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禍根未だ途切れず
分かり合う道を( Ⅳ )
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◆◇◆◇◆◇◆◇
シミュレーションルーム、シミュレーター内部。
暗く染まったその中で、想いを馳せながら。
「……よし」
腹は決まった。明日話し合うんだ、勇気を持って。
ほんの些細なことかもしれないけど———僕にとってはこれが今の一番の悩みだった。
……どこか、等身大の悩みに戻れて嬉しかったような———そんな気も抱いたまま、眠りについた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そうして、翌朝。
第0機動小隊の部屋の前。……皆起きたばかりだというのに既にうるさい部屋の前。
勇気を持って、その一歩を踏み出した。
「お……おは……よう」
寝ぼけた皆の顔が、一斉に気まずそうな顔へと変わる。
「…………リコ!」
「は……はうっ?!」
名前を呼ばれたリコは、一瞬のうちにその顔を赤く染める。
「……とブラン!……朝からごめん……けど、話がある」
ブランは何かを察してくれたのか、どこか仕方なさを臭わせる鈍い足つきで、僕の横を通り過ぎる。
「は……話……?」
「そう。……色々と、話しておきたい。だからちょっと、別の場所に移動したくって」
◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、廊下の隅の方に移動した後。
「…………ごめんっ!……本当に、ごめん……ここ最近の僕は……悪かったというか……おかしかったって自覚してる……だから、ごめん」
リコとブラン、並んだ2人に対して頭を下げる。リコは戸惑い気味だったが、ブランはどこか余裕のある顔つきをしていた。
「ああ———確かに今までのお前はおかしかったな。……急に訓練に執着しだして……」
「そのこと……なんだ。……何で、そんなことを急に言い出したのかって」
ここでようやく、リコがハッとした表情を見せる。……言われるまで何のことか分かってなかったな、リコは。
「……まず、僕がどう思ってるか言おうと思う。……それから言わないと、まず始まらないから。
僕は———みんなを失うことが、怖いんだ。それが怖くて、それだけは嫌だ……って思った。だから僕は……耐えられなかったんだよ、第二次真珠海作戦……それにおける、僕たちの任務に」
「……まあ…………敵の大群の中に、私たち3人で放り込まれるんだから……そりゃあ、ね……」
「だから何度もブランも連れてシミュレーターにも行ったし、だから何度も練習の必要性だって……訴えたんだ。
でも…………ちょっと、度が過ぎたかなと思ってる。逆に一緒に居づらくしてしまって……ごめん」
———思えば、初めて頭を下げた。こんなことは今までに初めてだった。
でも……そうだな、分かりあう為だったら、頭だって何だって下げてやる。
「別に~さ、そんなマジメにするほどのことじゃ……」
「…………ケイは……至って真面目だ。……何せ俺たちのことを考えた結果———こうなったんだからな。……少しはケイの気持ちも、汲み取ってやるのが彼女ってモノだろ」
「か……っ、かかぁ……っ!」
ブランの一言に動揺するリコだったが、ブランはそんなこと気にも留めずに話し続ける。
「だから……その……俺からもすまん。お前の気持ちを汲み取ってやれなかった俺たちにも、責任はある……もう少し、危機感を持って臨む」
「じゃあ、私も…………ケイは私たちのことを想ってああ言ってくれた。
……それはよく分かったし、もうこの話は終わりでいい……よね?……私も、いつまでも雰囲気悪いままでいたくないしさ」
「……ここ数日、なぜか俺にばっかりケイの話をしまくってたしな、相当溜まってたんだろ」
「ぐぎーーーーっ!」
……コントかよ。
「まあ……うん。とりあえず、色々と付き合わせちゃってごめん。……この後はどうする、何か予定とかあるの、2人は?」
「この後の予定と……」
「言えば……アレしかないでしょ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「結局……シミュレーターの訓練なんだね……」
『これから特に予定はないしな、こっちの方が有意義ってもんだろ?……それに、ケイの言葉で俺も———少し変われた気がするんだ』
