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第一次真珠海作戦(後)
フルマップ・ハイバースト
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「……それじゃあ、行こうか」
「本当に、よかったのか……これで」
結局僕はブランを、ヴェンデッタのユニットコンテナ内で匿うことにした。
……何より、あの機体のユニットコンテナのみでいるのは危険だ。いざという時は、このヴェンデッタの中が一番安全だろうから。
「…………ブラン、君はもう———復讐なんて考えなくたっていいんだ。……そりゃあ、僕が憎いかもしれない。憎くて憎くて、たまらないかもしれない。
だけど、その先にあるのは血塗られた結末、誰も幸せにならない地獄だ。……そんなものは、もう誰にも味わってほしくないから」
「…………っ、ううふ……っ、あぁ…………っ!」
「いくらでも泣いていいんだ。……だから、自分自身で選ぶことを忘れないでほしい。
何度転んだって、何度挫けたっていいから、自分を大事にして、自分を強く持って……それがきっと、一番大事なことだから」
「あり……がとう……!……こんな俺を、救おうと、してくれて……!!!!」
「うん。……これで君が救えるなら、僕はそれでいいよ。
———さ、とりあえず僕はどうすべきか———」
『こちら、真珠海作戦総司令部!』
「ほっ!…………うおぉ……びっくりしたぁ……」
唐突に入る通信。その大きさに思わずビクついてしまう。
まあ、やることができると言うのならば、これ以上に待ち望んだ話はなかった。
『~~作戦総司令、黒だ。ベーゼンドルファーを堕としたようだな、よくやった。……ひと段落ついたところで申し訳ないが、ヒノカグツチの護衛を君に頼みたい、コーラス7』
「分かりました。この手で護れると言うのなら、護ってみせます。
……ところで、ヒノカグツチって何ですか?」
「……俺も、ベーゼンドルファーに乗ってばっかりだったから、そこに関してはよく分からん」
『ヒノカグツチが何か分からないぃ?!……ああそうか、ついさっき戦線に復帰したばかりだったな。
ヒノカグツチは現在ヴェンデッタの下方にて、荷電粒子砲を充填中の巨大機動戦艦だ。……さっき、ヴェンデッタがその魔力砲台で守り抜いた、あの兵器だ、あの』
「ああ、なるほど!」
『Ξ標的45体の神力光線一斉照射まで時間がない、こっちは荷電粒子砲の充填に全力を注ぐ、そっちはお前たちに任せたぞ、いいな!』
「了解!……行こう、ヴェンデッタ」
……と言うか、45体?!
Ξ標的、45体?!?!?!?!
「……ブラン、ちょっと揺れるけどごめんね」
「ああ、もちろん分かっておおおおおおおおっ?!」
ヴェンデッタの移動スピード。それは前のヴェンデッタとは比べ物にならないほどに変わっている。
ヴェンデッタのアークレイと一部融合し、その効力を数十倍にも高められた魔力機関。機巧天使ヴェンデッタ本来の力と、人界軍の作り出したシステムが合わさったパワーは、並のサイドツーの比にもならない……!
「Cキャノン、コンパクトアップグレード……魔伝導出力全開、ヤツらが撃つ前に、ここで仕留めるっ!」
機動戦艦、ヒノカグツチ直上。
一瞬にしてそこまで移動した僕たちは、ビットが装着され出力が数十倍に跳ね上がったCキャノン2丁を構える。
「Ξ標的、45体…………コイツらか!」
ヴェンデッタの思考を通じて、僕の頭の中にも、敵の居場所が直感的に伝わる。
……敵は、島!
この島そのものを囲むように、今まさに全方向より、ヒノカグツチに向けて初期照射を始めている……!
「Cキャノン、フルマップハイバーストッ!」
敵の位置は分かっている、ならば後はこのCキャノン超極大最大出力放射を、ヤツらに当てるのみだ。
「うおおおおおおっ!」
旋回しゆく視界。2秒にして一周した視界の奥に、天へ登りゆく爆煙が映り込む。
「おい、ケイ……今の、お前がやったのか……?
島を覆うΞ標的、45体を……お前が……?」
「……僕が、じゃない。僕とヴェンデッタが、だよ」
「本当に、よかったのか……これで」
結局僕はブランを、ヴェンデッタのユニットコンテナ内で匿うことにした。
……何より、あの機体のユニットコンテナのみでいるのは危険だ。いざという時は、このヴェンデッタの中が一番安全だろうから。
「…………ブラン、君はもう———復讐なんて考えなくたっていいんだ。……そりゃあ、僕が憎いかもしれない。憎くて憎くて、たまらないかもしれない。
だけど、その先にあるのは血塗られた結末、誰も幸せにならない地獄だ。……そんなものは、もう誰にも味わってほしくないから」
「…………っ、ううふ……っ、あぁ…………っ!」
「いくらでも泣いていいんだ。……だから、自分自身で選ぶことを忘れないでほしい。
何度転んだって、何度挫けたっていいから、自分を大事にして、自分を強く持って……それがきっと、一番大事なことだから」
「あり……がとう……!……こんな俺を、救おうと、してくれて……!!!!」
「うん。……これで君が救えるなら、僕はそれでいいよ。
———さ、とりあえず僕はどうすべきか———」
『こちら、真珠海作戦総司令部!』
「ほっ!…………うおぉ……びっくりしたぁ……」
唐突に入る通信。その大きさに思わずビクついてしまう。
まあ、やることができると言うのならば、これ以上に待ち望んだ話はなかった。
『~~作戦総司令、黒だ。ベーゼンドルファーを堕としたようだな、よくやった。……ひと段落ついたところで申し訳ないが、ヒノカグツチの護衛を君に頼みたい、コーラス7』
「分かりました。この手で護れると言うのなら、護ってみせます。
……ところで、ヒノカグツチって何ですか?」
「……俺も、ベーゼンドルファーに乗ってばっかりだったから、そこに関してはよく分からん」
『ヒノカグツチが何か分からないぃ?!……ああそうか、ついさっき戦線に復帰したばかりだったな。
ヒノカグツチは現在ヴェンデッタの下方にて、荷電粒子砲を充填中の巨大機動戦艦だ。……さっき、ヴェンデッタがその魔力砲台で守り抜いた、あの兵器だ、あの』
「ああ、なるほど!」
『Ξ標的45体の神力光線一斉照射まで時間がない、こっちは荷電粒子砲の充填に全力を注ぐ、そっちはお前たちに任せたぞ、いいな!』
「了解!……行こう、ヴェンデッタ」
……と言うか、45体?!
Ξ標的、45体?!?!?!?!
「……ブラン、ちょっと揺れるけどごめんね」
「ああ、もちろん分かっておおおおおおおおっ?!」
ヴェンデッタの移動スピード。それは前のヴェンデッタとは比べ物にならないほどに変わっている。
ヴェンデッタのアークレイと一部融合し、その効力を数十倍にも高められた魔力機関。機巧天使ヴェンデッタ本来の力と、人界軍の作り出したシステムが合わさったパワーは、並のサイドツーの比にもならない……!
「Cキャノン、コンパクトアップグレード……魔伝導出力全開、ヤツらが撃つ前に、ここで仕留めるっ!」
機動戦艦、ヒノカグツチ直上。
一瞬にしてそこまで移動した僕たちは、ビットが装着され出力が数十倍に跳ね上がったCキャノン2丁を構える。
「Ξ標的、45体…………コイツらか!」
ヴェンデッタの思考を通じて、僕の頭の中にも、敵の居場所が直感的に伝わる。
……敵は、島!
この島そのものを囲むように、今まさに全方向より、ヒノカグツチに向けて初期照射を始めている……!
「Cキャノン、フルマップハイバーストッ!」
敵の位置は分かっている、ならば後はこのCキャノン超極大最大出力放射を、ヤツらに当てるのみだ。
「うおおおおおおっ!」
旋回しゆく視界。2秒にして一周した視界の奥に、天へ登りゆく爆煙が映り込む。
「おい、ケイ……今の、お前がやったのか……?
島を覆うΞ標的、45体を……お前が……?」
「……僕が、じゃない。僕とヴェンデッタが、だよ」
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