8 / 12
石油王は抱かれたい!
【1】1枚の写真
しおりを挟む
きっかけは、1枚の写真だった。
大学のキャンパスで、誰かに笑いかけているオレの写真。視線はカメラを捉えておらず、明らかに隠し撮りされたものだ。
チビで華奢で女っぽい顔立ちのオレ──志貴野侑李の性的嗜好は同性……つまり、ゲイだ。
しかし、そんな外見をしているにも関わらず、オレは男に抱かれたいのではなく、抱きたいと思っていた。それで、学費を稼ぐのと性欲を満たすために、男性向けコスプレ風俗で『男の娘S攻め』キャストとして働いていた。
そのキャラ設定はオーナーが決めたものだったけれど、実際、オレの性に合っていてたみたいで、働き始めてから比較的すぐにナンバーワンの座を手に入れることができた。
オレが大学二年生のとき、そこに客としてやって来たのがリヤドだ。コスプレ風俗に石油王の格好をしてやって来たので、最初はリヤドのことを「コスプレ好きの変態」だとオレは思い込んでいたのだけど、石油王の格好はコスプレではなく、リヤドは本物の石油王だったのだ。
それ以降、オレの出勤枠は全てリヤドに買われた。そして、リヤドが母国に帰ることになったとき、オレはリヤドからプロポーズされた。
その時にはすっかりリヤドのことが好きになってしまっていたオレは、リヤドが帰国すると同時にコスプレ風俗店を辞めることにした。オレが大学を卒業したら、リヤドの国で結婚式を挙げることになっている。
それまでの間、オレたちは遠距離恋愛をすることになってしまった。
といっても、石油王にとっては飛行機での移動はタクシーにでも乗るような感覚なのだろう。想像していた以上に頻繁にリヤドは日本に来てくれるので、覚悟していたほど寂しくはなかった。
リヤドと付き合い始めてから3ヶ月。
今月はスケジュールが立て込んでいて、リヤドが日本に来れるのはこの一回だけになってしまったそうだ。そのかわり、今回はいつもより長く日本に滞在できるらしい。タイミング良く大学は春休みだったので、図らずもリヤドの滞在期間中はずっと一緒の時間を過ごせることになった。こんなに長く一緒に居られるのは付き合い始めてから初めてのことなので、オレは浮かれていた。
一昨日、リヤドが空港に着いたという連絡を貰うと、オレはすぐにリヤドが滞在するホテルに向かった。リヤドの滞在中は、一日中ホテルに籠ってセックスしていることが多い。
今回も、ほぼ二日間、リヤドの取ったホテルでセックスしまくった。
その時「日本で、恋人たちはどういったデートをするのだ?」という話になったので、今日は「普通のカップルがするようなデートをする」ことになったのだ。
確かに、よくよく考えてみたら、顔を合わせるたびオレたちはセックスしかしていないような気がする。まぁ、何回セックスしても全然飽きないし、身体が離れたらすぐにまた欲しくなってしまうからそれはやむを得ないことなんだけど。
ただ、せっかくの機会なので、たまにはいつもと違ったデートをするのもいいだろう。
ということで、オレたちは今日は水族館に行くことにした。
オレは一度家に帰って、気合を入れてデートの準備をした。もちろん、女装だ。ナチュラルメイクに見せかけた、お目々ぱっちりメイク。クリーム色のオフショルダーのカットソー。オーバーサイズのものをゆったりと着る。ボトムはチェックのミニスカートに、黒のニーハイソックスを合わせて絶対領域を演出した。鏡を見て、自分の仕上がり具合を確認する。うーん、今日もオレは可愛い。
待ち合わせをした駅でリヤドと合流したら、リヤドの視線がしばらく絶対領域に釘付けになっていた。リヤドはコスプレ風俗で、セーラー服を着ているオレのプロフィール写真を見て一目惚れしたそうだ。だから、こーゆーのが好きなんだろうな、と思って準備したんだけど。リヤドの“好き”はわかりやすくて、本当に良い。
