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12話 忘れられない人
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「それじゃあ、さようなら」
最後の園児に手を振って見送る。
保護者と一緒に帰っていく姿が曲がり角に消えると、オレ達は戸締りをした。
今、オレは保育園ではるき先生と二人っきりだ。
本来ならもう一人、遅番の先生が居たのだけれど、急な家族の体調不良で帰ってしまったのだ。
それで、オレが替わりに「絶対、最後まで園に残る」とダダを捏ねて……いや、かなりゴリ押しして、残らせてもらった。
「実習、お疲れ様。しんたろうくんはいい先生になれると思うよ。だから、これからも勉強、頑張ってね」
職員室まで戻ってくると、そう言ってはるき先生は実習日誌を渡してくれた。
「後はやっておくから、もう帰っていいよ。遅くまでありがとう」
「……オレは、先生の恋人になりたいです」
オレは差し出された日誌を受け取らず、先生の手首を掴んだ。ばさりと日誌が床に落ちる。
「……ごめんね」
はるき先生はオレから視線を逸らした。
「オレが男だからダメ……ってわけじゃないんでしょう? だって、先生が好きなのは男の人だから」
「気付いていたのか……いや、気付いていたから声を掛けてきたのかな」
「違う、そうじゃない。ずっと先生が好きなんだ」
あの日、レストランでキレイな顔をした高校生から聞いた話は全部覚えてる。
初めて好きになった人の話、いつも片想いのまま諦めてしまうという話、恋人が居たことがないという話、恋人に思い切り甘えてみたいという話。
あの時、愛に飢えていた彼を抱きしめたいと思った。とびきりの愛を与えたいと思った。だけど、先の短い自分にできることは何もないと手を引いてしまった。年の差を理由にして、自分の気持ちに蓋をした。あの時のことは、ずっと後悔していた。
本来なら、オレの気持ちも後悔も、前の人生が終わったときに消えてしまうハズだった。
だけど、何故かオレは生まれ変わってしまった。だけど生まれ変わっても、この気持ちは消えなかった。
「……忘れられない人が居るんだ」
絶対逃がさないと言わんばかりに、しっかりと手首を掴んだまま離さないオレに、先生は溜息を吐いて言った。
最後の園児に手を振って見送る。
保護者と一緒に帰っていく姿が曲がり角に消えると、オレ達は戸締りをした。
今、オレは保育園ではるき先生と二人っきりだ。
本来ならもう一人、遅番の先生が居たのだけれど、急な家族の体調不良で帰ってしまったのだ。
それで、オレが替わりに「絶対、最後まで園に残る」とダダを捏ねて……いや、かなりゴリ押しして、残らせてもらった。
「実習、お疲れ様。しんたろうくんはいい先生になれると思うよ。だから、これからも勉強、頑張ってね」
職員室まで戻ってくると、そう言ってはるき先生は実習日誌を渡してくれた。
「後はやっておくから、もう帰っていいよ。遅くまでありがとう」
「……オレは、先生の恋人になりたいです」
オレは差し出された日誌を受け取らず、先生の手首を掴んだ。ばさりと日誌が床に落ちる。
「……ごめんね」
はるき先生はオレから視線を逸らした。
「オレが男だからダメ……ってわけじゃないんでしょう? だって、先生が好きなのは男の人だから」
「気付いていたのか……いや、気付いていたから声を掛けてきたのかな」
「違う、そうじゃない。ずっと先生が好きなんだ」
あの日、レストランでキレイな顔をした高校生から聞いた話は全部覚えてる。
初めて好きになった人の話、いつも片想いのまま諦めてしまうという話、恋人が居たことがないという話、恋人に思い切り甘えてみたいという話。
あの時、愛に飢えていた彼を抱きしめたいと思った。とびきりの愛を与えたいと思った。だけど、先の短い自分にできることは何もないと手を引いてしまった。年の差を理由にして、自分の気持ちに蓋をした。あの時のことは、ずっと後悔していた。
本来なら、オレの気持ちも後悔も、前の人生が終わったときに消えてしまうハズだった。
だけど、何故かオレは生まれ変わってしまった。だけど生まれ変わっても、この気持ちは消えなかった。
「……忘れられない人が居るんだ」
絶対逃がさないと言わんばかりに、しっかりと手首を掴んだまま離さないオレに、先生は溜息を吐いて言った。
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