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禍根未だ途切れず

第二次真珠海作戦、発案

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「まずな、ブドゥーから聞いているかもしれんが、第ニ次真珠海作戦、その肝となるのは———君、ケイ・チェインズと、そのサイドツーであるヴェンデッタ・シンだ」

 そうだ。そこまでは聞いた話だ。……だけど、どういった意味で肝となるのか、それがよく分からない。

「最終作戦、第二次真珠海作戦は、サイドツー機動部隊を『陽動部隊』と『突入部隊』の2つに分ける。そして、その陽動部隊は———、


 、ケイ」

「な……!」

 一瞬にして、部屋全体に電流が走る。
 陽動———その部隊は、僕1人に任せる……だって?

「いや、具体的に言えばだな……陽動部隊、その正体は第0機動小隊だ。そしてその隊長は、お前にやってもらうぞ、ケイ」



 ……今、なんて、言った?

「は、え、第0機動小隊で……」
「陽動を……」
「やるぅ?…………ひっく」

「だが、基本はケイ、お前1人だ」

 僕たち……なのか。
 僕、たちだけで———何が出てくるか分からない、ヤツらの本拠地の陽動を…………しろと。

「だからこそ、オリュンポス突入作戦は、ヴェンデッタの改修が終わらない限り開始しない、ということになっている。

 だが———時間に猶予がないのも事実だ。
 、先代人界王が亡くなられた事実は周知の通りだと思うが———」

「えっ」

 ここで、ようやく人界王交代の原因を知った。……同時に、それが僕にあることも。

「…………すいません」
「謝る必要はない。償いは、作戦における成果で行ってもらうからな。

 ……話を戻そう。人界王交代の原因は、表向きには『クーデター軍が王城を占拠、人界王を討ち取った』ということになっている。

 その際、人界王からも推薦され、かつクーデター軍とも密かに関わりのあった俺が、新しい王ということになった。

 俺が王になった際、魔族のヤツらは俺に期待していた。『自分たちが戦場に送られる』という状況を変えてもらうことにな。

 だが戦争は終わっていない、俺にとっても辛い話だが、魔力機関との相性上、魔族を先行させる以外に道はない。

 ……だからこそ、魔族のヤツらがこの俺に対して抱く、幻の期待が消え失せぬうちに、この作戦は実行しなければならないんだ。……故に、時間はない」


「———だから、僕たちは原隊復帰なんですか?……来たる決戦に備え、訓練を積んでおけと」

「その通りだ。ヴェンデッタ・シンは最強の機体に仕上がる。それまでの辛抱だ」

「……はい。努力します」

 自分で言っててそっけない返事だなと思ったが、今の僕が出せる精一杯の答えだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 その後、黒さんはレイさんを引きずってどこかへ行ってしまった。
 放置された僕たちは、部屋の隅にて倒れている3人の人影を発見する。

「おい、ケイ……あれってまさか、リコと秀徳とニンナ……だよな?」

 3人とも半裸で寝ているが…………多分そうだ、レイさんに巻き込まれたんだろう、気の毒に。

「……アレは……とりあえず無視でいいよ、それよりも僕たちは、やるべきことがあるはずだ」

 そうだ、訓練。
 ヴェンデッタの改修は今も進んでいる。こうしている間にも、最終作戦までの時間は刻一刻と進んでいるんだ、無駄なことをしている暇なんて———。

「……………ケイ、お前……どうした?」
「どうした……って何が?」

「もっとこう……リコとさ、色々話さなくていいのかって」

「今はそんなことしてる場合じゃないだろ、第二次真珠海作戦が———」

「………………そうか」

「シミュレーションルームに行こう、2人で模擬戦だ」

「あ、ああ、そうだな、模擬戦…………だな」
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