リヤドはいつもの石油王スタイルだったので、まずは駅前のデパートで、全身コーディネートをした。石油王スタイルもオレは嫌いじゃないけど、普通は水族館には石油王は居ないからね。
店員さんに「あれがいいか。それともこっちか」と相談しながらリヤドを着飾らせると、イケメンに更に磨きがかかった。普段は着ない服装を着せるのも、なかなか新鮮味があって良い。今度、機会があったら、リヤドにもコスプレをさせて、シチュエーションプレイをしようとオレは心の中で決めた。
店員さんのオススメとオレの好みのコーディネートでばっちり決めたリヤドは、まるでモデルみたいな格好良さだった。リヤドは顔もスタイルも良いので、何を着せても似合う。男性モノの服はどれもサイズが合わないオレとは真逆で羨ましい。そんなリヤドに服を選ぶのはとても楽しかった。
オレはリヤドと腕を組んで繁華街の大通りを歩いた。この大通りは、休日は歩行者天国になる。そのくらい多くの人が訪れる場所だ。水族館はこの通りを抜けた先の商業施設の中にある。駅からは徒歩15分くらいだったと思う。
背が高くて褐色の肌をしたイケメンは目を引くのか、通り過ぎる人がチラチラとリヤドを振り返る。そして、隣を歩くオレの存在に気付いて納得の表情を浮かべたり、諦めたような顔をするのだ。そんな様子を見て、オレは優越感に浸った。オレも、見た目だけなら十分な美女だからな。大勢に自分の恋人を見せつけながら、オレはリヤドに腕を絡めたまま大通りを歩いた。
「リヤドって、あっちの国では普段何してるの?」
「そうだな……ユーリに会えないときは、この写真を見ながら自慰をしていることが多いな」
オレは想像の斜め上をいくリヤドの返事に、思わず吹き出しそうになった。
リヤドはスマホを操作すると一枚の写真をオレに見せてくれた。画面に写っていたのは、オレだった。
大学のキャンパスで、誰かに笑いかけているオレの写真。視線はカメラを捉えておらず、明らかに隠し撮りされたものだ。
チビで華奢で女っぽい顔立ちのオレ──志貴野侑李の性的嗜好は同性……つまり、ゲイだ。
しかし、そんな外見をしているにも関わらず、オレは男に抱かれたいのではなく、抱きたいと思っていた。それで、学費を稼ぐのと性欲を満たすために、男性向けコスプレ風俗で『男の娘S攻め』キャストとして働いていた。
そのキャラ設定はオーナーが決めたものだったけれど、実際、オレの性に合っていてたみたいで、働き始めてから比較的すぐにナンバーワンの座を手に入れることができた。
オレが大学二年生のとき、そこに客としてやって来たのがリヤドだ。コスプレ風俗に石油王の格好をしてやって来たので、最初はリヤドのことを「コスプレ好きの変態」だとオレは思い込んでいたのだけど、石油王の格好はコスプレではなく、リヤドは本物の石油王だったのだ。
それ以降、オレの出勤枠は全てリヤドに買われた。そして、リヤドが母国に帰ることになったとき、オレはリヤドからプロポーズされた。
その時にはすっかりリヤドのことが好きになってしまっていたオレは、リヤドが帰国すると同時にコスプレ風俗店を辞めることにした。オレが大学を卒業したら、リヤドの国で結婚式を挙げることになっている。
それまでの間、オレたちは遠距離恋愛をすることになってしまった。
といっても、石油王にとっては飛行機での移動はタクシーにでも乗るような感覚なのだろう。想像していた以上に頻繁にリヤドは日本に来てくれるので、覚悟していたほど寂しくはなかった。
リヤドと付き合い始めてから3ヶ月。
今月はスケジュールが立て込んでいて、リヤドが日本に来れるのはこの一回だけになってしまったそうだ。そのかわり、今回はいつもより長く日本に滞在できるらしい。タイミング良く大学は春休みだったので、図らずもリヤドの滞在期間中はずっと一緒の時間を過ごせることになった。こんなに長く一緒に居られるのは付き合い始めてから初めてのことなので、オレは浮かれていた。
