216 / 237
フォール・イントゥ・ダークネス
閉ざす心
しおりを挟む
◆◇◆◇◆◇◆◇
『…………聞こえているのか?……貴様、なぜあの時トランスフィールド兵を撃ったんだ?』
『正式には……レイル・ド・アンジュという新型兵器での殺人未遂……
当たりどころが良かったのか、機体は大破し、撃たれた人間は全治8ヶ月の重傷で済んだ…………しかし、戦闘も終わったのにどうして撃ったのかが分からな———』
『だから俺は聞いてるんだろ! オイ! 何で貴様はトランスフィールド兵を撃った! 国際問題モノだぞ、この件!
(…………ったく、何で誰もいないところでやってくれなかったかねぇ……何かやるにしても、こういうのは見つかったらまずいってのによ……)』
コソッと話す、独り言が聞こえた。僕には関係ない。
「見せしめだ」
『ああん?』
「理解しようとしない人間への、見せしめだ。あの人はこのことと同じことをしでかしたんだ、死んで当然だ、生きていちゃいけない人間だったんだよ」
『何言ってんだよコイツはぁよぉっ!』
『私にも一向に分からん。何がこの少年をここまで激らせるのか、それが全く』
全く分からない……か。
そりゃあそうだ、人と人は、言葉を交わさねば理解し合うことはできない。
でも、アイツは———そこに人がいると知りながら、僕と何かを交わし合っていると分かりながら———撃ったんだ。
理解なんて念頭に置かず、ただ殺すだけ。拒絶すれば、何でも拒絶すればいいと思ってる。
「………………っ、そんなわけ、ないだろおおおおおっ!!!!」
縛られた手と足を必死に動かす。もはや周りなぞ見えていなかった。
『今度は一体どうしたっていうんだよ?!』
『…………発狂……なのか』
「そんな……そんなわけないだろ、分かり合える道だってあったはずだろ、殺すことなんてなかっただろ、別のやり方もあるはずだろ、あったはずだろ、都合のいいやり方を選んだだけだろうっ!
………………そん……な、もので……あの子の………………幸せ、は…………っ……!!!!」
もはや、言葉を発する気力すら、失ってしまった。
僕は———救えやしなかった。
例え元々敵だった者であろうと———いいや、最初はそこから始まったんだ。
……敵を殺したくない、でも自分だって死にたくない……そんな矛盾をも孕んだわがままに、ヴェンデッタは応えてくれた。……思えば、ここからだったんだな。
だから……もう、僕には乗れないのかもしれない。乗る資格なんてないのかもしれない。
いいや、そもそも……乗りたく、ない。
もう、ヴェンデッタに———サイドツーになんて、乗りたくないんだ。
進んでも、退いても、どっちにしろ人が死ぬんだったら……進んだ結果、僕の本当に護りたい人が護れないと言うのなら……僕はもう、絶対に乗らない。
何もしない方が、大切な人は何も傷付かないと言うなら、だったら僕はそうする。
僕は、ただ……護りたい、だけだったんだ。
なのに、結局———怒りに任せて、殺してしまった。許せないだとか言う理由で。
———もう、何にも考えなくって、いいや。
手放そう、自分を。どうせここにいたって、僕はただ傷付くだけなんだ。
ごめん、ケイ・チェインズ。今まで君の体を散々勝手に使い倒しておいて、これなんて。
でももう、僕は嫌なんだ。全てから逃げて、全てから目を逸らし続けたいんだ。
身勝手で、わがままで、自己中か。……ならば何度でもそう言うといい。
もう、僕は———絶望したんだ。
『…………聞こえているのか?……貴様、なぜあの時トランスフィールド兵を撃ったんだ?』
『正式には……レイル・ド・アンジュという新型兵器での殺人未遂……
当たりどころが良かったのか、機体は大破し、撃たれた人間は全治8ヶ月の重傷で済んだ…………しかし、戦闘も終わったのにどうして撃ったのかが分からな———』
『だから俺は聞いてるんだろ! オイ! 何で貴様はトランスフィールド兵を撃った! 国際問題モノだぞ、この件!
