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第一次真珠海作戦(後)

Side-other: 魔力質量攻撃

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 ヒノカグツチ上陸後、5分後。

 Ξ標的密集地、上空1000メートル。
 サイドツー・ノインツェーン群・魔導大隊機動部隊。

 その直下に現るるは、水色に光る魔法陣。徐々に形成されていく氷の結晶。

『魔術氷塊形成完成率、45パーセントを突破』
『各魔力機関伝導率80パーセントを維持。全魔力機関、臨界状態を維持したまま、出力も安定しています』


『……真珠海作戦総司令部より伝令、

 ヒノカグツチ、上陸! ヒノカグツチ、上陸! 速やかに魔力質量攻撃の開始を求むとのことです、以上!』

 

『こちら魔導大隊指揮官、ブレンダ。これより、魔力質量攻撃の攻撃開始シーケンスを開始する。

 魔力氷塊形成のスピードを早めろ、今の時点でこれだけの完成度ならば、残り数分で完成するはずだ』

 魔法陣は輝きを増し、風と共に魔力が中心へと収束し始める。


『完成度、既に72パーセントを突破、凄まじい勢いです!』

『予測では、残り2分後に射出可能です!』


『———では、完成度が100パーセント———イメージ設計図通りに完成しだい、即座に射出しろ!

 ただでさえあの、へゔんずばぁすと……とかいう謎の現象が起こっているんだ、いつここの魔術式だって妨害されるかも分かったものではないからな!』


『95……6、8、9…………いけます!』
『魔力質量攻撃、射出装填準備! 風属性魔力投射推進力を、氷塊上部に発生させろ!』

 ノインツェーン群、全14機の直下に広がる、水色の氷塊。
 あまりにも分厚いその氷塊の上にもまた、多重に重ねられた魔法陣が発生した。

『氷塊上部に魔力収束、属性付与、完了、いつでも!』



ーーーーーーっ!!!!』


◆◇◆◇◆◇◆◇


 ———2分後。
『ヒノカグツチ作戦司令部より伝令! 魔力質量投射攻撃、着弾! Ξ標的、全体の58パーセントが沈黙したとの報告であります!』

『Ξ標的、うち完全破壊に成功したのは4機!』
『直下にて、巨大魔法陣が発生、展開! ヘヴンズバーストが起きているのにも関わらず、凄まじい出力と魔力量です!』


『魔導大隊指揮官より各機に告ぐ!…………ノインツェーン魔導大隊機動部隊、大穴島西端部へ帰投!
 
 作戦仕様装備を外した後、陣形を組んで前線に出る! 着いてこい!』





********

 同時刻。
 ヒノカグツチ、作戦総司令部。

「真珠海作戦、第三段階への移行を認める!
 隠蔽工作魔導部隊に通達、超巨大規模魔法の発動を許可する!

 ヒノカグツチ壱式より、全艦に通達! まもなく、本艦は荷電粒子砲の発射シーケンスに入る、クルーは全員所定の位置につき、各機器動作の最終チェックにあたれ!

 魔力機関の電力は、80パーセントを航行用から荷電粒子砲用に回せ! 最悪ヒノカグツチが浮いていればいい、荷電粒子砲の最大出力発射によるΞ標的殲滅を最優先目標とする!

 ……てな、あたりでいいかな、フリー」

 作戦及び、人界軍総司令、黒。そしてその会話に、呆れながらも応え続ける現副司令、フリー・ラナメル。

「最後のがダメです。そこで私に解を求めないでください」

「———だが、副司令にしてトランスフィールドカイラ国の戦略家———とあらば、こういうのを聞くのが普通だろう」

「………………くだらない」

 と、呆れ返ったフリーは一蹴してみせたが、これまで作戦の具体的な指示など全く出したことのなかった黒本人にとっては、これほどないまでに重要な質問だったのだ。



「ボケっとしないでください。各員、動作チェック完了の報告がウィンドウに出てますよ」

 黒の腰辺りまで伸びた台に埋まっているモニター、その中には、ヒノカグツチ内部各員からの報告ウィンドウで埋め尽くされていた。

「わ……分かっているさ、分かっている。決して考え事をしていたわけではない」

「……くだらない。なんでそんな謎の意地を張るのか、私には理解できません———」

「理解できないなら無理にしなくとも———」

「———貴方のようないい年こいた青年が、なぜにそんなことに固執するのか……子供ですか?」

「コイツ……ッ!」

 これが現人界王である。

 大規模作戦中、ウィンドウに山ほど報告が溜まっていると言う状況下においても、副司令のちょっとした挑発にすぐ乗せられ、すぐ副司令につかみかかる幼稚な艦長。

「幼稚ですね」
「まだ煽るかお前……!」

「———でも、無能ではない。そこは確かです」

「は……?」

 突然の賞賛に戸惑う様子を見せつつ、黒が目を向けたモニターは、既に何もなかった。

「片手間ですけど、既読は付けておきました」

「……なるほどな、そうだそうだよ、お前は有能だ、もうこの際それで良いから俺の邪魔をしないでくれ」

「話しかけたのはそっちでは?」


「もう俺は、何も返さんからな…………


 ヒノカグツチ壱式全艦に通達! 超巨大規模魔法が発動し次第、その成果の成否を問わずに、本艦は魔力機関式正面荷電粒子砲の発射準備に入る!

 各員、第一種戦闘体制にて待機! 魔力機関の出力は、あらかじめ発射に向けて上げておけ、以上!」
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