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5.悪魔の囁き

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「ミオは女の身体にもなれるのかっ?」
「いや。なれねーけど」

 あ。そーですか。
 一瞬でも期待した俺が馬鹿だった。

「だけどね。俺、淫魔だし。セックスしないと死んじゃうし」
「それならなにも俺に突っ込まなくても……そうだ! 俺がミオに突っ込んだっていいのではないだろうか?」

 俺はこれでも吸血鬼だ。男との経験はないが、女性との経験は、それなりにある。
 吸血鬼は血をいただくかわりに、女性に最高の一夜を提供するものだからな。
 男を抱く趣味はないけれど、こんな凶器を尻に突っ込まれるくらいなら、俺がミオを抱いた方がいくぶんかはマシな気がする。

「俺は淫魔だから、お尻を使おうと思えば使えなくもないと思うけど、まったく興味がないし……それに、俺が処女じゃなくなったら、ポーシャはもうこの美味しい血は飲めなくなっちゃうってことなんだよねー」
「あっ……!!」

 ミオに言われてようやく気付いた。
 確かに、同じ相手から血を吸うのであれば、絶対に処女のときのほうが美味しい。新鮮さが全然違うのだ。

「だから、ポーシャのお尻に俺のチンコを突っ込ませて。そしたら、俺は一生処女のままでいてあげるよ」
「う、うぐ……」

 処女というのは、この場合、お尻が未使用か使用済みかということなわけだ。
 それなら、俺がミオに突っ込んでしまったら、あの極上の血は二度と飲めなくなってしまう訳で……
 先程の味を思い出しただけで、ゴクリと喉が鳴った。

「ほ、欲しければ勝手に奪えばいいだろう? 契約だってあるんだし……」
「うーん、契約を使って無理矢理身体を繋げることもできなくはないんだけど……」

 ミオが俺の上で身体を倒して、伸し掛かってくる。

「合意のほうが、美味しいんだよね。精気」

 ちゅっちゅっと、頬に額にキスが落とされる。
 擽ったさに身を捩ると、顔を捕らえられた。そして唇と唇が重なる。
 合わさった唇から舌が入り込んで来て、口の中を撫でられると、とろりと身体から力が抜けた。
 ミオが指先で俺の乳首を優しく撫でる。
 そんなところ触られても何も感じない……と思っていたのに、指先で摘まれる度に、鼻から甘えたような息が抜けていく。

「ね。とびきり気持ち良くしてあげる……だから、ポーシャのほうから俺を受け入れてよ」

 これは悪魔の囁きだ。
 わかっているのだけど、その魅力的な言葉に心がグラグラと揺れる。

「セックスしながら、俺の血を飲んでみたいとは思わない? きっと、すごく美味しくて……気持ちいいよ?」

 ああ、想像するだけで口の中に涎が溜まってくる。飲み込んでも飲み込んでも、次から次へと溢れてしまう。欲しい。欲しい、欲しい。ミオの血が欲しい。

「だから、俺のことを欲しいって言って」
「あ……う……」
「ポーシャが俺を求めてくれたら、これから先も、ずっとずっと俺の血を吸わせてあげる」

 優しい刺激は気持ちいいのだけれど、腰回りにもどかしさがどんどん蓄積されていく。それをどうにかしたくて、俺は下半身をミオに擦り付けてしまう。
 ミオの血が飲みたい。気持ち良くなりたい。めくるめく快楽の中で、あの極上の血を飲んでみたい……

「ね、ポーシャ。俺を欲しがってよ」

 至近距離で、ミオが囁く。
 悪魔に魅入られた俺に、逃れる術はなかった。

「……ミオが……欲しい」
「いいよ、全部あげる」

 ミオが見せたのは、まるで天使のような、悪魔の笑顔だった。

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