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11.依存性*

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 翌朝、目覚めたときには、寝室にジルの姿はなかった。
 俺の身体に残されたのは、無数の噛み痕と……


「くっ……はぁっ……」

 今日も俺は尻の穴に自分の指を突っ込む。
 ジルの指使いを思い出しながら、手を動かす。あの日に使われたものと似たような匂いがする香油も探し出した。だけど、自分でどんなにそこを弄っても満たされない……

 まったく、あいつはとんでもない置き土産をしてくれたものだ。
 俺に残されたのは、噛み痕だけじゃなかった。夜になると疼く身体を俺は持て余す。いや、身体というか……尻が寂しくてしかたがない。
 大きくて熱いものでこの場所を満たして欲しい。
 そう思って色々試したけれど、俺は身体が求める刺激をなかなか見つけることができずにいた。

 何だ? 何が違うんだ?

 必死になって、あの日ジルが俺にしたことを思い出す。
 そういえば、あのとき「依存性のある」ものを使うと言っていたような気がする。
 きっとそれの所為だ。あの香油の所為で、俺の身体がおかしくなってしまったんだ。
 最初に飲まされた筋肉弛緩剤はジルが作ったものだと言っていた。ということは、あの香油もジルが作ったものである可能性が高い。

 よし! ジルを殺そう。そして、あの香油の存在をこの世から消そう。
 そしたら、この疼きも忘れられるはず……

 そう気付いた俺は、その日の夜、王城へと向かった。





「やぁっと夜這いに来てくれた……! ロイク、会いたかったよー!!」

 皇帝の寝室に忍び込んだ俺は、あっさりとジルに捕えられ、ベッドに押し倒されてしまった。
 持っていたはずの短剣はいつの間にか俺の手から離れ、遠くに投げ捨てられている。


 ジルと皇帝のベッドで一晩を過ごしたあの日からちょうど一週間後、帝国で革命が起こった。
 市民たちが暴動を起こし、皇帝を討ったのだ。
 その先導者は、俺のよく見知った男……ジルだった。
 帝国の英雄となった彼は、新しい皇帝の座についた。

「……夜這いなんかじゃない。死ね」

 そう言ってみたものの、俺にはもうジルを殺すための武器がない。

「えー? ちなみに、今日ここに来たのは誰かに依頼されたから?」
「それは……」

 上から顔を覗きこまれて、視線が泳ぐ。

「つまり今日はロイクが自分の意思で俺に会いに来てくれたってことだよね」
「うっ……」

 そうだ。
 帝国の英雄の暗殺依頼なんて、俺は受けていない。
 しかも、ここに来るまでに出会った不審者は俺が全員始末してやった。
 別に、俺がこいつを殺したって報酬が得られるわけじゃない。だから、誰かがジルを討てば、俺の目的は達成されるというのに……

「そっ、それは、おまえが俺の尻に変なものを使うから……」
「変なもの?」

 なんだろー、と首を傾げられた。

「だっ、だから……あの日、依存性のある香油を俺に使っただろ!」
「えー……?」

 本気で心当たりがないのか、しばらく考える素振りを見せた後、「ああっ!」っとジルは声を上げた。

「あれはただの保湿用の香油だよ。あ、前皇帝への献上品の中から拝借したから、ただの……っていうか、結構イイ香油? まぁ、俺はお金を払っていないから、タダといえばタダなんだけどーって、そんなことはどうでもいいか」
「は? それじゃあ、依存性ってのは……」
「うん、香油のことじゃなくて、俺のチンポのことだねっ!」
「はぁっ!?」

 俺の尻に突っ込まれたのは前皇帝が使うはずだったすごい高級品で、依存性があったのは……なんだって!?

「つまり、ロイクは俺のチンポの虜になっちゃったんだね。それならそうと、早く言ってくれればすぐにでも突っ込んであげたのに……」
「はああぁあぁぁ……!?」

 ジルは何を言っているんだ。まったく理解が追い付かない。

「今日は朝までいっぱい愛し合おうね」
「ちっ、違う!! そ、そうだ。俺は仕返しをしに来ただけだっ! 俺を歯形だらけにしやがって……」
「あー……前のはもう薄くなっちゃってるね。ってことで、つけなおそっか」
「おいっ!!」

 どんな早業なのか、いつの間にか俺は服を引っぺがされて全裸になっていた。
 この状況は……既視感デジャヴを感じて俺は頬をひきつらせた。

「いっぱい噛んで愛してあげる。だから、ロイクもいっぱい歯形をつけて愛してくれていーよ」
「んああ!? あぁー────────……っ!!!!」


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