見た目詐欺アルファの優しい檻～会社の先輩とアプリでマッチングしたらいつの間にかがっつり外堀埋められて囲われていました

本編

１６話 パジャマとパンツ*

　金曜日の夜、オレは誰もいないマンションに帰った。礼二さんはこの週末、出張で居ない。
　オレの方が早く仕事が終わることが多いから、帰ってきても誰も居ないなんてことはよくあるはずなのに、このあと礼二さんがこのマンションに帰ってこないと思うだけで、なんか心が落ち着かない。

　玄関に一番近い場所にあるのが礼二さんの部屋だ。
　結婚してからは、二人でリビングで過ごすか寝室で一緒に寝るかなので、礼二さんは普段はこの部屋には荷物を取りに来る以外で入ることがない。……オレが起きているときは。

　だけど、オレが寝たあと礼二さんが時々寝室を出ていくことがあるのを知っている。
　礼二さんがベッドを降りる気配がして、目が覚めて気づいたんだ。
　ベッドを抜け出した礼二さんは、多分、この部屋に居るんだと思う。そして戻ってきたときに、礼二さんのフェロモンの匂いがちょっと濃くなって……その匂いは、この部屋の中からも漏れているから。

　オレは部屋のドアに触れた。多分、この家の中で礼二さんの匂いが一番濃いのはこの部屋だ。だけどオレはこの部屋にだけは入ったことがない。礼二さんには「入りたくなったらいつでも入ってもいいよ」とは言われていたけれど、本人が不在のときに私室に入るのはやっぱり躊躇われた。オレはドアの前で溜息をつくと、その部屋の前を通り過ぎた。

　自分一人だけのために食事を作る気になれず、とりあえずコンビニ弁当を買って来たけれど、今は何かを食べたい気分じゃなかった。買ってきたものをコンビニの袋ごと冷蔵庫に突っ込んで、オレは風呂場へ向かった。
　シャワーを浴びてさっさと寝てしまおうと思ったのだけど、脱衣所の洗濯カゴの中に、今朝、礼二さんが脱いだパジャマが入ってるのが目についた。オレは引き寄せられるように、それを手に取る。

「いい匂い……」

　鼻にパジャマを押し当てて匂いを嗅いだら、我慢できなくなってしまった。
　カゴの中を漁って礼二さんのパンツも見つけ出すと、オレは寝室に駆け込んだ。

　着ているものを全部脱いで、ベッドで礼二さんが寝ている方に転がる。礼二さんの匂いに包まれると、身体がどんどん昂ってくる。

「んっ、ふぁっ……礼二さん……」

　パンツの匂いを嗅ぎながら、オレは礼二さんのパジャマに自分のペニスを擦り付けた。礼二さんと一緒に暮らし始めてから自慰オナニーをするタイミングを失っていたので、オレのペニスはちょっと刺激を与えただけですぐに精を放った。だけど、いつもなら一度出せば熱はすぐに収まるのに、今日は全然収まりそうにない。
　オレは礼二さんとのセックスを思い出しながら、後ろに指を這わせた。ぐちゅり、と濡れた感覚が指先に伝わってくる。あの日、礼二さんを受け入れた場所は、あの昂りを欲するかのように、すでに柔らかくなっていた。

「んっ、欲しい……礼二さん、欲しいよぉっ……」

　ぬちゅ、ゆちゅと音を立てながらオレはそこに指を突っ込む。礼二さんのことを思い出しながらできるだけ奥まで刺激しようとするけれど、自分の指じゃ全然届かない。こんな刺激じゃ物足りない。礼二さんのが欲しい。一番奥の奥まで犯されたい。溢れちゃうくらいいっぱい種付けされて、それを掻き出して、また注がれて……ずっと礼二さんだけを感じていたい。何もかも忘れて一つになりたい。

「礼二さん……寂しいよぉ……」

　礼二さんとキスしたい。そう思ったオレは、目の前のパンツに齧りついた。口の中に、礼二さんのフェロモンの残り香が広がる。それだけのことで、オレは後ろをきゅうきゅうと締め付けながら、また精を放った。
　自分のザーメンでべとべとに汚した礼二さんのパジャマにペニスを擦り付けて、礼二さんを思い出しながら後ろに指を突っ込んで、礼二さんのパンツに噛みついて。そしてオレは力尽きて眠るまで、一人で身体を慰め続けたのだった。