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005 翻訳機を手に入れた
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『光の勇者 聖の冒険譚』
むかしむかし、聖なる力に守られた国がありました。
ある時、魔王が現れ、魔族を率いて聖なる力を破って国を破壊しようと侵略を始めました。
聖なる国の王は、国を守るために力を求め、力に自信のあるものを集め始めました。
しかし、魔王の力は強大で誰も倒すことが出来ませんでした。
万策尽きた国王は大切に育ててきた姫の力を使って異世界の勇者を召喚することにしました。
多くの者が国の為に他の世界から誰とも分からぬ者を呼ぶなどと国王に進言しましたが聞き入れられませんでした。
魔王によってそこまで国は追い詰められていたのです。
姫の力で召喚に成功した国王は勇者に魔王を倒してほしいと願いました。
倒してくれれば相応の褒美も出そうと言いましたが、勇者はそんな褒美は要らないから元いた国に返してくれと願いました。
国王は魔王を倒した暁には必ず返そうと約束しました。
勇者はニホンというところから来たと言います。名をヒジリ(聖)といいました。
彼はこの国の兵たちにも敵わないくらい弱い力しか持ちませんでしたが、たちどころに強くなり国一番の強者になりました。
準備を整えた勇者は仲間とともに魔王退治に向かいます。数々の試練を乗り越え、とうとう魔王を倒すことができたのです。
聖なる力に守られた国に再び平和な時がもたらされたのです。
めでたし、めでたし。
ぱたりと本を閉じるとサラさんは私をにっこりと微笑んだ。
「いかがですか、エスティアお嬢様。とても素敵なお話ですね。」
「あぅ。きゃっ、きゃっ!」
綺麗な挿絵を見て喜びの声を上げる私を見てサラさんはとても満足そうだ。本を仕舞いながら、サラさんは色々と教えてくれた。
「この光の勇者さまは本当にいらしたそうですよ。ルイン王国という過去に存在したと言われている国のお話で、現在でいうと聖ハルジオン王国にあたります。ルイン王国というのは、過去失われた時代というのがあって、その頃の人族の国はこのルイン王国と言われる国だけだったそうです。聖なる力で守られた国ルインがなぜ滅んだのかは歴史にも残ってはいませんが、神の怒りに触れたのだというのが通説です。」
「ふぇっ!」
ギョッとしている私の頭を撫でて、神の怒りに触れるなんて怖いことは起こりませんから大丈夫ですよと慰めてくれる。
温かい手に撫でられて、気持ちがいい。猫とかってこんな気分なのかな。
しかし、滅びた国か。神の怒りに触れたってこれもよくある通説って感じだな。何をやったのだろうね。
このご本のお話は、確かによくある勇者の物語って感じでしたがいくつか気になることがあった。そう、召喚魔法!召喚魔法って存在するのか!聖なる力に守られた国というのは、不思議な力が働いていたのだろうか。
その力もまた謎だ。
それに、何よりも気がかりなことがある。
「平和になってめでたし、めでたし。」で終わっているこの物語、勇者はその後どうなったのかが描かれていない。
ちょっと気になるよね。
本来なら、「平和になり勇者は元の国に帰っていきました。」という終わり方になるはずなのだが、児童向けということで割愛されているのだろうか。
いいえ、子供向けの本という本は無いくらいもう分かっている。と言う事はこの終わり方なにやら作為的なものを感じるね。
もしかするとテンプレのように召喚はできても送還は出来なかったのではないだろうか。理由はいくつも考えられる。
「姫の力」というのが「召喚魔法」であったなら、「送還魔法」は持っていなかった、もしくは送還方法が元々ない。
あるいは送還は出来るけれど元の場所に戻せるか定かではないと言ったところかな。
下手したら召喚で命を使い果たして、召喚主が死んでしまったなんてこともあり得るかもしれない。
召喚魔法のイメージとしてはこの世界の外に繋いで対象を特定してよくある空間属性魔法「転移」を用いて移動させるという感じだが、送還魔法の場合は、対象を元いた世界を探した上で転移させなくてはならないよね。
その元いた世界というのは、特定することが困難なはず。
世界というのが1つであれば簡単だけど、数あるパラレルワールド、そして現在ある世界がどこにあたるのかなどは調べようがない。
どこでもいいので返してくれなんて人はいないからね。
召喚するなら、返すことも考えて印をつけておく事が必要だ。
しかし、手に入れた力を手放すことは人には難しい。そういう事なのではないだろうか。
今は想像でしかないのだが、もしこの世界でも今も同じような召喚がされていたらと思うとぞっとする。
おそらく、様々な本に残っている地球の足跡。これで納得というか。通りで知った名前が付けられているものが多いと感じたわけだ。
召喚された者たちがこうして残していったものなのだろう。
さてそんな話はさておき、先程気が付いた事があるのだ。
実に素晴らしい大発見だよ!
私も目から鱗な感じでびっくりだ!勿論目から本当に鱗は落ちないよ?ファンタジーな世界だからあり得るかもしれないけど。
アカシックレコードって本当に便利だ。アカシックレコードはなんと辞書にもなったのです。拍手!
日本語訳とこの世界の言語を並べて、他の本と見比べて間違い探しをしている感じなのだが、少しずつ本を読んでいっている。
こちらの世界の言語も早く読めるようになりたいので日本語訳だけを見るわけにはいかないのだ。
子供の柔らかな脳のおかげですんなり内容が頭に入ってきてどんどん吸収している。
やっぱり辞書的なものは必要だよね。この世界の言語で読めなかった本が少しでも読めるというのはとてもうれしい限りだ。
ただ、この世界の言語で日本語訳できない単語はそのまま表示されてしまうので、いつか読める日が来るのを待つのも新たな楽しみだ。
まぁ本は読めても発音がさっぱり分からないけどね。
地球のパソコンで打ち込まれたような綺麗な状態ではないので、かすれたり補強されたりと色々だが、それをきれいに見せてくれるのがアカシックレコード。とはいっても脳内で変換されているだけではあるのだが。
本の虫って言われそうだが、知識が増えるって素敵だね。あれ?アカシックレコードを通して読むってことは本ではない?まぁいいや。
――――…
「はじめの第一歩」これを聞くと思わず「だるまさんがころんだ」をしそうな勢いだけどそうじゃない。
何の事かというと現在ヨタヨタではあるけれど、なんと一人歩きが出来るようになったのだ!
フラフラだけど、一歩一歩進んでいる。感動だね!やっと、やっと自分の足で歩くことが出来るようになったのだ。
これであちこち自由に動き回ることができるね。ニヤリ。
さて、よちよち歩きの私の前には早速と走っていったメイドのサラさんが呼んだ家族がいる。
遠くから私が動くのを見てきゃあきゃあとサラさんと手を取り合って叫んでいるのはいつも美しい母さま。
そして父さまはというと、腕を組んで。うむうむと私を見ている。
皆の声援が重なって私に届いた。
「はい。いっちに、いっちに。」
「あぃ。いー、にー、いー、にっ。」
私の拙い掛け声に微笑みながらよちよち歩きの私を見て、母さまが目を輝かせている。もうキラキラだね。父さまもにまにまと緩んだ顔をしている。
「エスティアはあんよが上手ね。」
「まーま、あんよ、どーず」
「えぇとっても。エスティアもすぐにいっぱい歩けるようになるわ。そしたら、一緒にお庭で散歩しようね。」
「あぃ!てあ、がんある。」
てあというのはエスティアが発音でき無い私がどうにか表現しようとした結果だ。
母さまはにっこりと微笑まれ、ぎゅっと抱きしめられた。
そして見上げた私の頬にちゅっと軽いキスをくれる。えへへ。母さまと一緒にお散歩だね。
これからも精進して、しっかり歩けるようにならなければ。
そしてそれが出来るようになれば走ったりする訓練だ。そうスピードは大切なのだ。
「まぁまぁ、エスティアお嬢様。頑張りましょうね。」
サラさんが私を見て言った。
そして後ろからひょいと抱き上げられ、天井が近くなった。父さまの肩車!わーい。
「エスティアはパパとも一緒にデートしまちょうね。」
「ぱぱ。デート、しゅるっ。」
はーいと手を挙げた私を見てみんな笑顔だ。
「ママの方が先にお約束したからね!一緒に行きましょうね。」
「あぃ。ママいくっ!」
「かわいい。かわいすぎますエスティアお嬢様~」
今日も平和な毎日が続いている。
喜び過ぎてくねくねしているサラさんなんて見えませんとも。とうとうデレましたかサラさん。
むかしむかし、聖なる力に守られた国がありました。
ある時、魔王が現れ、魔族を率いて聖なる力を破って国を破壊しようと侵略を始めました。
聖なる国の王は、国を守るために力を求め、力に自信のあるものを集め始めました。
しかし、魔王の力は強大で誰も倒すことが出来ませんでした。
万策尽きた国王は大切に育ててきた姫の力を使って異世界の勇者を召喚することにしました。
多くの者が国の為に他の世界から誰とも分からぬ者を呼ぶなどと国王に進言しましたが聞き入れられませんでした。
魔王によってそこまで国は追い詰められていたのです。
姫の力で召喚に成功した国王は勇者に魔王を倒してほしいと願いました。
倒してくれれば相応の褒美も出そうと言いましたが、勇者はそんな褒美は要らないから元いた国に返してくれと願いました。
国王は魔王を倒した暁には必ず返そうと約束しました。
勇者はニホンというところから来たと言います。名をヒジリ(聖)といいました。
彼はこの国の兵たちにも敵わないくらい弱い力しか持ちませんでしたが、たちどころに強くなり国一番の強者になりました。
準備を整えた勇者は仲間とともに魔王退治に向かいます。数々の試練を乗り越え、とうとう魔王を倒すことができたのです。
聖なる力に守られた国に再び平和な時がもたらされたのです。
めでたし、めでたし。
ぱたりと本を閉じるとサラさんは私をにっこりと微笑んだ。
「いかがですか、エスティアお嬢様。とても素敵なお話ですね。」
「あぅ。きゃっ、きゃっ!」
綺麗な挿絵を見て喜びの声を上げる私を見てサラさんはとても満足そうだ。本を仕舞いながら、サラさんは色々と教えてくれた。
「この光の勇者さまは本当にいらしたそうですよ。ルイン王国という過去に存在したと言われている国のお話で、現在でいうと聖ハルジオン王国にあたります。ルイン王国というのは、過去失われた時代というのがあって、その頃の人族の国はこのルイン王国と言われる国だけだったそうです。聖なる力で守られた国ルインがなぜ滅んだのかは歴史にも残ってはいませんが、神の怒りに触れたのだというのが通説です。」
「ふぇっ!」
ギョッとしている私の頭を撫でて、神の怒りに触れるなんて怖いことは起こりませんから大丈夫ですよと慰めてくれる。
温かい手に撫でられて、気持ちがいい。猫とかってこんな気分なのかな。
しかし、滅びた国か。神の怒りに触れたってこれもよくある通説って感じだな。何をやったのだろうね。
このご本のお話は、確かによくある勇者の物語って感じでしたがいくつか気になることがあった。そう、召喚魔法!召喚魔法って存在するのか!聖なる力に守られた国というのは、不思議な力が働いていたのだろうか。
その力もまた謎だ。
それに、何よりも気がかりなことがある。
「平和になってめでたし、めでたし。」で終わっているこの物語、勇者はその後どうなったのかが描かれていない。
ちょっと気になるよね。
本来なら、「平和になり勇者は元の国に帰っていきました。」という終わり方になるはずなのだが、児童向けということで割愛されているのだろうか。
いいえ、子供向けの本という本は無いくらいもう分かっている。と言う事はこの終わり方なにやら作為的なものを感じるね。
もしかするとテンプレのように召喚はできても送還は出来なかったのではないだろうか。理由はいくつも考えられる。
「姫の力」というのが「召喚魔法」であったなら、「送還魔法」は持っていなかった、もしくは送還方法が元々ない。
あるいは送還は出来るけれど元の場所に戻せるか定かではないと言ったところかな。
下手したら召喚で命を使い果たして、召喚主が死んでしまったなんてこともあり得るかもしれない。
召喚魔法のイメージとしてはこの世界の外に繋いで対象を特定してよくある空間属性魔法「転移」を用いて移動させるという感じだが、送還魔法の場合は、対象を元いた世界を探した上で転移させなくてはならないよね。