(…………ったく、何で誰もいないところでやってくれなかったかねぇ……何かやるにしても、こういうのは見つかったらまずいってのによ……)』
コソッと話す、独り言が聞こえた。僕には関係ない。
「見せしめだ」
『ああん?』
「理解しようとしない人間への、見せしめだ。あの人はこのことと同じことをしでかしたんだ、死んで当然だ、生きていちゃいけない人間だったんだよ」
『何言ってんだよコイツはぁよぉっ!』
『私にも一向に分からん。何がこの少年をここまで激らせるのか、それが全く』
全く分からない……か。
そりゃあそうだ、人と人は、言葉を交わさねば理解し合うことはできない。
でも、アイツは———そこに人がいると知りながら、僕と何かを交わし合っていると分かりながら———撃ったんだ。
理解なんて念頭に置かず、ただ殺すだけ。拒絶すれば、何でも拒絶すればいいと思ってる。
「………………っ、そんなわけ、ないだろおおおおおっ!!!!」
縛られた手と足を必死に動かす。もはや周りなぞ見えていなかった。
『今度は一体どうしたっていうんだよ?!』
『…………発狂……なのか』
「そんな……そんなわけないだろ、分かり合える道だってあったはずだろ、殺すことなんてなかっただろ、別のやり方もあるはずだろ、あったはずだろ、都合のいいやり方を選んだだけだろうっ!
………………そん……な、もので……あの子の………………幸せ、は…………っ……!!!!」
もはや、言葉を発する気力すら、失ってしまった。
僕は———救えやしなかった。
例え元々敵だった者であろうと———いいや、最初はそこから始まったんだ。
……敵を殺したくない、でも自分だって死にたくない……そんな矛盾をも孕んだわがままに、ヴェンデッタは応えてくれた。……思えば、ここからだったんだな。
だから……もう、僕には乗れないのかもしれない。乗る資格なんてないのかもしれない。
いいや、そもそも……乗りたく、ない。
もう、ヴェンデッタに———サイドツーになんて、乗りたくないんだ。
進んでも、退いても、どっちにしろ人が死ぬんだったら……進んだ結果、僕の本当に護りたい人が護れないと言うのなら……僕はもう、絶対に乗らない。
何もしない方が、大切な人は何も傷付かないと言うなら、だったら僕はそうする。
僕は、ただ……護りたい、だけだったんだ。
なのに、結局———怒りに任せて、殺してしまった。許せないだとか言う理由で。
———もう、何にも考えなくって、いいや。
手放そう、自分を。どうせここにいたって、僕はただ傷付くだけなんだ。
ごめん、ケイ・チェインズ。今まで君の体を散々勝手に使い倒しておいて、これなんて。
でももう、僕は嫌なんだ。全てから逃げて、全てから目を逸らし続けたいんだ。
身勝手で、わがままで、自己中か。……ならば何度でもそう言うといい。
もう、僕は———絶望したんだ。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
もしも願いが叶うなら〜思ったことが口に出るので、とりあえず女の子のおっぱいを揉んでみせることにしたっっっっ!!!!〜
月影弧夜見(つきかげこよみ)
ファンタジー
勇者として冒険を続ける少年、ガスは決意する。
『敵の女の子のおっぱいを揉んでみせる』、とっっっっ!!!!!!
タイトルからも分かるだろう、何を血迷ったか、エイプリルフールスピンオフ短編です。
突如降って湧いたネタなので『何コレ?』となります。もちろんオチも。
個人的に(なぜか)一貫したテーマをもって書けたのでよかったです!!!!!!
