9 / 39
9話 お茶引きオメガ
しおりを挟む
「客がこねー……」
いや、来なくていいんだけど。
オレが琴宮を売ったのが木曜日。琴宮になっていると気付いたのが土曜日で、今日は月曜日だ。
この週末は、いつ客がやってくるかとずっと身構えていたが、ついぞこの部屋を訪れるものは誰もいなかった。完全な肩透かしだ。
土曜日こそは相神がやってきたけど、日曜日に至っては相神すら来なかった。とんだ待ちぼうけ、放置プレイもいいところだ。いや、別にオレだってアイツのことなんて待っちゃねーけど。
オレは琴宮をそれなりに高い金額で売ったはずだ。いや、間違いなく高値で売った。しかも、相神はオレが提示した金額にさらに上乗せして支払ってくれた。
週末だから、手っ取り早く費用を回収するために、朝から晩まで休みなく客を取らされるのか、それとも大人数で乱交でもさせられるのか……なんて思っていたけれど、全くそんな気配はなかった。いったい、相神はどういうつもりなんだ?
誰も部屋を訪れる者が居らず、暇を持て余した上になんだか気も抜けてしまったオレが週末にしたことは、この部屋の設備のチェックだった。
まず、オレが最初に調べたのはドアだった。部屋の入口には、自動精算機が設置されていて、外に出るにはチェックアウトをする必要があった。なんてことない、普通のラブホテルと同じ仕様だ。自動精算機に提示された金さえ入れることができれば、室内のドアは自動的に開錠される。
だが、オレは現金もカードも持っていない。試しにいくら払えば出れるのか確認したら、恐らく設定できるであろう最高額が提示された。マジかよ、ふざけてる。
相神が出て行ったときは、支払いなんてしてた様子はなかったので、開錠用コードか何を使ったのだろう。
室内にある衣類は、やはりバスローブだけだった。履物も、使い捨てスリッパのみだ。
ここから逃げ出すには、チェックアウトをする手段と、外に出るための服装を手に入れる必要がある。しかし、上手く逃げたとしても、次は組から追手が差し向けられることになるだろう。八剱組の者は、脱走者を粘り強く地の果てまで追いかけてくると思う。なんてったって、あいつらは自慢の組員たちだからな! いや、この場合、追いかけられるのはオレだからあんまりいいことねぇな。
万が一、奇跡的に組から見逃してもらえたとしても、その後の生活も問題だ。オレの身体は今はオメガだ。アルファであれば、どんな仕事でも引く手数多だろうが、オメガというだけでまともな仕事に就くことができる気がしねぇ。
そもそも、琴宮だって、まっとうな仕事に就けさえすれば生活苦になんて陥ることもなく、オレのところで金など借りることもなかったハズだ。
クソ!! ここから逃げ出すことよりも、逃げた後にどうするかのほうが問題がデカい気がする。とりあえず、逃げるのは一度保留にした。
というか、そもそもオレが逃げ出そう思ったのはオメガとして客を取らされるのが嫌なだけであって、客が来ないのであれば逃げる必要性はない。むしろ、むやみにここを出ていくよりも、衣食住が保証されている今の状況のほうが待遇は良いかもしれない。このまま客が来ないのであれば。
室内は、大きく分けてベッドスペースとリビングスペース。そのどちらにも、大型の壁掛けテレビが設置されていた。そういえば、浴室内にもテレビがあったような気がする。どんだけ客にテレビを見せたいんだよ。
それ以上は調べるようなところもなく、オレの室内探索はこれで終わってしまった。
いや、来なくていいんだけど。
オレが琴宮を売ったのが木曜日。琴宮になっていると気付いたのが土曜日で、今日は月曜日だ。
この週末は、いつ客がやってくるかとずっと身構えていたが、ついぞこの部屋を訪れるものは誰もいなかった。完全な肩透かしだ。
土曜日こそは相神がやってきたけど、日曜日に至っては相神すら来なかった。とんだ待ちぼうけ、放置プレイもいいところだ。いや、別にオレだってアイツのことなんて待っちゃねーけど。
オレは琴宮をそれなりに高い金額で売ったはずだ。いや、間違いなく高値で売った。しかも、相神はオレが提示した金額にさらに上乗せして支払ってくれた。
週末だから、手っ取り早く費用を回収するために、朝から晩まで休みなく客を取らされるのか、それとも大人数で乱交でもさせられるのか……なんて思っていたけれど、全くそんな気配はなかった。いったい、相神はどういうつもりなんだ?
誰も部屋を訪れる者が居らず、暇を持て余した上になんだか気も抜けてしまったオレが週末にしたことは、この部屋の設備のチェックだった。
まず、オレが最初に調べたのはドアだった。部屋の入口には、自動精算機が設置されていて、外に出るにはチェックアウトをする必要があった。なんてことない、普通のラブホテルと同じ仕様だ。自動精算機に提示された金さえ入れることができれば、室内のドアは自動的に開錠される。
だが、オレは現金もカードも持っていない。試しにいくら払えば出れるのか確認したら、恐らく設定できるであろう最高額が提示された。マジかよ、ふざけてる。
相神が出て行ったときは、支払いなんてしてた様子はなかったので、開錠用コードか何を使ったのだろう。
室内にある衣類は、やはりバスローブだけだった。履物も、使い捨てスリッパのみだ。
ここから逃げ出すには、チェックアウトをする手段と、外に出るための服装を手に入れる必要がある。しかし、上手く逃げたとしても、次は組から追手が差し向けられることになるだろう。八剱組の者は、脱走者を粘り強く地の果てまで追いかけてくると思う。なんてったって、あいつらは自慢の組員たちだからな! いや、この場合、追いかけられるのはオレだからあんまりいいことねぇな。
万が一、奇跡的に組から見逃してもらえたとしても、その後の生活も問題だ。オレの身体は今はオメガだ。アルファであれば、どんな仕事でも引く手数多だろうが、オメガというだけでまともな仕事に就くことができる気がしねぇ。
そもそも、琴宮だって、まっとうな仕事に就けさえすれば生活苦になんて陥ることもなく、オレのところで金など借りることもなかったハズだ。
クソ!! ここから逃げ出すことよりも、逃げた後にどうするかのほうが問題がデカい気がする。とりあえず、逃げるのは一度保留にした。
というか、そもそもオレが逃げ出そう思ったのはオメガとして客を取らされるのが嫌なだけであって、客が来ないのであれば逃げる必要性はない。むしろ、むやみにここを出ていくよりも、衣食住が保証されている今の状況のほうが待遇は良いかもしれない。このまま客が来ないのであれば。
室内は、大きく分けてベッドスペースとリビングスペース。そのどちらにも、大型の壁掛けテレビが設置されていた。そういえば、浴室内にもテレビがあったような気がする。どんだけ客にテレビを見せたいんだよ。
それ以上は調べるようなところもなく、オレの室内探索はこれで終わってしまった。
2
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる