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20話 薬の残骸*

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 結局、オレはベッドの上に戻ってきて、注文した玩具を片っ端から自分に使った。
 発情期ヒートなんてものは、とにかくイけば収まるだろうと思っていたけれど、その考えは見事に裏切られた。イってもイっても、身体の疼きは収まんねぇどころか、悪化している気すらする。だけど、疼きを治めるには、イくしかない。イッた瞬間だけは確かにスッキリするのだから。

 気持ちがイイとかヨくないとか、もう、そんなんじゃねぇ。とにかくイきたい。イければなんでもいい。そんな気持ちで、玩具で身体を無理矢理昂らせては射精す。


 これで、『発情期ヒートは軽い』だぁ!? マジでふざけてやがる。
 しかも、まだ初日だ。オメガの発情期ヒートは、普通は一週間続くらしい。こんな状態で一週間も過ごすのかよ!! 気が狂うわ!!
 いや、琴宮の場合、発情期ヒートは二、三日程度だと言っていた。いやいやいやいや。こんな状態が最低でも二日は続くとか、有り得ねぇ!!

 そういえば、発情期ヒートの過ごし方について、琴宮は何か言っていたような気がする。
 オレは回らない頭で考えた。ええと、確か、発情期ヒートの過ごし方は……『道具を使うことはなく、薬を飲めばすぐに収まる』と言っていた。そうだ、薬だ!!

 ……薬……?

 そのキーワードが引っ掛かった。最近、見た気がする。大量に飲み干された薬の残骸を。
 そう、あの時だ。オレが琴宮として、この部屋で目覚めたときだ。あの時、ローテーブルに置いてあった、あの薬は何だ!?
 一生懸命、特徴を思い出す。名前なんか覚えちゃいねぇ。ただ……そうだ、有名な国内製薬メーカーのロゴが入っていた。

「もしかして、あの時に見た薬って……」

 待て待て。そんなハズはねぇ。
 だけど、生活費すらまともに稼げなかった琴宮が大量に所持している可能性が高いもの。そして、オレが目にしたことがないもの。そう考えると、思い当たる答えはたった一つだけだ。

 やはり、あれがオメガ用の抑制剤だったのか……!?

 あの時、薬の入っていたシートは全て空になっていた。多分、琴宮が一気に全部飲んだんだろう。隣に置いてあったワインで。

「……なんで全部飲んじまったんだよ、あの馬鹿っ!! オレが飲む分を残しとけよっ!!」

 この発情期ヒートを、薬ナシでいったいどうしろってんだよ!! 
 オレは絶望した。どれだけ琴宮を罵っても、発情期ヒートは収まらないし、抑制剤は手に入らない。



 もうやだ。イきたくねぇ……でも、イかなきゃ収まらねぇ。
 泣きながら、後ろに道具を突っ込む。最初のほうに出した精液はすでに乾いていて、カピカピして気持ちが悪い。でも、イくしかない。

 ああ、もう気が狂いそうだ。

「相神ぃ……」

 相神のことを考えながらスると、少し身体が楽になる気がする。
 まさか、泣きながら相神の名前を呼んでオナニーをする日がオレに来ることになるなど、思ってもみなかった。

「ぅぐ……っ、あ、あ゛あ゛あ゛……!!」

 オレは絶望に泣きながら、ただ精を放ったのだった。

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