その元いた世界というのは、特定することが困難なはず。
世界というのが1つであれば簡単だけど、数あるパラレルワールド、そして現在ある世界がどこにあたるのかなどは調べようがない。
どこでもいいので返してくれなんて人はいないからね。
召喚するなら、返すことも考えて印をつけておく事が必要だ。
しかし、手に入れた力を手放すことは人には難しい。そういう事なのではないだろうか。
今は想像でしかないのだが、もしこの世界でも今も同じような召喚がされていたらと思うとぞっとする。
おそらく、様々な本に残っている地球の足跡。これで納得というか。通りで知った名前が付けられているものが多いと感じたわけだ。
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さてそんな話はさておき、先程気が付いた事があるのだ。
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日本語訳とこの世界の言語を並べて、他の本と見比べて間違い探しをしている感じなのだが、少しずつ本を読んでいっている。
こちらの世界の言語も早く読めるようになりたいので日本語訳だけを見るわけにはいかないのだ。
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本の虫って言われそうだが、知識が増えるって素敵だね。あれ?アカシックレコードを通して読むってことは本ではない?まぁいいや。
――――…
「はじめの第一歩」これを聞くと思わず「だるまさんがころんだ」をしそうな勢いだけどそうじゃない。
何の事かというと現在ヨタヨタではあるけれど、なんと一人歩きが出来るようになったのだ!
フラフラだけど、一歩一歩進んでいる。感動だね!やっと、やっと自分の足で歩くことが出来るようになったのだ。
これであちこち自由に動き回ることができるね。ニヤリ。
さて、よちよち歩きの私の前には早速と走っていったメイドのサラさんが呼んだ家族がいる。
遠くから私が動くのを見てきゃあきゃあとサラさんと手を取り合って叫んでいるのはいつも美しい母さま。
そして父さまはというと、腕を組んで。うむうむと私を見ている。
皆の声援が重なって私に届いた。
「はい。いっちに、いっちに。」
「あぃ。いー、にー、いー、にっ。」
私の拙い掛け声に微笑みながらよちよち歩きの私を見て、母さまが目を輝かせている。もうキラキラだね。父さまもにまにまと緩んだ顔をしている。
「エスティアはあんよが上手ね。」
「まーま、あんよ、どーず」
「えぇとっても。エスティアもすぐにいっぱい歩けるようになるわ。そしたら、一緒にお庭で散歩しようね。」
「あぃ!てあ、がんある。」
てあというのはエスティアが発音でき無い私がどうにか表現しようとした結果だ。
母さまはにっこりと微笑まれ、ぎゅっと抱きしめられた。
そして見上げた私の頬にちゅっと軽いキスをくれる。えへへ。母さまと一緒にお散歩だね。
これからも精進して、しっかり歩けるようにならなければ。
そしてそれが出来るようになれば走ったりする訓練だ。そうスピードは大切なのだ。
「まぁまぁ、エスティアお嬢様。頑張りましょうね。」
サラさんが私を見て言った。
そして後ろからひょいと抱き上げられ、天井が近くなった。父さまの肩車!わーい。
「エスティアはパパとも一緒にデートしまちょうね。」
「ぱぱ。デート、しゅるっ。」
はーいと手を挙げた私を見てみんな笑顔だ。
「ママの方が先にお約束したからね!一緒に行きましょうね。」
「あぃ。ママいくっ!」
「かわいい。かわいすぎますエスティアお嬢様~」
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