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第二章 神喰い狼フェンリルと不死鳥フェニックス
新しいメンバー(2)
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前日に美哉から、メンバーを紹介されことに関して肩身が狭い程度にしか特に思っていなかった夏目だったのだが。
目の前の光景には困惑以上に理解が追いつかない。アホ毛は、グルグルと回転し止まらない。
(こ、これはいったい……)
その理由は簡単だった。今朝、唐突に美哉が家へ訪れたのだ。それもダンボールをいくつか車に乗せ。
出迎えるやいな、
「夏目。おはようございます」
「お、おはよう。というか、その荷物は?」
「うふふ。今日から、私もこの家に住みます」
「へっ? はい?」
そう言って、有無も言わさずリビングへ荷物を家の者に運ばせ今に至る。
あまりの出来事に頭を抱える夏目は美哉に訊く。
「あのな、美哉。親の許可は取っているのか? そもそも、年頃の娘がいくら幼なじみの家だかといって急に住むなんてダメだろ……」
危機感はないのか、美哉が何を考えているのか分からない夏目。
美哉は、夏目の問いにあっさり白状する。
「お祖父様には許可を取っていますよ。まあ、お父様には何も言わず黙って来ましたが」
「美哉……?」
「私の意見を全く聞かない、命令しかしないあの人の言うことは聞けません。私は、人形でも道具でもありませんから」
そう怒りを滲ませ吐き捨てるように言う。
怒る美哉は珍しいと思う夏目。普段から冷静で、笑顔を絶やさず優しいのにと。これは何を言っても聞かないだろう。
「分かった。美哉の好きにすればいいさ」
「夏目……。ありがとうございます」
こうして、本日から美哉が住むことに。急な展開に戸惑う夏目とは打って変わって美哉は、楽しそうに荷解きしつつ嬉しそうだ。
何がそんなに楽しくて嬉しいのか夏目には分からないが、問題はそこではない。炊事洗濯、掃除と家事全般を住む代わりにと美哉が率先してこなしてくれる。
そこはいい。夏目としてもありがたいのだが、風呂事情と眠る時が問題だった。
夜、お風呂に入ればあとから美哉も入ってくる始末。
「み、美哉⁉」
「うふふ。背中を流してあげますね」
「い、いい! それくらい一人でやれるから!」
「はいはい。じっとしててください」
「ちょっ⁉ み、美哉!」
半ば強引に押し進め背中を流しにくる美哉。ただ普通に流してくれる分にはいいのだが、そうはいかないのが彼女だ。
夏目の背中にわざと豊満な胸を押しつけ体を密着させ、手は胸板を撫で抱きつきながら耳元で囁く。
「夏目は、私を襲いたい、とは思わないのですか?」
「~~~~っ⁉」
と甘く誘惑してくる。その言葉に脳みそが沸騰し理性が吹っ飛びそうなのを必死に堪える。それだけでは終わらず、一糸纏わぬ姿を晒し続けながら耳に甘噛、頬にキスを落とし、首筋に吸いつき赤い痕を残す。
「――――っ⁉」
「ふふっ」
(も、もう無理だっ!)
やりたい放題の美哉の誘惑に耐え切れず風呂場から逃げる夏目。そそくさと、体を拭き服を着て部屋へ戻る。
鍵をかけ、高まるばかりの性欲を無理矢理に抑え込みベッドに潜り寝るの一択。
(が、我慢しろ俺! 耐えろ俺! ただの幼なじみだ、恋人でもないのに襲うのはない! 絶対にダメッ!)
と言い聞かせる夏目だが、鍵穴に己の能力でもある氷で鍵を作り解錠してしまう美哉。
ガチャッ、という音に起き上がり美哉と目が合う。
「……って、なんで⁉ どうやって開けたんだ⁉」
「これくらい簡単ですよ。それと、鍵をかけても無駄です」
そう笑顔で返す美哉に、驚きを隠せない夏目。
「せっかくの同棲なのに、一緒に眠れないのは嫌です」
と頬を膨らませ不満げだ。一緒に住む間は、眠る時もそばいいたいらしくベッドへ潜り込む。風呂場での件でこれ以上は危険と判断し、ベッドから抜け出そうとする夏目の手首を掴み引き止める。
「み、美哉さん……?」
「ただ一緒に眠るだけです。何もしませんよ」
「…………」
「ダメですか?」
「……っ」
「夏目。隣にいて欲しい、それだけです。それでもダメでしょうか?」
「~~っ! わ、分かったよ!」
上目遣いで、寂しげな目で訴えられそう言われると折れるしかない夏目はベッドへ戻る羽目に。背中を向けて寝たいが、美哉は胸に飛び込み抱きついて放さない。
「夏目は温かいですね」
「そ、そうか? ま、まあ寒くないならいいけど……」
「ええ。とっても温かくて、寒くありませんよ……」
胸元に顔を擦り寄せ寝息を立てる美哉。彼女は宣言通り、何もしてくることなく眠りつく。
(こ、この状況で俺は眠れないんだが……)
夏目の心はそれどころではなかった。心地良さそうに眠る美哉を見てため息一つ。
この状態はいったいあと何日続くのか、何より寝不足必須ではないだろうかと困り果てる。
目の前の光景には困惑以上に理解が追いつかない。アホ毛は、グルグルと回転し止まらない。
(こ、これはいったい……)
その理由は簡単だった。今朝、唐突に美哉が家へ訪れたのだ。それもダンボールをいくつか車に乗せ。
出迎えるやいな、
「夏目。おはようございます」
「お、おはよう。というか、その荷物は?」
「うふふ。今日から、私もこの家に住みます」
「へっ? はい?」
そう言って、有無も言わさずリビングへ荷物を家の者に運ばせ今に至る。
あまりの出来事に頭を抱える夏目は美哉に訊く。
「あのな、美哉。親の許可は取っているのか? そもそも、年頃の娘がいくら幼なじみの家だかといって急に住むなんてダメだろ……」
危機感はないのか、美哉が何を考えているのか分からない夏目。
美哉は、夏目の問いにあっさり白状する。
「お祖父様には許可を取っていますよ。まあ、お父様には何も言わず黙って来ましたが」
「美哉……?」
「私の意見を全く聞かない、命令しかしないあの人の言うことは聞けません。私は、人形でも道具でもありませんから」
そう怒りを滲ませ吐き捨てるように言う。
怒る美哉は珍しいと思う夏目。普段から冷静で、笑顔を絶やさず優しいのにと。これは何を言っても聞かないだろう。
「分かった。美哉の好きにすればいいさ」
「夏目……。ありがとうございます」
こうして、本日から美哉が住むことに。急な展開に戸惑う夏目とは打って変わって美哉は、楽しそうに荷解きしつつ嬉しそうだ。
何がそんなに楽しくて嬉しいのか夏目には分からないが、問題はそこではない。炊事洗濯、掃除と家事全般を住む代わりにと美哉が率先してこなしてくれる。
そこはいい。夏目としてもありがたいのだが、風呂事情と眠る時が問題だった。
夜、お風呂に入ればあとから美哉も入ってくる始末。
「み、美哉⁉」
「うふふ。背中を流してあげますね」
「い、いい! それくらい一人でやれるから!」
「はいはい。じっとしててください」
「ちょっ⁉ み、美哉!」
半ば強引に押し進め背中を流しにくる美哉。ただ普通に流してくれる分にはいいのだが、そうはいかないのが彼女だ。
夏目の背中にわざと豊満な胸を押しつけ体を密着させ、手は胸板を撫で抱きつきながら耳元で囁く。
「夏目は、私を襲いたい、とは思わないのですか?」
「~~~~っ⁉」
と甘く誘惑してくる。その言葉に脳みそが沸騰し理性が吹っ飛びそうなのを必死に堪える。それだけでは終わらず、一糸纏わぬ姿を晒し続けながら耳に甘噛、頬にキスを落とし、首筋に吸いつき赤い痕を残す。
「――――っ⁉」
「ふふっ」
(も、もう無理だっ!)
やりたい放題の美哉の誘惑に耐え切れず風呂場から逃げる夏目。そそくさと、体を拭き服を着て部屋へ戻る。
鍵をかけ、高まるばかりの性欲を無理矢理に抑え込みベッドに潜り寝るの一択。
(が、我慢しろ俺! 耐えろ俺! ただの幼なじみだ、恋人でもないのに襲うのはない! 絶対にダメッ!)
と言い聞かせる夏目だが、鍵穴に己の能力でもある氷で鍵を作り解錠してしまう美哉。
ガチャッ、という音に起き上がり美哉と目が合う。
「……って、なんで⁉ どうやって開けたんだ⁉」
「これくらい簡単ですよ。それと、鍵をかけても無駄です」
そう笑顔で返す美哉に、驚きを隠せない夏目。
「せっかくの同棲なのに、一緒に眠れないのは嫌です」
と頬を膨らませ不満げだ。一緒に住む間は、眠る時もそばいいたいらしくベッドへ潜り込む。風呂場での件でこれ以上は危険と判断し、ベッドから抜け出そうとする夏目の手首を掴み引き止める。
「み、美哉さん……?」
「ただ一緒に眠るだけです。何もしませんよ」
「…………」
「ダメですか?」
「……っ」
「夏目。隣にいて欲しい、それだけです。それでもダメでしょうか?」
「~~っ! わ、分かったよ!」
上目遣いで、寂しげな目で訴えられそう言われると折れるしかない夏目はベッドへ戻る羽目に。背中を向けて寝たいが、美哉は胸に飛び込み抱きついて放さない。
「夏目は温かいですね」
「そ、そうか? ま、まあ寒くないならいいけど……」
「ええ。とっても温かくて、寒くありませんよ……」
胸元に顔を擦り寄せ寝息を立てる美哉。彼女は宣言通り、何もしてくることなく眠りつく。
(こ、この状況で俺は眠れないんだが……)
夏目の心はそれどころではなかった。心地良さそうに眠る美哉を見てため息一つ。
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