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第四章 神山学園のレヴィアタン

風紀委員長の襲来(4)

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 美哉の殺意を真正面から受けても動じず、しかし素直に夏目から手を放す。



「そう怖い顔をしないで。ちょっと、遊ぼうと思っただけ」



 そう言いながらも、ははっと笑いながら離れた。

 遅れて燐と桜もこの場に集まり、美哉と先輩女子を交互に見てどう動くべきか迷う。



 美哉は、夏目の元へ駆け寄り体を起こすのに手を貸す。右足に絡まっていた水と土は消え、あっさり解放される。

 フェンリルとヨルムンガンドも戦闘をやめ駆け寄る。



「夏目、無事ですか?」

「あ、ああ」



 制服についた土を払いながら、美哉の手を借りて立ち上がる。



「それよりも、彼女はいったい……?」



 夏目の質問に、美哉は小さなため息を吐き出し答えようとした瞬間にそれを遮るように自ら自己紹介をする。



「初めまして。私は、神山学園の風紀委員長を務める神前真冬かんざきまふゆ。契約神獣はレヴィアタン。美哉が夢中で一筋で、一応後輩に当たる逢真のことが知りたくて少しいじわるをしたの。驚かせてごめんね」



(……言葉では謝ってはいるがこの人、絶対に反省とかしてないだろ)



 夏目の思うように、真冬の言葉とは裏腹に態度も表情からも反省の色が全く見えない。今でも、玩具で遊び終わり楽しかった、と言いたげに笑っているくらいだ。



「はあー……。真冬は困った性格をしているんです」



 そう前置きをし、額に手を当てながら説明をする美哉の顔には呆れが含まれていた。



「何事にも楽しむ精神はいいのですが、その楽しむために行き過ぎた言動があり、時に破壊してしまうんです。それは物だったり、他にも人から役割を奪ったりと。本人は、壊し奪ったとしても全く反省も、悪いとも思わないため扱いに要注意人物なんです」



 その説明に誰もが、開いた口が塞がらない。フェンリルまでもが、何とも言えず呆れ果てる始末。ヨルムンガンドは、思ったことをそのまま口にした。



「すっごい面倒くさくて怖い人だ!」



 と、本人を前に叫ぶ。



「あははははっ!」



 それを聞いた真冬は盛大に笑う。



「まあ、美哉の言うことは間違いじゃないわ。でも、それが私だから今更、変えられないし何よりそれを生き甲斐の一つとしてるから。変えようとも思わないのよね」



 真冬は、堂々と言い認める。

 夏目の中で、真冬は厄介な人だと認識。

 と、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響く。



「さて、続きは放課後に。神研メンバーは、風紀委員会室に来るように」



 それだけを言い残し去って行く。その背中を見送り、真冬の第一印象がまるで嵐のような人だなと。あと、あまり関わり合いたくはないタイプだとも思う夏目だった。



「全く……。本当に困った人ですね。とりあえず、私たちも戻りましょうか。このままだと授業に遅れますし」



 美哉に言われ各々、教室に戻る。授業には間に合ったが、昼休みの鬼ごっこで体力を使い果たし疲れ切り、午後の授業の内容がほとんど頭に入らず終わってしまう。



 放課後、真冬の指示通りに燐と桜、途中で美哉と合流し風紀委員会室へ向かう。

 風紀委員会室は、東校舎に位置しており生徒会室は西校舎だ。



 委員会室は基本的に東校舎に、家庭科室や技術室の他に実験室などは西校舎に並ぶ。



 中央の校舎は生徒たちが通う一般教室がり、全ての校舎は通路で繋がっており外に出て向かう必要はない造り。もちろん、外からの行き来は可能だ。



 そうして、風紀委員会室の前まで来た夏目たち。

 代表として部長の美哉がノックをすると、中から「どうぞ」と真冬の声が聞こえ扉を開けた。



 夏目は内心、ドキドキしていた。何もなければここに来ることはまずない。だから、委員会室の内装が少し気になっていたのだ。



 部屋へ入ると、コの字に並べられたテーブルの一番奥に座る真冬。その隣には、これまた初めて見る先輩女子。桃色の長髪、ハーフポニーテール、緑色の眠そうな目で椅子に座り船を漕ぐ。



 夏目たちが来たとこで真冬は、初めて会った時から見せていた崩さない笑みで言う。



「ようこそ、風紀委員会室へ。色々と訊きたいことがあったから呼び出したのよ。それと今後についても、ね」



(今後についても、ってどういう意味だ?)



 そう言う真冬の言葉の意味が分からない夏目。隣で今にも寝てしまいそうな、首を上下にコクコクと揺らす桃色の髪の彼女を放置して。
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