ちなみに主人公ガスと今作のヒロインのその後は、自作の別の話『ヴェンデッタ・ゼロ』で描く予定なのでお楽しみに。
*本作は『もしも願いが叶うなら〜No pain, no life〜』の『新・二千兵戦争』編から『戦う理由』の間のスピンオフです。
スピンオフですけど初見でも楽しめる作りになってます、つーか本編見てても『ナニコレ?』ってなるのでとりあえず読んで!!!!!!!!!!
本編はドシリアスですが、こっちは意外とマイルドなので安心して読めます。急に味方が死ぬことないから安心だね!
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
フルダイブ型VRMMORPG Unite Whole World Online ユナイト・ホール・ワールドオンライン略称UWWO
ゲームのコンセプトは広大なエリアを有する世界を一つに集約せよ。要するに世界のマップをすべて開放せよ。
そしてようやく物語の始まりである12月20に正式サービスが開始されることになった。
サービスの開始を待ちに待っていた主人公、大森あゆな はサービスが開始される15:00を前にゲーム躯体であるヘルメットにゲームをインストールしていた。
何故かベッドの上に正座をして。
そしてサービスが始まると同時にUWWOの世界へダイブした。
レアRACE? 何それ?
え? ここどこ?
周りの敵が強すぎて、先に進めない。
チュートリアル受けられないのだけど!?
そして何だかんだあって、引きこもりつつストーリーの重要クエストをクリアしていくようになる。
それも、ソロプレイで。
タイトルの副題はそのうち回収します。さすがに序盤で引きこもりも暗躍も出来ないですからね。
また、この作品は話の進行速度がやや遅めです。間延びと言うよりも密度が濃い目を意識しています。そのため、一気に話が進むような展開はあまりありません。
現在、少しだけカクヨムの方が先行して更新されています。※忘れていなければ、カクヨムでの更新の翌日に更新されます。
主人公による一方的な虐殺が好き、と言う方には向いていません。
そう言った描写が無い訳ではありませんが、そう言った部分はこの作品のコンセプトから外れるため、説明のみになる可能性が高いです。
あくまで暗躍であり、暗殺ではありません。
いえ、暗殺が無い訳ではありませんけど、それがメインになることは確実に無いです。
※一部登場人物の名前を変更しました(話の内容に影響はありません)
毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー活劇〜
天海二色
SF
西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。
珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。
その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。
彼らは一人につき一つの毒素を持つ。
医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。
彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。
これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。
……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。
※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
特別展「毒」 公式図録
くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ
ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科
その他広辞苑、Wikipediaなど
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~
一色 遥
SF
スキル制VRMMORPG<Life Game>
それは自らの行動が、スキルとして反映されるゲーム。
そこに初めてログインした少年アキは……、少女になっていた!?
路地裏で精霊シルフと出会い、とある事から生産職への道を歩き始める。
ゲームで出会った仲間たちと冒険に出たり、お家でアイテムをグツグツ煮込んだり。
そんなアキのプレイは、ちょっと人と違うみたいで……?
-------------------------------------
※当作品は小説家になろう・カクヨムで先行掲載しております。
お兄ちゃんの装備でダンジョン配信
高瀬ユキカズ
ファンタジー
レベル1なのに、ダンジョンの最下層へ。脱出できるのか!?
ダンジョンが現代に現れ、ライブ配信が当たり前になった世界。
強さに応じてランキングが発表され、世界的な人気を誇る配信者たちはワールドクラスプレイヤーと呼ばれる。
主人公の筑紫春菜はワールドクラスプレイヤーを兄に持つ中学2年生。
春菜は兄のアカウントに接続し、SSS級の激レア装備である【神王の装備フルセット】を持ち出してライブ配信を始める。
最強の装備を持った最弱の主人公。
春菜は視聴者に騙されて、人類未踏の最下層へと降り立ってしまう。しかし、危険な場所に来たことには無自覚であった。ろくな知識もないまま攻略し、さらに深い階層へと進んでいく。
無謀とも思える春菜の行動に、閲覧者数は爆上がりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる