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第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
新しいメンバー(3)
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美哉が同居すると強引に住み始めて三日が経つ。
夏目は寝不足だった。
「はあー……」
毎日のようにベッドへ潜り込み、夏目に抱きつき眠りにつく美哉。確かに、何もせずただ寝るだけだが、胸元に顔を擦り寄せ腕を腰に回し足を絡めてくる。
美哉の胸がお腹辺りに押しつけられ、細い脚は夏目の股間に当たり思わぬ刺激が襲う。温もり、柔らかさに性欲がこれでもかというくらい刺激され、抑え込むのが精一杯。その上で、理性が限界寸前だ。
寝不足を物語る目の下の隈、溜め込まれていく性欲が荒れ狂う。
「このままでは、美哉を襲いかねない……」
頭を悩ます夏目。
そんな状況でも、学校があり授業を受けるが全く内容が頭に入ってこず昼休みを迎える。そこへ、隣のクラスから燐が訪れた。
「逢真。いいか?」
「ん? 秋山?」
「一緒に昼食でもどうだろうか?」
「いいけど」
燐の登場と共に、夏目を誘う光景に教室はざわつく。
「では、行こうか」
「あ、ああ」
ざわつく生徒を気にも留めず夏目を連れて出て行く。向かった先は旧部活棟にある部室ではなく、旧部活棟がある中庭のベンチだ。
ベンチに腰掛ける夏目と燐。
「逢真、大丈夫か? 隈が酷いようだが」
「ああ……。ちょっと、寝不足なだけで大丈夫だ」
夏目の顔色と隈を見て心配してくれる燐に疲れた声で答える。
「何かあったのか? わたしでよければ相談に乗るが?」
美哉とも姉妹のにように仲が良い、と聞いていたこともあり燐の言葉に甘えることに。
「あのさ、美哉をなんとかしてほしい」
「む? なんとかとは、どういうことだ?」
夏目の、それだけの説明では分からず訊き返す燐。
三日間の出来事を説明する。
すると、話を聞いた燐は声を出して笑う。
「ぷっ、あはははっ!」
「おい、そんなに笑うなよ。俺は真剣に悩んでいるんだぞ……」
「はははっ! す、すまない。そうか、先輩は逢真にそこまで」
「ったく。俺の身が保たないっていうのに……」
「そうだな。逢真も男だ。我慢の限界だってある」
燐の反応に不服そうな顔で膝に肘を立て頬杖をつく夏目。穏やかな空を見上げた燐は、美哉に聞いた昔の思い出話を口にする。
「先輩は……一途で尽くすタイプ、なんだ」
「ん? そうなのか?」
「ああ。わたしが知る先輩と、本人から聞いた話なのだが――」
そう言いながら燐は、懐かしむかのように昔の美哉を語る。
幼い頃より、雪平の巫女としてお役目を果たす日々。能力の制御や戦闘技術、神殺しと巫女の知識を叩き込まれる。
周りの子のように無邪気に遊ぶことさえ許されず、父親の言う通りにしなければならないと躾けられる。躾けと言うがそんなものは建前、美哉の父親は巫女の能力こと恩恵を強く受け継いだ娘を、意のままに操る人形か道具としか思っていない。
男では引き継げない恩恵、その力は権力の象徴であり従わせるものとしか考えていないのだ。
そうやって親から愛情を受けることなく幼少期を過ごしていた。母親も、夫の支配で言いなりだった。だが、何もかも命令される日々に我慢できず限界を超えた美哉は、家を飛び出してしまう。
裏山の近く、そこで遊ぶ一人の男の子に出会う。その子は、お菓子が入ったエコバッグを手に持ち蝶々を追いかけていた。
美哉は、蝶々を追いかけるのではくその子のあとを追いかけた。男の子は、それに気づき振り返って訊く。
「一緒に追いかけてみる?」
「えっ、と、うん……」
見ず知らずの美哉に対して、男の子は追いかけるのが楽しいのか笑顔だ。ただ頷くことしかできず、それでも二人で蝶々を追いかける。綺麗な羽をした蝶々は、太陽の光を浴びるとキラキラ輝く。やがて、蝶々は山の方へ飛び去ってしまい見失う。
「あーあ……。山に行っちゃった。んー、お腹空いたしお菓子食べよう!」
公園のベンチに座った男の子は、美哉へ手招きをしてエコバッグからお菓子を取り出し渡す。
「はい。あげる」
「いいの?」
「うん。一緒に食べよう!」
「うん!」
横に座り、男の子がお小遣いで買ったお菓子を食べる。
「美味しいね!」
無邪気に笑う彼に釣られて美哉も笑顔を浮かべた。
「うん、美味しい!」
「これね、僕の好きなお菓子なんだ!」
そう言って、美哉に渡したお菓子を指す。うすしお味のチップス。大人から子供まで人気の商品だ。
パリパリ、と音を鳴らし塩っけが口の中に広がり初めて食べる食感に美哉の好奇心が刺激される。美味しくて、食べる手が止まらない。
「あ、こっちの梅味のチップスも美味しいから一緒に食べよう!」
「わ、私が貰ってもいいの?」
貰ってばかりで失礼と思ったのか美哉は訊く。
男の子はそう返されたことが不思議なのかキョトン、と首を傾げてはすぐに笑顔になり言う。
「いいよ! 他にもいっぱいあるから、ほら!」
エコバッグの中を見せて。ガム、飴、チョコ系のお菓子と色々と詰まっていた。
美哉は、出会ってばかりの自分にお菓子をあげる理由が分からない。が、笑顔で渡されると無下にもできず受け取る。
「貰った分、お返しするね」
ただ貰うだけではいけない、と思い伝える。それが、次に会う約束となった。翌日も、公園で待ち合わせ家から持ってきたせんべいの詰め合わせをお返しとして渡す美哉。
お返しが切っ掛けで、お互い自己紹介を交わし一緒に遊ぶように。それが、逢真夏目と雪平美哉の出会い。
小学校が同じ、年齢も同じということもあり登下校を共にし時に夏目の家にお邪魔し宿題をする毎日。それが美哉にとって楽しい日々だった。
しかし、父親は美哉に何の取り柄もない夏目が近寄りくだらない娯楽を教えていることを許せなかった。お役目を疎かにする娘を、家に縛ろうとしたが当主である玄也がそれを止める。
笑うことも、ただ命令通りにする美哉がある少年との出会いで感情を表に出し、楽しそうにしている姿を見てこのまま好きにさせるようにと。
当主たる玄也に逆らえず、父親は目を瞑る。
夏目との仲が深まり、いつしか母親同士が繋がりママ友にまで発展。
巫女も雪平も関係のない、夏目と過ごす時間が美哉にとってかけがえのないものへと変わる。
夏目は寝不足だった。
「はあー……」
毎日のようにベッドへ潜り込み、夏目に抱きつき眠りにつく美哉。確かに、何もせずただ寝るだけだが、胸元に顔を擦り寄せ腕を腰に回し足を絡めてくる。
美哉の胸がお腹辺りに押しつけられ、細い脚は夏目の股間に当たり思わぬ刺激が襲う。温もり、柔らかさに性欲がこれでもかというくらい刺激され、抑え込むのが精一杯。その上で、理性が限界寸前だ。
寝不足を物語る目の下の隈、溜め込まれていく性欲が荒れ狂う。
「このままでは、美哉を襲いかねない……」
頭を悩ます夏目。
そんな状況でも、学校があり授業を受けるが全く内容が頭に入ってこず昼休みを迎える。そこへ、隣のクラスから燐が訪れた。
「逢真。いいか?」
「ん? 秋山?」
「一緒に昼食でもどうだろうか?」
「いいけど」
燐の登場と共に、夏目を誘う光景に教室はざわつく。
「では、行こうか」
「あ、ああ」
ざわつく生徒を気にも留めず夏目を連れて出て行く。向かった先は旧部活棟にある部室ではなく、旧部活棟がある中庭のベンチだ。
ベンチに腰掛ける夏目と燐。
「逢真、大丈夫か? 隈が酷いようだが」
「ああ……。ちょっと、寝不足なだけで大丈夫だ」
夏目の顔色と隈を見て心配してくれる燐に疲れた声で答える。
「何かあったのか? わたしでよければ相談に乗るが?」
美哉とも姉妹のにように仲が良い、と聞いていたこともあり燐の言葉に甘えることに。
「あのさ、美哉をなんとかしてほしい」
「む? なんとかとは、どういうことだ?」
夏目の、それだけの説明では分からず訊き返す燐。
三日間の出来事を説明する。
すると、話を聞いた燐は声を出して笑う。
「ぷっ、あはははっ!」
「おい、そんなに笑うなよ。俺は真剣に悩んでいるんだぞ……」
「はははっ! す、すまない。そうか、先輩は逢真にそこまで」
「ったく。俺の身が保たないっていうのに……」
