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第四章 神山学園のレヴィアタン

第四幕 その身に纏うのは(1)

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 夕食を食べ終えたあと、思いついたことをヨルムンガンドに説明する夏目。



「あのな――」



 それは、夏目とヨルムンガンドの五感共有と融合しその身に纏うという方法。



 夏目は、ヨルムンガンドが持つ硬い鱗と猛毒を扱うことができればスルトに勝てるのではないかと。鱗は身を護る鎧の役割、猛毒は敵を倒すための攻撃の手段として。

 アニメを鑑賞して思いついたことだ。



 その説明を聞いたヨルムンガンドはとぐろを巻きながら考え込み、美哉はアニメ鑑賞から面白い発想をすると笑う。

 フェンリルは、夏目とヨルムンガンドの想いが強く疎通ができれば可能ではないかと推測。



「うん! ボク、やってみたい!」



 そう口にし意気込む。ロボットのよな合体とは少し違うかもしれないが、夏目と一心同体とも取れる説明にやる気に満ちた目を向ける。



「じゃあ、明日から試してみよう!」

「うん!」



 翌日、一階の空いている部屋を使いさっそく試してみる。



 ヨルムンガンドは、首に巻きつき夏目の頭に顔を乗せた。まずは、その身に纏う方法から実践。



 静かに呼吸を合わせ、鼓動が重なりお互いの感覚が溶け合うイメージを描く。肉体は夏目のままで、皮膚はヨルムンガンドの鱗を、猛毒は自身を傷つけるのではなく敵を打ち倒すために。



 美哉とフェンリルが見守る中、ヨルムンガンドの体が徐々に夏目の体へと吸い込まれるように消えていくのが肉眼でも視認できる。



「こんなことが可能だなんて……」



 驚く美哉に、フェンリルがつけ加えた。



「契約を交わし、お互いに信頼し合っているからこそ可能だ。主と愚弟の肉体が一つになろうとしている。神殺しと神獣は、切っても切り離せぬ繋がりが存在する。主は、その繋がりを利用して今回の合体技を生み出そうとしていると、そう我輩は見る。とはいえ、意識してなのか又は無意識で見出したのかは分からぬが、思想が他の神殺しとはあまりにも違い過ぎる」



 それに関して美哉も同じ意見だった。前者なら相当なもの、後者だとしてもここまで神獣と心を通わせ信頼を築けるのは驚愕いや、畏怖すべき事柄であり今までの神殺しとは全く異なる思考回路を持った神殺しということだ。



 そう話している間にも、ヨルムンガンドの体は夏目と溶け合い完全に消えていた。

 ゆっくりと、目蓋を開ける夏目の瞳が黒目から金色へと。頬の皮膚が蒼く澄んだ鱗へ一部変化し、犬歯が口の端から少し突き出している。



 フェンリルは、これは成功したか? と思った矢先にそれは起きた。

 夏目とヨルムンガンドの声が重なり悲鳴を上げたのだ。



「おえっ!? 無理!」

『気持ち悪い!』



 と叫び一人と一匹、その場に膝から崩れ落ち夏目たちのそばに美哉が慌てて駆け寄る。



「夏目!? ヨルムンガンド!? 大丈夫ですか!?」



 合体は強制的に解け、青い顔をする夏目と床に伸び全身をピクピクさせ白目を剥くヨルムンガンド。



「は、吐きそう……」



 弱々しく呟き倒れる。



「うぷっ……」



 今にも吐きそうな夏目の背中を擦る美哉。



「ふむ、どうやら全く違う肉体を一つにしようとしたこと、五感共有でお互いが見る視界、聞こえる音、感じる匂いに脳の情報処理が追いつかず吐き気を催し、解けたようだな」



 冷静に分析をするフェンリルが伝える。美哉も、すぐに習得できるとは思っていない。そう簡単な話ではないのだから。



「こればかしは慣れるほかあるまい」

「そうですね。夏目、ヨルムンガンド。頑張ってください」



 フェンリルと美哉は、苦笑いでそう言うしかない。



 吐き気と想像以上の気持ち悪さに青い顔をしながら、お互いの顔を見合せ渋い表情とたったの一度で体力をげっそり減らし、疲れ切った声で「「がんばる……」」としか答えられない夏目とヨルムンガンド。
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