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第一章 神殺しと巫女

神話オカルト研究会(5)

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 翌日の放課後。足取りは重いが、昨日に案内された旧部活棟へ赴く。



 三階の奥の部屋の扉を押し開ければ既に美哉が来ていた。

 夏目を視界に捉えると、部長専用の椅子に座り難しい顔つきがすぐ綻び笑みを浮かべる。



「ちゃんと来てくれたのですね」

「ま、まあ……」



 昨日の今日で何を言えばいいか一瞬、悩み素っ気ない返事をしてしまうが美哉はこれといって気にはしていない様子。



 ソファーに腰掛け鞄を置き、一日置いてふと気になったことを問う。



「そういえば、昨日に言っていたあと二人の部員は?」



 そう美哉が話していた残りの部員についてだ。夏目は二人の名前も知らない。



「彼女たち二人は今、別件で忙しいので部活に参加できないんです。その時がくれば紹介するので待っていてください」



 美哉の説明に夏目は、



(女子なのか。ということは、男子部員は俺だけ? えっ、なんかやり難いな……)



 と女子に囲まれ喜ぶよりも男一人は嫌だな、と思う。



「夏目。二人に好意を持たないでくださいね」



 夏目の思考を読み、資料を見ながら何故か声のトーンを下げ釘を刺す美哉。



「いや、会ったことすらない相手に好意なんて持たないから。ただ単に、男が俺だけはなんだかなって思っただけで」

「それでも、いざ会って『あ、好みのタイプだ』だとか『可愛いな』とか思うかもしれないでしょう? 二人とも中学の時はそれはもうモテたようですし。入学早々、一目惚れで告白されたとも聞きましたから。だから、今の内に釘を刺しておかないと」



 そう言って顔を上げ目が笑っていない笑みで圧を掛けてくる美哉。



「……わ、分かった。持たない」



 圧に怖気づき、そう答えるしかない。

 内心では美哉もモテるだろうに、と思ったが口にはしない。家から近いという理由もあるが元々、美哉と共に通うため神山学園を受験していた。



 リハビリで会う機会が減り会話もなくなったが、こうしてまた会話し一緒の時間を過ごすのは夏目にとって嬉しいことでもある。

 一年遅れて入学し知ったことがある。幼なじみの美哉もモテていたことに。クラスの男子たちが美哉のことを話しているのを耳にしたことも多々ある。



 先輩の誰々が告白し振られた。

 時に女子からも告白を受けたとか。

 たった数日で噂になるほど人気というか目立つのだろう。

 それはそうと、さきほどから美哉が目を通す資料が気になる夏目。



「美哉、さっきから何を見ているんだ?」

「これですか?」



 手に持つ紙をひらひらと振る。机の上にも何枚か置いてある。



「これはですね、生徒会長からこの神研に送られてきた近隣の被害報告書です」

「……はい?」



 そういうのは生徒がするものではなく、警察とかではないのかと思う夏目を手招きし報告書とやらを見せる美哉。

 確かに近隣の被害報告が書かれていた。



「使徒が密かに暴れ公園の遊具が破壊された、公共の花壇が荒らされた、嫌な臭いが充満している、夜な夜な不気味な声がして怖い迷惑などなど」



 美哉の言うように器物破壊から近所迷惑な行為が記されている。

 生徒会まで、昨日の会話に関わっていると知り妄言ではないと改めて考えさせられる。



「これをどうするんだ? 警察に相談とか?」

「いえ、使徒絡みは全て雪平家や秋山家が処理します」

「……えっ?」

「密かに暴れまわっている使徒を討伐します」

「……はっ?」



 笑顔でとんでもないことを言い出す美哉に空いた口が塞がらず頬が引きつる。



 警察に頼らず解決するつもりの様子にそこまでするのかと疑問に思う。そもそも、生徒会もどうやってこんな情報を持っているのか、それをどうして美哉が作ったこの部に報告してくるのか、何一つ分からないまま話が進む。



「使徒をこのまま放置はできません。雪平家次期当主として、この街を護る義務があります。むろん、夏目にも協力してもらいますよ」



 立ち上がり笑顔でまたしても、とんでもないことを言い出す。



「は、はぁぁあああああああああああああああああああっ⁉」



 最後の一言に一瞬、何を言われているの理解できず間を開けて叫ぶ夏目だった。
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