、体が水の球体へと変わっていくではないか。
スルトの頭から首元まで水の球体が包み込み、鼻や耳から口へと水が流れ込む。
「ングッ、ゴボボッ、ウウッ……!」
球体を引き剥がそうともがき、手で掴もうとするが何も掴めない。呼吸が苦しく、目からも水が流し込まれ上手く炎も神通力も扱えないスルト。
真冬本体は、陽菜のそばにいた。その場所から、水を操作し球体の水をスルトの穴という穴に流し込み続ける。
「内側からの攻撃には、耐えられないでしょ!」
真冬の作戦はこうだ。
まず、レヴィアタンの水で分身を生み出す。そのために全身、水を被り肉体を形成。
そして、スルトへ向け分身を放ちわざと捕まえさせる。次に、呼吸器官の顔全体を覆うためにへばりつかせ、球体の形へ変えるだけ。
「あとは、大口を開けたその口と穴という穴へ水を流し込み続けるだけ。どう? 苦しいでしょ?」
必ず殺すための行動を起こすと確信し、口を開ける瞬間を待っていたのだ。
真冬の予想通りとなり、スルトは息もできずもがき苦しむ。
火を吹こうにも空気を吸い込めない今の状況では不可能。球体を壊そうとするも、手はすり抜け為す術なく封じられる。
「さて、レヴィアタン。仕留めるわよ」
その言葉に頷き、大鎌を創り出しそれを受け取った真冬とレヴィアタンが駆けた。
スルトの背後に回った真冬は腰から腹部を深々と貫き、レヴィアタンは正面に回り尻尾を器用に槍のように真っ直ぐ心臓を狙い貫き引き抜く。
「――――ッ!?」
正面と背後からの同時攻撃を受け声にならない声を上げ、完全に肉体の行動が停止するスルト。
その場に倒れ込み、大鎌の刀身が抜けとめどなく血が流れていく。その様子を見ていた真冬とレヴィアタンは、お互いに手と尻尾でハイタッチ。
「さあ、私の方は終わったわよ」
そう呟き、視線を神殺し同士の対決へと向けた。
スルトも、そんな真冬に対して脚を振り上げグラウンドの地面を割る。
轟音を響かせ、突っ込む真冬の足止めを狙ったがレヴィアタンの援護で意味をなさない。白い胴体を伸ばし、脇の下へ滑り込ませ体を持ち上げ上空へ。
スルトの真下に捉え、真冬を落とすレヴィアタン。大鎌を大振りに横へ、肉体を真っ二つに狙う。
「はあっ!」
真冬の狙い通りに大鎌の刀身は胴体へ、しかしスルトは斬られまいと筋力を膨張させ硬化の影響で阻まれ刃が通らない。
「ちっ! 面倒ね!」
舌打ちをし、何度も斬り込みを繰り返し振るうがやはり水の大鎌の刃は通らない。そこへ、レヴィアタンも参戦し追加攻撃を入れた。
頭上から滝の如く大量の水が、スルトの纏う炎を鎮火させようと浴びさあせたのだ。真冬も、その水を頭から被る格好となるが気にせずタイミングを見計らう。
「ウブッ、ンン、グッ……」
唐突の水量に、スルトの炎がようやく鎮火。それを待っていた真冬、手にする大鎌の柄を握りしめ体を捻り遠心力をつけ刀身を腹部に目掛け振る。
鎌の切っ先は、スルトの脇腹へ斬り込みを入れ腹部に刀身が届き肉を深く抉った。
「ウウッグゥッ!」
血飛沫が互いの間から吹き出し、真冬の視界を赤く染め上げる。膝をつくスルトへ、首を狙いもう一撃を振るうが炎を纏わせた手の平で防ぐ。
「……っ!?」
水を掴むことなど不可能なはずだが、スルトの神通力は健在で触れただけで消失させる。口からもれ出す火に気づいた真冬は、柄から手を放し後方へ飛び退く。
「――っ!」
スルトは、大口を開け火を吹く。それはまるでドラゴンが炎を吐き出す光景、火力は強く距離を取った真冬を飲み込むほど。
腕を交差させ顔を庇う体勢になるが、衣服を溶かし皮膚を焼く。
数秒の出来事に、見守っていた陽菜が泣きそうな声で叫ぶ。
「ま、真冬ちゃん……!」
火の本流から飛び出した真冬の両腕は重度の火傷を負う。腕全体の皮膚は爛れ、肉を溶かし骨が見える箇所もある。
「つっ……! ふーっ、ふーっ、んぐっ!」
真冬は歯を食いしばり、激痛に耐えながらも肩から腕が垂れ下がり動かせない。息も荒く、よく意識を保っていられるなと自分でも不思議なほど。
陽菜とレヴィアタンがそばへ駆け寄る。
「ま、真冬ちゃん、待ってて、すぐ治すから!」
両腕に淡い緑色の光が、傷口を包み込み癒やす。
レヴィアタンは、スルトを睨みつけ牙を見せ威嚇。
治癒の巫女の力のお陰で傷は癒え元通りに、大鎌は真冬の手から放れたと同時に物体のない液体へと変わり、割れた地面へ流れ染み込む。
スルトの方も、傷を神通力で癒やし塞ぐと立ち上がった。
「ありがと、ヒナ」
「ううん。これくらいしか、できないから」
「それでもよ。危ないから、下がってて」
「うん」
真冬は、一呼吸置いてレヴィアタンを見つめ目だけで伝える。
意図を読み取ったレヴィアタンは真冬へ、大量の水を全身に被せびしょ濡れにする。
武器を持たず、最初と同じように弾丸の如く突っ込む真冬。
スルトの元へ、一瞬で距離を詰め回し蹴りを見舞う。腕で防がれても動じず、連続の殴打へ切り替えてもそれさえ手の平で防がれた。
今度は、地面に両手をつき逆立ちからの連続の蹴り技を繰り出す。
しかしだ、どの攻撃も威力が弱い上にスルトの腕や手で防がれダメージが入らない。
「弱イ。弱スギル。力ヲ、使イ果タシカ。小娘?」
遂には、足首を掴まれ持ち上げられる真冬の体。
至近距離で、火を吹こうとするスルト。その攻撃を待っていた真冬は、ニヤリと笑う。
「この瞬間を待ってたのよ!」
そう叫び、自らスルトの顔へ抱きつく。逆さ吊りのまま腕を頭に回し力を込め、離れないよう固定する。
「無駄ナ、足掻キヲ」
スルトは構わず、大口を開けて火を吹く。
ゼロ距離からの攻撃を受けた真冬の体は焼かれ、絶え間ない激痛が襲い燃え上がる。
――はずだった。
「ナニッ!?」
燃え上がるどころか吹く火を消し、体が水の球体へと変わっていくではないか。
スルトの頭から首元まで水の球体が包み込み、鼻や耳から口へと水が流れ込む。
「ングッ、ゴボボッ、ウウッ……!」
球体を引き剥がそうともがき、手で掴もうとするが何も掴めない。呼吸が苦しく、目からも水が流し込まれ上手く炎も神通力も扱えないスルト。
真冬本体は、陽菜のそばにいた。その場所から、水を操作し球体の水をスルトの穴という穴に流し込み続ける。
「内側からの攻撃には、耐えられないでしょ!」
真冬の作戦はこうだ。
まず、レヴィアタンの水で分身を生み出す。そのために全身、水を被り肉体を形成。
そして、スルトへ向け分身を放ちわざと捕まえさせる。次に、呼吸器官の顔全体を覆うためにへばりつかせ、球体の形へ変えるだけ。
「あとは、大口を開けたその口と穴という穴へ水を流し込み続けるだけ。どう? 苦しいでしょ?」
必ず殺すための行動を起こすと確信し、口を開ける瞬間を待っていたのだ。
真冬の予想通りとなり、スルトは息もできずもがき苦しむ。
火を吹こうにも空気を吸い込めない今の状況では不可能。球体を壊そうとするも、手はすり抜け為す術なく封じられる。
「さて、レヴィアタン。仕留めるわよ」
その言葉に頷き、大鎌を創り出しそれを受け取った真冬とレヴィアタンが駆けた。
スルトの背後に回った真冬は腰から腹部を深々と貫き、レヴィアタンは正面に回り尻尾を器用に槍のように真っ直ぐ心臓を狙い貫き引き抜く。
「――――ッ!?」
正面と背後からの同時攻撃を受け声にならない声を上げ、完全に肉体の行動が停止するスルト。
その場に倒れ込み、大鎌の刀身が抜けとめどなく血が流れていく。その様子を見ていた真冬とレヴィアタンは、お互いに手と尻尾でハイタッチ。
「さあ、私の方は終わったわよ」
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