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ビヨンド・ザ・ディスペアー
Side-ブラン: 最悪の敵
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そうして、格納庫よりブラン含めたサイドツー部隊が飛び立つ。
もはや陣形も何もない、ただひたすらに迫り来る『敵』に対し迎撃を繰り返すのみだった。
********
「……サイドツー・カスタムフュンフ、出ます!」
轟音と蒸気を上げ、俺の機体は発進する。
サイドツー・カスタムフュンフ。4本腕の白兵戦重視サイドツー。それが、裏切り者として扱われた俺に与えられた機体だった。
4本腕に合わせて、機体の操縦桿も、多少簡易化はされたものの4本もあったりする。
全部の腕や2本の腕などを同時に動かすこともできなくはないが、やはりそこら辺のモードの切り替えが面倒くさい。
……もはやとても俺のことを裏切り者とは見れていないような扱いだが、今は緊急事態、そんなこと言っている場合じゃないだろう。
『第0機動小隊! 全員揃っているか?!』
『コーラス2、今くいなちゃんの後ろで~っす!』
『なれなれ……しい』
「コーラス5、ブラン・カーリー。カスタムフュンフで出ました」
その後も点呼は続くが……隊長が異変に気付く。
『ケイ……はいいとして、アイツは———トゥルースはどこへ?』
コーラス17。トゥルース。
欠落した第0機動小隊の穴埋めとして近衛騎士———アヴェンジ小隊より寄越された少年。
ケイとよく接しており、俺らとはあまり話したことのなかったヤツだった。
『コーラス17? コーラス17! 聞こえていないのか…………ならばいい、接敵までの時間、手早く現状の確認をしよう。
敵は神話的生命体———と見られているけど、今までに例を見なかった飛行タイプ。
飛行し、突撃するのみの芸のないタイプだけど、当たれば致命傷は間違いない、激突される前に撃墜するんだ。
それに今は———敵が狙ったのか、魔力の瘴気が濃い。魔力探知式レーダーは使い物にならないから、目視で戦うんだ。……いいな?』
『『「了解!」』』
言った側から、既にその敵は近づいてきていた。目にも止まらぬスピードを以て、ただ自爆特攻を狙って突撃する迷惑極まりないタイプ。
ライフルで狙おうにも、あまりにも速すぎる。アレじゃあ絶対に撃ち落とせはしない。隊長の言っていたようにはできない。……それにこの機体は、そもそも白兵戦向けの機体———というのなら。
「来い……っ!」
至近距離で、確実に仕留めるまでだ……!
「ハルバード!」
機体背面部より、機体より二回りほど大きな大斧、ハルバードを取り出し、左腕2本の腕にてがっしりと構える。
リーチは十分、手元さえ狂わなければ確実にやれる。
「うらああああっ!」
タイミングよくハルバードを振り上げ、眼前にて敵は爆散する。すぐさま周囲に目を向けると、今度は左下の方から———。
「ハルバードじゃ間に合わない、ならば槍の方で……!」
カスタムフュンフ、その専用装備としてあるのが、背面部ウェポンラックに搭載されているハルバードと、あと数個はある。その中の1つ。
「苦い思い出しか、ないが……っ!」
ベーゼンドルファーの使っていた、魔力反応式の大槍だった。
「邪魔だあああああっ!!!!」
左腕はこの一瞬では使えない、ならばと右腕2本で掲げた大槍を敵に向け———そして突き刺す。
またも敵は、この機体に触れることはなく爆散。辺りを見渡しても、既に敵はあまりいなかった。
「ここは乗り切った、次は味方だな……!」
もはや陣形も何もない、ただひたすらに迫り来る『敵』に対し迎撃を繰り返すのみだった。
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「……サイドツー・カスタムフュンフ、出ます!」
轟音と蒸気を上げ、俺の機体は発進する。
サイドツー・カスタムフュンフ。4本腕の白兵戦重視サイドツー。それが、裏切り者として扱われた俺に与えられた機体だった。
4本腕に合わせて、機体の操縦桿も、多少簡易化はされたものの4本もあったりする。
全部の腕や2本の腕などを同時に動かすこともできなくはないが、やはりそこら辺のモードの切り替えが面倒くさい。
……もはやとても俺のことを裏切り者とは見れていないような扱いだが、今は緊急事態、そんなこと言っている場合じゃないだろう。
『第0機動小隊! 全員揃っているか?!』
『コーラス2、今くいなちゃんの後ろで~っす!』
『なれなれ……しい』
「コーラス5、ブラン・カーリー。カスタムフュンフで出ました」
その後も点呼は続くが……隊長が異変に気付く。
『ケイ……はいいとして、アイツは———トゥルースはどこへ?』
コーラス17。トゥルース。
欠落した第0機動小隊の穴埋めとして近衛騎士———アヴェンジ小隊より寄越された少年。
ケイとよく接しており、俺らとはあまり話したことのなかったヤツだった。
『コーラス17? コーラス17! 聞こえていないのか…………ならばいい、接敵までの時間、手早く現状の確認をしよう。
敵は神話的生命体———と見られているけど、今までに例を見なかった飛行タイプ。
飛行し、突撃するのみの芸のないタイプだけど、当たれば致命傷は間違いない、激突される前に撃墜するんだ。
それに今は———敵が狙ったのか、魔力の瘴気が濃い。魔力探知式レーダーは使い物にならないから、目視で戦うんだ。……いいな?』
『『「了解!」』』
言った側から、既にその敵は近づいてきていた。目にも止まらぬスピードを以て、ただ自爆特攻を狙って突撃する迷惑極まりないタイプ。
ライフルで狙おうにも、あまりにも速すぎる。アレじゃあ絶対に撃ち落とせはしない。隊長の言っていたようにはできない。……それにこの機体は、そもそも白兵戦向けの機体———というのなら。
「来い……っ!」
至近距離で、確実に仕留めるまでだ……!
「ハルバード!」
機体背面部より、機体より二回りほど大きな大斧、ハルバードを取り出し、左腕2本の腕にてがっしりと構える。
リーチは十分、手元さえ狂わなければ確実にやれる。
「うらああああっ!」
タイミングよくハルバードを振り上げ、眼前にて敵は爆散する。すぐさま周囲に目を向けると、今度は左下の方から———。
「ハルバードじゃ間に合わない、ならば槍の方で……!」
カスタムフュンフ、その専用装備としてあるのが、背面部ウェポンラックに搭載されているハルバードと、あと数個はある。その中の1つ。
「苦い思い出しか、ないが……っ!」
ベーゼンドルファーの使っていた、魔力反応式の大槍だった。
「邪魔だあああああっ!!!!」
左腕はこの一瞬では使えない、ならばと右腕2本で掲げた大槍を敵に向け———そして突き刺す。
またも敵は、この機体に触れることはなく爆散。辺りを見渡しても、既に敵はあまりいなかった。
「ここは乗り切った、次は味方だな……!」
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