一昨日、リヤドが空港に着いたという連絡を貰うと、オレはすぐにリヤドが滞在するホテルに向かった。リヤドの滞在中は、一日中ホテルに籠ってセックスしていることが多い。
今回も、ほぼ二日間、リヤドの取ったホテルでセックスしまくった。
その時「日本で、恋人たちはどういったデートをするのだ?」という話になったので、今日は「普通のカップルがするようなデートをする」ことになったのだ。
確かに、よくよく考えてみたら、顔を合わせるたびオレたちはセックスしかしていないような気がする。まぁ、何回セックスしても全然飽きないし、身体が離れたらすぐにまた欲しくなってしまうからそれはやむを得ないことなんだけど。
ただ、せっかくの機会なので、たまにはいつもと違ったデートをするのもいいだろう。
ということで、オレたちは今日は水族館に行くことにした。
オレは一度家に帰って、気合を入れてデートの準備をした。もちろん、女装だ。ナチュラルメイクに見せかけた、お目々ぱっちりメイク。クリーム色のオフショルダーのカットソー。オーバーサイズのものをゆったりと着る。ボトムはチェックのミニスカートに、黒のニーハイソックスを合わせて絶対領域を演出した。鏡を見て、自分の仕上がり具合を確認する。うーん、今日もオレは可愛い。
待ち合わせをした駅でリヤドと合流したら、リヤドの視線がしばらく絶対領域に釘付けになっていた。リヤドはコスプレ風俗で、セーラー服を着ているオレのプロフィール写真を見て一目惚れしたそうだ。だから、こーゆーのが好きなんだろうな、と思って準備したんだけど。リヤドの“好き”はわかりやすくて、本当に良い。
リヤドはいつもの石油王スタイルだったので、まずは駅前のデパートで、全身コーディネートをした。石油王スタイルもオレは嫌いじゃないけど、普通は水族館には石油王は居ないからね。
店員さんに「あれがいいか。それともこっちか」と相談しながらリヤドを着飾らせると、イケメンに更に磨きがかかった。普段は着ない服装を着せるのも、なかなか新鮮味があって良い。今度、機会があったら、リヤドにもコスプレをさせて、シチュエーションプレイをしようとオレは心の中で決めた。
店員さんのオススメとオレの好みのコーディネートでばっちり決めたリヤドは、まるでモデルみたいな格好良さだった。リヤドは顔もスタイルも良いので、何を着せても似合う。男性モノの服はどれもサイズが合わないオレとは真逆で羨ましい。そんなリヤドに服を選ぶのはとても楽しかった。
オレはリヤドと腕を組んで繁華街の大通りを歩いた。この大通りは、休日は歩行者天国になる。そのくらい多くの人が訪れる場所だ。水族館はこの通りを抜けた先の商業施設の中にある。駅からは徒歩15分くらいだったと思う。
背が高くて褐色の肌をしたイケメンは目を引くのか、通り過ぎる人がチラチラとリヤドを振り返る。そして、隣を歩くオレの存在に気付いて納得の表情を浮かべたり、諦めたような顔をするのだ。そんな様子を見て、オレは優越感に浸った。オレも、見た目だけなら十分な美女だからな。大勢に自分の恋人を見せつけながら、オレはリヤドに腕を絡めたまま大通りを歩いた。
「リヤドって、あっちの国では普段何してるの?」
「そうだな……ユーリに会えないときは、この写真を見ながら自慰をしていることが多いな」
オレは想像の斜め上をいくリヤドの返事に、思わず吹き出しそうになった。
リヤドはスマホを操作すると一枚の写真をオレに見せてくれた。画面に写っていたのは、オレだった。
5
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる