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第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス

決闘と誓い(2)

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 結界が学園を覆うと同時に夏目とフェンリルが動く。



「いくぞ、フェンリル!」

「うむ!」



 意気込む夏目は真正面から春人へ突っ込む。

 それを余裕の笑みを浮かべたままフェニックスに春人は命ずる。



「フェニックス、フェンリルの相手を」

「ピィー、ヒョロロー」



 甲高い鳴き声を上げ、金色の目はフェンリルを睨みつけ対峙する。

 フェンリルも睨み咆哮を上げ迎え撃つ。



「グォォォオオオオオオオッ!」



 羽ばたくフェニックスは咆哮を避け、その鋭く太い爪をフェンリルの肉体に食い込ませようと上空から襲う。



「キィィッ!」



 胴体を狙うフェニックスの爪を、フェンリルは前足で横殴りを見舞う。爪同士がぶつかり火花が散る。炎を纏う全身と翼から溢れる業火を一点に集め、球体を生み出すとフェンリルへ向け放つ。



「グルルッ」



 低く唸り、空気を吸い込み腹を膨らませ口からもれ出す青い炎を、こちらもフェニックスに向け口を大きく開け吐き出す。



 青い炎と、赤い業火が互いの火を飲み込もうと混じり合い爆発した。それでも、神獣の攻撃は止まらない。フェンリルは次の一手として無数の炎の玉を口から放ち、フェニックスも反撃と極太の業火による針を作り撃つ。



 ――ゴゴゴッ! ドーンッ! バーンッ!



 と、神獣の炎同士がぶつかり突風と熱が大地を焦がし震わせ、周囲の建物や木々は焼き尽くさんとばかりに爆発に巻き込まれる。二度の攻撃でグラウンドの半分は焦土と化する。



 これで終わるわけもなく、フェンリルは上空を飛び回る鳥を煩わしく思い地面を飛び跳ね空中へ。フェニックスよりも高く飛び上がり背中へ着地。



「落ちるがいい!」



 一言、発し牙を首へ突き立てる。噛まれた隙間から業火が血飛沫のように吹き出、痛みから堪らずフェニックスが鳴く。



「キィィィィィィィッ!」



 しかし、フェニックスもただ噛まれるだけではない。

 フェンリルに首を噛まれ背に乗せたまま、旋回し神喰い狼の巨躯を下に地面へ叩きつけた。



「うぐっ!」

「クェェエエエエエエッ!」



 その衝撃で口が離れた隙きを見逃さず、纏う業火の火力を引き上げ全身に浴びさせる。今度は、フェンリルの口から焼かれる痛みに耐える呻き声を上げる。



「がっ、ぐううううううっ!」



 すぐに業火を、神通力で吹き飛ばし吐息による衝撃波を繰り出す。が、フェニックスはそれを華麗に飛び回り躱す。

 吐息の衝撃波は、覆う結界にぶち当たり霧散するがその振動が結界全体を揺らす。



(ちっ! これでは埒が明かぬ!)



 と判断したフェンリルはもう一度跳躍。

 フェニックスもまた同じ手は通じない、と言わんばかりに翼を広げ大きく羽ばたく。風を巻き起こし業火を混ぜ込み、風は熱風となりフェンリルへ。



 跳躍したフェンリルは自らの神通力を足場と作り、熱風を避けながら駆け回る。円を描くようにフェニックスの周りを駆け、狙うは炎を纏えない足首だ。

 死角に回り込み、飛び跳ね口を開け足首に噛みつく。



「ガルルルッ!」

「キュュュッ!」



 噛まれたことでバランスが崩れるが、フェニックスは上空から落ちないよう維持しつつ熱風を器用に操りフェンリルへ当てる。毛皮を焼き、皮膚を抉り血が流れ激痛が全身に伝わるが耐えて、ぶら下がる格好から痛む体に力を入れフェニックスを地上へ引き摺り降ろす。



 ――ドゴンッ!



 首を回し、フェニックスを地面に叩きつけ前足で翼を踏みつけ爪を立て動きを封じ、至近距離から青い炎を吐き出す。

 フェニックスは、フェンリルが吐く青い炎を危険と判断し全身を護るべく業火を身に纏いながらもかつ攻撃に出た。



 ――ボォォオオオオオオオオオオオオオオッ!



 どちらも負けじと炎を相手に当て全身を焼く。

 両者諸共、肉体が焼かれ焦げた臭いが充満する。互いに離れ距離を取り、全身から煙が立ちフェニックスは片翼を失っていた。断面から青い炎が燃え盛り、フェンリルは半身の毛皮を焼かれ皮膚が爛れ血が止めどなく流れていた。



 しかし、神通力を駆使し傷を癒やす。

 それはフェニックスも同様に、再生の能力を駆使し傷が消える。



「グルルルッ!」



 姿勢を低く威嚇するフェンリル。



「ピィッ――!」



 再生した翼を広げ、目を細め睨みつけるフェニックス。

 同時に、相手を殺さんと牙と爪を剥き出し襲い掛かる。
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