『じゃあ私は切り込み隊長で~!』
……リコは何を言っているんだ。
シミュレーションルーム、シミュレーター内部。
暗く染まったその中で、想いを馳せながら。
「……よし」
腹は決まった。明日話し合うんだ、勇気を持って。
ほんの些細なことかもしれないけど———僕にとってはこれが今の一番の悩みだった。
……どこか、等身大の悩みに戻れて嬉しかったような———そんな気も抱いたまま、眠りについた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そうして、翌朝。
第0機動小隊の部屋の前。……皆起きたばかりだというのに既にうるさい部屋の前。
勇気を持って、その一歩を踏み出した。
「お……おは……よう」
寝ぼけた皆の顔が、一斉に気まずそうな顔へと変わる。
「…………リコ!」
「は……はうっ?!」
名前を呼ばれたリコは、一瞬のうちにその顔を赤く染める。
「……とブラン!……朝からごめん……けど、話がある」
ブランは何かを察してくれたのか、どこか仕方なさを臭わせる鈍い足つきで、僕の横を通り過ぎる。
「は……話……?」
「そう。……色々と、話しておきたい。だからちょっと、別の場所に移動したくって」
◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、廊下の隅の方に移動した後。
「…………ごめんっ!……本当に、ごめん……ここ最近の僕は……悪かったというか……おかしかったって自覚してる……だから、ごめん」
リコとブラン、並んだ2人に対して頭を下げる。リコは戸惑い気味だったが、ブランはどこか余裕のある顔つきをしていた。
「ああ———確かに今までのお前はおかしかったな。……急に訓練に執着しだして……」
「そのこと……なんだ。……何で、そんなことを急に言い出したのかって」
ここでようやく、リコがハッとした表情を見せる。……言われるまで何のことか分かってなかったな、リコは。
「……まず、僕がどう思ってるか言おうと思う。……それから言わないと、まず始まらないから。
僕は———みんなを失うことが、怖いんだ。それが怖くて、それだけは嫌だ……って思った。だから僕は……耐えられなかったんだよ、第二次真珠海作戦……それにおける、僕たちの任務に」
「……まあ…………敵の大群の中に、私たち3人で放り込まれるんだから……そりゃあ、ね……」
「だから何度もブランも連れてシミュレーターにも行ったし、だから何度も練習の必要性だって……訴えたんだ。
でも…………ちょっと、度が過ぎたかなと思ってる。逆に一緒に居づらくしてしまって……ごめん」
———思えば、初めて頭を下げた。こんなことは今までに初めてだった。
でも……そうだな、分かりあう為だったら、頭だって何だって下げてやる。
「別に~さ、そんなマジメにするほどのことじゃ……」
「…………ケイは……至って真面目だ。……何せ俺たちのことを考えた結果———こうなったんだからな。……少しはケイの気持ちも、汲み取ってやるのが彼女ってモノだろ」
「か……っ、かかぁ……っ!」
ブランの一言に動揺するリコだったが、ブランはそんなこと気にも留めずに話し続ける。
「だから……その……俺からもすまん。お前の気持ちを汲み取ってやれなかった俺たちにも、責任はある……もう少し、危機感を持って臨む」
「じゃあ、私も…………ケイは私たちのことを想ってああ言ってくれた。
……それはよく分かったし、もうこの話は終わりでいい……よね?……私も、いつまでも雰囲気悪いままでいたくないしさ」
「……ここ数日、なぜか俺にばっかりケイの話をしまくってたしな、相当溜まってたんだろ」
「ぐぎーーーーっ!」
……コントかよ。
「まあ……うん。とりあえず、色々と付き合わせちゃってごめん。……この後はどうする、何か予定とかあるの、2人は?」
「この後の予定と……」
「言えば……アレしかないでしょ……!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「結局……シミュレーターの訓練なんだね……」
『これから特に予定はないしな、こっちの方が有意義ってもんだろ?……それに、ケイの言葉で俺も———少し変われた気がするんだ』
『じゃあ私は切り込み隊長で~!』
……リコは何を言っているんだ。
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