「そうだな。逢真も男だ。我慢の限界だってある」
燐の反応に不服そうな顔で膝に肘を立て頬杖をつく夏目。穏やかな空を見上げた燐は、美哉に聞いた昔の思い出話を口にする。
「先輩は……一途で尽くすタイプ、なんだ」
「ん? そうなのか?」
「ああ。わたしが知る先輩と、本人から聞いた話なのだが――」
そう言いながら燐は、懐かしむかのように昔の美哉を語る。
幼い頃より、雪平の巫女としてお役目を果たす日々。能力の制御や戦闘技術、神殺しと巫女の知識を叩き込まれる。
周りの子のように無邪気に遊ぶことさえ許されず、父親の言う通りにしなければならないと躾けられる。躾けと言うがそんなものは建前、美哉の父親は巫女の能力こと恩恵を強く受け継いだ娘を、意のままに操る人形か道具としか思っていない。
男では引き継げない恩恵、その力は権力の象徴であり従わせるものとしか考えていないのだ。
そうやって親から愛情を受けることなく幼少期を過ごしていた。母親も、夫の支配で言いなりだった。だが、何もかも命令される日々に我慢できず限界を超えた美哉は、家を飛び出してしまう。
裏山の近く、そこで遊ぶ一人の男の子に出会う。その子は、お菓子が入ったエコバッグを手に持ち蝶々を追いかけていた。
美哉は、蝶々を追いかけるのではくその子のあとを追いかけた。男の子は、それに気づき振り返って訊く。
「一緒に追いかけてみる?」
「えっ、と、うん……」
見ず知らずの美哉に対して、男の子は追いかけるのが楽しいのか笑顔だ。ただ頷くことしかできず、それでも二人で蝶々を追いかける。綺麗な羽をした蝶々は、太陽の光を浴びるとキラキラ輝く。やがて、蝶々は山の方へ飛び去ってしまい見失う。
「あーあ……。山に行っちゃった。んー、お腹空いたしお菓子食べよう!」
公園のベンチに座った男の子は、美哉へ手招きをしてエコバッグからお菓子を取り出し渡す。
「はい。あげる」
「いいの?」
「うん。一緒に食べよう!」
「うん!」
横に座り、男の子がお小遣いで買ったお菓子を食べる。
「美味しいね!」
無邪気に笑う彼に釣られて美哉も笑顔を浮かべた。
「うん、美味しい!」
「これね、僕の好きなお菓子なんだ!」
そう言って、美哉に渡したお菓子を指す。うすしお味のチップス。大人から子供まで人気の商品だ。
パリパリ、と音を鳴らし塩っけが口の中に広がり初めて食べる食感に美哉の好奇心が刺激される。美味しくて、食べる手が止まらない。
「あ、こっちの梅味のチップスも美味しいから一緒に食べよう!」
「わ、私が貰ってもいいの?」
貰ってばかりで失礼と思ったのか美哉は訊く。
男の子はそう返されたことが不思議なのかキョトン、と首を傾げてはすぐに笑顔になり言う。
「いいよ! 他にもいっぱいあるから、ほら!」
エコバッグの中を見せて。ガム、飴、チョコ系のお菓子と色々と詰まっていた。
美哉は、出会ってばかりの自分にお菓子をあげる理由が分からない。が、笑顔で渡されると無下にもできず受け取る。
「貰った分、お返しするね」
ただ貰うだけではいけない、と思い伝える。それが、次に会う約束となった。翌日も、公園で待ち合わせ家から持ってきたせんべいの詰め合わせをお返しとして渡す美哉。
お返しが切っ掛けで、お互い自己紹介を交わし一緒に遊ぶように。それが、逢真夏目と雪平美哉の出会い。
小学校が同じ、年齢も同じということもあり登下校を共にし時に夏目の家にお邪魔し宿題をする毎日。それが美哉にとって楽しい日々だった。
しかし、父親は美哉に何の取り柄もない夏目が近寄りくだらない娯楽を教えていることを許せなかった。お役目を疎かにする娘を、家に縛ろうとしたが当主である玄也がそれを止める。
笑うことも、ただ命令通りにする美哉がある少年との出会いで感情を表に出し、楽しそうにしている姿を見てこのまま好きにさせるようにと。
当主たる玄也に逆らえず、父親は目を瞑る。
夏目との仲が深まり、いつしか母親同士が繋がりママ友にまで発展。
巫女も雪平も関係のない、夏目と過ごす時間が美哉にとってかけがえのないものへと変わる。
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