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Side-2:最悪の敵

あの日の約束って何だっけ

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『気付いてた……そうだよ、君がそう言う人間だって、分かってた……だから僕は、それでも僕は、むしろだからこそ僕はっ!!』

「うん、そう———私もっ!」


『君のことが———、』
「ケイのことが……っ!」


「『好きだった!!!!』」


「ほらやっぱり!!!! 好きなんじゃん、全然———振られてなんてなかったよ、私!」

『君を振るわけないだろう、でも……それでも僕は、復讐してみせるって決めたんだ……!

 君は好きだ、君と一緒にいたい、君と一緒にずっといたい———だけど僕は、復讐をしなければならないんだよ!!』

「そんなことない!……そんなケイなんて、やっぱり似合わない!

 おかしいよ、やめようよ、こんなこと!」




 瞬間———ヴェンデッタ・シンは急停止し、その周りをレイルダンジュ12基が一瞬にして覆う。

 そして、ヴェンデッタが構えたのは———Cキャノン2丁だった。


『———そうだ、君が好きだ。僕は君のことが、好きで好きでたまらないんだ、ずっとそうだった、旅してる時だって、片時も忘れたことはなかった!


 ……だからこそ、僕は君を撃って、殺して、もう後戻りなんて効かなくするんだ。

 …………君を、撃つんだよ』

 照準は、確実にこちらに傾けられている。
 参ったなぁ、本当に———撃つ気だ。


『……避けなくて、いいのか』

「いいよ?………………本当に、そっちに進む気があるんなら」


『…………死ぬん、だよ』

「いいよ? 撃つなら撃っちゃえばいい。……めんどくさい……んでしょ?」


『…………君は僕を———説得しに来たんでしょ』

「いいよ?……踏ん切りをつけてくれるんだったら、私は死んでも……いいかなって」

 ケイは、クーデターが起こった時、誰も殺したくないからってわがままを貫き通したって———そんな話まで聞いたっけな。

 だから……こそ。
 

「ケイはね、ホントは優しいんだよ。この前だって、みんなを———私たちを殺させたくないから少し厳しく当たったってだけ。

 それに、誰も殺したくないからって……だからケイは、頑張ってたんだよね?」

『……喋るな…………っ』

「だから私はね、そんな優しいケイに———自分を見失ってほしくないな、って。

 そのためだったら私、死んだって———」

『………………ダメだ』

「え?」

『……ダメ、なんだ。……なんでなんだ、なんでそんな———、どうしてそこまで……』

「なんで?……だって、私はケイのそんなところが好きだからね!

 なんかさ、ほんっと……どこまでも優しくって、アホみたいにいっつも善意で動きまくって……

 すごいと思うし、だから好かれるんだよ、ケイは。だから、その自分を———自分のいいところを、大切にしてほしいって、私は思うからっ!」

『…………いい、だろ…………もう、僕にそんな価値はないんだ……守れなかった、トゥルースを……僕のをこの手で守れなかった……!

 腹いせで———人を殺そうとした、君にまで……銃を向けた!

 殺そうとしたんだ、全部、全部、何もかも!!!!……だから今、僕たちはここにいるんだよ!!!!

 もう、僕には無理なんだよ……何も、残っちゃいな———』



「もう…………もういいって、それはこっちのセリフじゃーーーーっ!

 何も残ってない……って、いるでしょ! いる! いるよ、ここに!

 ケイの彼女! 将来のお嫁さん!……違うの?! 私は、そんなに大事なものじゃなかったの?!」


『大事な…………『もの』じゃない、大事な……『人』で———』

「はいそういうところ! ケイの優しいところ!!……わざわざ言い直すっての、もうなんか優しさの塊だから!! 自覚してよケイ!!!!!!!!」

『…………っ』

「まだ……まだ戻れるんだよ、ケイは……ケイはあのの中で何を学んだの?」

『…………僕、らしく……胸を張って、生きること』

「そうでしょ!!……ほら、その通りにできるじゃん、まだ!

 ケイらしく———胸を張って生きていればいいんだよ!……他にもあるはずなんだよ、旅で学んだこと、出会った人々のこと、別れた人々のこと、経験してきたたくさんのこと!

 私はまだ———それを聞いてない!
 それに……まだ、ケイにから!


 だから———だから、もう一度、戻ってきて、ケイ!

 まだやり直せるか———」


 そう口にしようとした瞬間、私はレーダーに映り込む数十機のサイドツーの大群に気がついた。


 ……いつの間に入り込まれているのか———それを気にし始めた時、既にハイパーゾーン……雲の壁は、その姿を消していた。

「待って、ケイ……ああっ!」

 途端———直下より響いた、数十発もの銃声音。……こちらに、向けてだ。


『———っ…………そう、か……そうやって、話も聞く前に殺してきたのか、お前らはっ!』


 こちらに———ヴェンデッタ・シンに向けられたその弾丸の雨を回避したヴェンデッタ・シン。

 ヴェンデッタは、再度Cキャノン2丁を構え、直下にて浮遊しているサイドツー軍に、その銃口を向ける。

「………………ダメ、ダメ、ダメダメダメダメぇっ!……せっかく、せっかくここまでやってきたのに!


 えっと……とりあえず所属不明軍の皆さん! 今すぐにそこから逃げてください、お願いしますっ!」

 ……が、彼らに動きはなし。切れた弾を再度装填し、こちらに向けて一斉射撃を行う直前であった。

「ケイもダメ……ダメぇっ!
 殺したら———それこそ、戻れなくなっちゃうからぁっ!」

『………………ううううああああああっ!!!!!!』

 Cキャノンに、レイルダンジュの数個が接続される。……まずいよ。


「ダメ……どっちも、ダメだからあっ!」

 急いで全速力でスラスターを吹かし、両者の間に割って入る。


『待ってリコ、それは———』

 ケイの声が聞こえた瞬間———その時には、もう既に何もかもが遅かった。

『ちょっと待てコーラス2、貴様何を———?!』

 そのような軍人の声が聞こえた後も。もはや後悔する暇すら、与えてもらえずに———。
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