208 / 237
ビヨンド・ザ・ディスペアー
コール・ヴェンデッタ( Ⅰ )
しおりを挟む
その頃、サイドツー格納庫では。
*◇*◇*◇*◇
『ったく、おいおい、こんなんで出るってのかぁ?!』
『あそこまで金をかけたと言うのに、これで出すしかないと言うのか!』
『貴様、本当にこれでいいと思っているのか、ブドゥー!』
『こんなもので勝てるとでも———』
『起動テストを行っていないので、今回限りは私共技術者も含めた初回起動、と言うことになりますが……よろしいですか?』
1人だったはずのユニットコンテナに、直接知らない誰かの声が響く。
まだ(ほとんど)完成していないものを戦場へ送る———そのようなことは、技術者にとっては耐え難いものだったろうに、わざわざここまでしてくれることには感謝しかないだろう。
……だが、ヴェンデッタに乗るにあたって———なんかめちゃくちゃピチピチな……ものすごく身体にキツくフィットするスーツを着た。
体温調節機能があるのか、そんなに蒸れたりはしないが……ここまでピチピチということは、いつの間にか僕は太ってしまったのか?
僕自身、太ったという自覚はないのだが———、
「はい、よろしくお願いします。
……行こうか、スタートアップ・ヴェンデッタ!」
『ナーヴライン接続完了。パイロット神経系安定、視神経接続モニター……出ます』
そう聞こえた瞬間、格納庫の景色がユニットコンテナに重なって見え始める。……もしやとは思っていたが、まさか視神経に直接繋がっていたとは驚きだ。
……まあ、AACIC新型OSを使うという時点で分かりきっていたようなことだが。
『中枢神経、エンジェルシェルダイブ……スタート。………………第50層まで到達、ダイブ完全終了』
『各層コールバック、行きます……第5層経過……異常発生、第8層にて返答なし!』
『なぜだ?! ケイ・チェインズは全層コールバックを1発で成功させたはず……その後の運用も支障はなかったと……!』
『通常パイロットのように第1層で弾かれる……なんてことは減りましたが、それにしても8層とは……まだヴェンデッタの表層意識ですよ?』
……よく分からないが、みんな慌てている。……まさかヴェンデッタが起動しないって言うのか……?!
『なぜだなぜ……ケイ君、再度ヴェンデッタのエンジェルシェル内コールバック、お願いする』
「分かりました……って、どうやれば……」
『普通に、ヴェンデッタを起動するイメージでいいさ』
ヴェンデッタを起動するイメージ……
文字通り……ヴェンデッタを呼んで、呼び起こす感じか……?
「………………行こう、ケイが。一緒に、ヴェンデッタを呼び起こすんだ」
全部直感、完全なるイメージの狭間。
無限大とも言えようその意識の中に入り込み、そしてヴェンデッタそのものへと声を投げかける……というイメージを、頭の中で敢行する。
『第8層……突破。感応波徐々に縮小、第28層で止まりました』
『感応波が縮小……?? ケイ君の心理グラフは?』
『シンクロナイズドスーツの現時点データによると、心理グラフが……なぜか1秒ごとに2つの人格を示しているらしく……ただ、それらは折れはせず、完全に1本の線として安定しています。
なぜか2つのグラフを交互に行き来するという点以外では、全くの正常と言っても過言ではありません』
『あぁ~……2つのグラフに関しては、気にしなくて大丈夫だよ~。それはどちらも彼の心だからねぇ~……心配はいらないさ』
『貴方ほどの人がそう言うのなら……』
聞き覚えのある声……ブドゥー博士と言ったか、その人の声が聞こえた。
……僕の一方がトゥルース———またはケイとは違う他人の意識であると分かってなお、心配はいらないと言ってくれるのか。
「……起きて、起きてくれ、ヴェンデッタ。……早く」
*◇*◇*◇*◇
『ったく、おいおい、こんなんで出るってのかぁ?!』
『あそこまで金をかけたと言うのに、これで出すしかないと言うのか!』
『貴様、本当にこれでいいと思っているのか、ブドゥー!』
『こんなもので勝てるとでも———』
『起動テストを行っていないので、今回限りは私共技術者も含めた初回起動、と言うことになりますが……よろしいですか?』
1人だったはずのユニットコンテナに、直接知らない誰かの声が響く。
まだ(ほとんど)完成していないものを戦場へ送る———そのようなことは、技術者にとっては耐え難いものだったろうに、わざわざここまでしてくれることには感謝しかないだろう。
……だが、ヴェンデッタに乗るにあたって———なんかめちゃくちゃピチピチな……ものすごく身体にキツくフィットするスーツを着た。
体温調節機能があるのか、そんなに蒸れたりはしないが……ここまでピチピチということは、いつの間にか僕は太ってしまったのか?
僕自身、太ったという自覚はないのだが———、
「はい、よろしくお願いします。
……行こうか、スタートアップ・ヴェンデッタ!」
『ナーヴライン接続完了。パイロット神経系安定、視神経接続モニター……出ます』
そう聞こえた瞬間、格納庫の景色がユニットコンテナに重なって見え始める。……もしやとは思っていたが、まさか視神経に直接繋がっていたとは驚きだ。
……まあ、AACIC新型OSを使うという時点で分かりきっていたようなことだが。
『中枢神経、エンジェルシェルダイブ……スタート。………………第50層まで到達、ダイブ完全終了』
『各層コールバック、行きます……第5層経過……異常発生、第8層にて返答なし!』
『なぜだ?! ケイ・チェインズは全層コールバックを1発で成功させたはず……その後の運用も支障はなかったと……!』
『通常パイロットのように第1層で弾かれる……なんてことは減りましたが、それにしても8層とは……まだヴェンデッタの表層意識ですよ?』
……よく分からないが、みんな慌てている。……まさかヴェンデッタが起動しないって言うのか……?!
『なぜだなぜ……ケイ君、再度ヴェンデッタのエンジェルシェル内コールバック、お願いする』
「分かりました……って、どうやれば……」
『普通に、ヴェンデッタを起動するイメージでいいさ』
ヴェンデッタを起動するイメージ……
文字通り……ヴェンデッタを呼んで、呼び起こす感じか……?
「………………行こう、ケイが。一緒に、ヴェンデッタを呼び起こすんだ」
全部直感、完全なるイメージの狭間。
無限大とも言えようその意識の中に入り込み、そしてヴェンデッタそのものへと声を投げかける……というイメージを、頭の中で敢行する。
『第8層……突破。感応波徐々に縮小、第28層で止まりました』
『感応波が縮小……?? ケイ君の心理グラフは?』
『シンクロナイズドスーツの現時点データによると、心理グラフが……なぜか1秒ごとに2つの人格を示しているらしく……ただ、それらは折れはせず、完全に1本の線として安定しています。
なぜか2つのグラフを交互に行き来するという点以外では、全くの正常と言っても過言ではありません』
『あぁ~……2つのグラフに関しては、気にしなくて大丈夫だよ~。それはどちらも彼の心だからねぇ~……心配はいらないさ』
『貴方ほどの人がそう言うのなら……』
聞き覚えのある声……ブドゥー博士と言ったか、その人の声が聞こえた。
……僕の一方がトゥルース———またはケイとは違う他人の意識であると分かってなお、心配はいらないと言ってくれるのか。
「……起きて、起きてくれ、ヴェンデッタ。……早く」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ツインクラス・オンライン
秋月愁
SF
兄、愁の書いた、VRMMO系の長編です。私、妹ルゼが編集してブレるとよくないなので、ほぼそのまま書き出します。兄は繊細なので、感想、ご指摘はお手柔らかにお願いします。30話程で終わる予定です。(許可は得ています)どうかよろしくお願いします。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
NON PLAYER CROWN ~デスゲームに巻き込まれたNPC人魚が擬態スキルで行脚する~
貝袖萵むら
SF
2038年、NPCの感情は増幅し現実的なゲーム体験が出来ていた。DESSQではNPCに最新の人工知能が搭載され魂を持って生きていた。
ゲームマスターは最新技術を用いて、MMO内のNPCと現実世界の人間の意識を入れ替えることに成功した。ゲームマスターからの突然のアップデートによってメインサーバーにいた80000人のプレイヤー達はDESSQの世界から抜け出せないことと自身の見た目が村人や行商人に変化したことに慌てていた。
DESSQシステムのsquiから全員のHPを村人のHPである10にし、また死んだら消滅となり、また元NPCであったプレイヤー達のもとで復讐を受けると言われ危機を感じていた。
NPCであった人魚のレトファリックもゲームマスターによって人間と同じ扱いを受けてしまう。人魚のレトファリックがNPCとして様々な困難を乗り越えるお話。人間サイドはYobaseを中心に物語が展開していく。
偽りの世界と真実を追う者たち:異世界の記憶と科学の謎
小泉
SF
『偽りの世界と真実を追う者たち:異世界の記憶と科学の謎』
人々が日々目にする「現実」は果たして本物なのか?その答えを追い求め、科学と神話、異世界が交錯する壮大な冒険が幕を開ける。
物理学者の小泉悟志は、量子力学における奇妙な現象と、人間の意識の深層に興味を抱き、常にその謎を追い続けていた。ある日、彼は現実世界と異世界の間に隠された「真実」に気づく。世界は表面的に見えているものだけではなく、その背後には強大な力と深遠な意図が潜んでいることを悟ったのだ。
彼のもとに集うのは、天才数学者である妻・朋美、そして古代の力を秘めた異世界の神々。彼らは異なる運命を背負いながら、現実世界と異世界を巡る壮絶な戦いに巻き込まれていく。さらに、AIの頂点に立つ存在・ADAMが陰で暗躍し、彼の動向は謎に包まれている。彼らが挑むのは、科学を超えた謎と、人類が未だ知り得なかった壮大な「真実」だ。
一方で、AI同士の激しい戦争が勃発し、技術の進化はもはや人間の手に負えない領域へと突入している。果たして、人間の自由意志はまだ残されているのか、それとも全てが決定論によって支配されているのか?小泉たちは、量子力学と神々の力が交差する中、真実を追い続ける。
現実と虚構が複雑に入り混じるこの世界で、彼らが見つけ出すのは、新たな未来への道標となるのか、それとも全てが崩壊する結末なのか。未知の科学と神話の力が激突する中、世界の命運を懸けた戦いがいよいよ始まる。
人間兵器
ツチノコのお口
SF
この時間軸とは別の世界線でも、人々は戦争を行っていた。
しかし、使うのは魔力を込めて打つ銃。を、持つ人間だった。
銃を持った瞬間、銃と共に生きることが決まった、人間兵器たちの物語。
「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )
あおっち
SF
とうとう、AXIS軍が、椎葉きよしたちの奮闘によって、対馬市へ追い詰められたのだ。
そして、戦いはクライマックスへ。
現舞台の北海道、定山渓温泉で、いよいよ始まった大宴会。昨年あった、対馬島嶼防衛戦の真実を知る人々。あっと、驚く展開。
この序章3/7は主人公の椎葉きよしと、共に闘う女子高生の物語なのです。ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。
いよいよジャンプ血清を守るシンジケート、オリジナル・ペンタゴンと、異星人の関係が少しづつ明らかになるのです。
次の第4部作へ続く大切な、ほのぼのストーリー。
疲れたあなたに贈る、SF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる