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Side-2:最悪へと向かう風上
分かり合えぬ人々
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……でもやっぱり、殺すしかないのか、と。
残酷な現実を憂いて、またサイドツーを前進させる。
『おおおおおおあああああっ!!!!』
敵パイロットの、命を絞り出したような雄叫びが聞こえる。……こっちに来ている、2機か……!
「来い、相手になってやるぜ、このブラン・カーリーがなっ!」
眼前、およびレーダーには、こちらに向かって進み続ける2機のサイドツーが。
しかし互いに持つ武器は長刀、背部の兵装担架にも長刀———そんなに長刀が好きなのか?
……日ノ國のヤツらだったりするのか、とも思ったが、そんなこと考えている場合じゃない。
今俺のサイドツーが持っている武器は、左腕部にサイドツー用ライフル、右腕部に長刀———ライフルで狙うのはいいが、ヤツらの機動はすばしっこすぎる。
……だが、直接当てないと言うのならば話は別だ。
「錬成、開始……!」
俺が今から放つ銃弾———それらに今伝導しているのは、俺自身の魔力だ。
「普通の弾じゃねえ…………凍結炸裂弾だっ!」
トリガーを引く。
撃ち出された弾は、ライフルより出た瞬間に、その表面より小規模な氷の柱を出現させる。
『のわっ、スラスターエンジンがあっ?!』
別に直接当てる必要はないんだ、横向きの氷の柱となって、撃ち出した場所にて炸裂———氷の固体化された衝撃波をその場に形作るのだから。
相手からしてみれば、氷の棘の生えたウニが、数十発も超スピードでこちらに向かってくるようなもの。
例え高機動を以て避けられるとは言えど、氷の柱が炸裂することだけは予想外だったはずだ……!
「…………俺の勝ちだな」
『ちくしょう、コイツ……!』
『舐めやがって……っ!』
これでとりあえずここは終わりか、と気を抜いた瞬間、俺は猛スピードでこちらに迫る影をレーダーに見つけた。
「もう1機……来るかっ!」
残り残弾———ディスプレイに表示されたその数は、残り16発。……これだけあれば十分すぎるくらいだ。
そのもう1機の敵も、武装は長刀3本。いくら唐突な攻撃、咄嗟の対応とは言えど、これだけあって負ける理由は……ないっ!
「コイツで締めるっ!」
撃った弾、それに込めた氷魔術は敵に命中して———、
「っな、何……っ?!」
命中———してない!
クソッ、弾が届く寸前でスラスターを吹かして跳び上がりやがった……!
「……弾切れ……チッ、クソがよぉっ!」
舞い上がる敵機に狙いを合わせ続けていたが、その努力虚しく、銃身は煙を上げ沈黙する。
装填している時間は———ない、ここからは確実に、白兵戦に持ち込まれる……!
「あぁもう、なんでも来やがれ……俺がこの手で斬り倒してやるよっ!」
上から迫り来る敵機。一瞬にして縮まる距離。俺は未だ動くことはなく、その場に立ち尽くしていただけだった。
……が、敵を寸前に捉えた瞬間、俺もスラスターを吹かして敵に突進する。
「が……っ、ぐぐぅ……っ!」
敵機の長刀とこちらの長刀同士が互いに抑え合い、一瞬の膠着———拮抗状態が生まれる。
互いにスラスターは全速力、どちらも気軽に引けるような力の入れようではなかった。
『引くがいい、第0機動小隊、そしてトランスフィールド! ここは貴様らが手を出すべき問題ではないのだぞ!』
敵機……の、クーデター軍……日ノ國を含めた近衛騎士軍の声か……!
「知るかよ……テメェらを行かせるわけにはいかねえんだよ……!」
『……何がしたくて、貴様らは戦うのだ!』
「そっちこそ何がしたいんだよ、俺たちが前線に出て、死ぬような思いして戦っている間に、テメェらはぬくぬく反乱計画を練ってたってのか、ああ!
命を……張る場所、間違えてんじゃねえぞ!」
『ぬくぬく……だと……馬鹿にするのも大概にしろ……っ!』
互いの刃が反発し合う。しかしスラスターは互いに全速力、そのまま何度も何度も剣先は触れ合い、次第に空へと舞い上がる。
『国を売って……トランスフィールドなんぞに隷属した売国奴共がっ!』
「サイドツーなんぞを使ってるテメェらに、それを言う資格はねえだろ!」
『それはこっちの台詞だ……トランスフィールドにこのまま権力を握らせるつもりか……!
クーデターを収めた———その事実だけで、トランスフィールドの発言力は跳ね上がる……結果、人界軍は王都諸共ヤツらに乗っ取られ、我々の自由は失われる羽目になるのだぞ!
……既にサイドツーの供給という事実がある中で、これ以上ヤツらの好き勝手にさせるつもりか?!
ヤツらの狙いは戦争だ、このままであれば、オリュンポスとの戦争が終わった後も、カイラ国以外のトランスフィールドともやり合う羽目になるのだぞ……!
それでも……それがいいと言うか、それとも貴様は日和見主義者か?!』
「っるせーなぁ……んなもん気にするより、まずはやることがあるだろつってんだよ、いい歳こいてなんで分からないんだよクソババアッ!」
『オリュンポスは後回しで構わない、だが、コレは今の問題だ! 今我々が直面している魔族と、そして国の実権をかけた戦いなのだ、分かったのならそこをどけぇっ!』
「どいてたまるか……国のためだなんだって言うが、オリュンポスを倒すためだけに団結できないような国なら滅んだ方がマシだババアッ!」
『またババアっ……やはり貴様、そのクチだったか……っ! 腐りきった性根、その機体諸共斬り捨ててやろうっ!』
「言っても分かんねえようなら、実力で打ち負かしてやるよおおおおおおっ!」
残酷な現実を憂いて、またサイドツーを前進させる。
『おおおおおおあああああっ!!!!』
敵パイロットの、命を絞り出したような雄叫びが聞こえる。……こっちに来ている、2機か……!
「来い、相手になってやるぜ、このブラン・カーリーがなっ!」
眼前、およびレーダーには、こちらに向かって進み続ける2機のサイドツーが。
しかし互いに持つ武器は長刀、背部の兵装担架にも長刀———そんなに長刀が好きなのか?
……日ノ國のヤツらだったりするのか、とも思ったが、そんなこと考えている場合じゃない。
今俺のサイドツーが持っている武器は、左腕部にサイドツー用ライフル、右腕部に長刀———ライフルで狙うのはいいが、ヤツらの機動はすばしっこすぎる。
……だが、直接当てないと言うのならば話は別だ。
「錬成、開始……!」
俺が今から放つ銃弾———それらに今伝導しているのは、俺自身の魔力だ。
「普通の弾じゃねえ…………凍結炸裂弾だっ!」
トリガーを引く。
撃ち出された弾は、ライフルより出た瞬間に、その表面より小規模な氷の柱を出現させる。
『のわっ、スラスターエンジンがあっ?!』
別に直接当てる必要はないんだ、横向きの氷の柱となって、撃ち出した場所にて炸裂———氷の固体化された衝撃波をその場に形作るのだから。
相手からしてみれば、氷の棘の生えたウニが、数十発も超スピードでこちらに向かってくるようなもの。
例え高機動を以て避けられるとは言えど、氷の柱が炸裂することだけは予想外だったはずだ……!
「…………俺の勝ちだな」
『ちくしょう、コイツ……!』
『舐めやがって……っ!』
これでとりあえずここは終わりか、と気を抜いた瞬間、俺は猛スピードでこちらに迫る影をレーダーに見つけた。
「もう1機……来るかっ!」
残り残弾———ディスプレイに表示されたその数は、残り16発。……これだけあれば十分すぎるくらいだ。
そのもう1機の敵も、武装は長刀3本。いくら唐突な攻撃、咄嗟の対応とは言えど、これだけあって負ける理由は……ないっ!
「コイツで締めるっ!」
撃った弾、それに込めた氷魔術は敵に命中して———、
「っな、何……っ?!」
命中———してない!
クソッ、弾が届く寸前でスラスターを吹かして跳び上がりやがった……!
「……弾切れ……チッ、クソがよぉっ!」
舞い上がる敵機に狙いを合わせ続けていたが、その努力虚しく、銃身は煙を上げ沈黙する。
装填している時間は———ない、ここからは確実に、白兵戦に持ち込まれる……!
「あぁもう、なんでも来やがれ……俺がこの手で斬り倒してやるよっ!」
上から迫り来る敵機。一瞬にして縮まる距離。俺は未だ動くことはなく、その場に立ち尽くしていただけだった。
……が、敵を寸前に捉えた瞬間、俺もスラスターを吹かして敵に突進する。
「が……っ、ぐぐぅ……っ!」
敵機の長刀とこちらの長刀同士が互いに抑え合い、一瞬の膠着———拮抗状態が生まれる。
互いにスラスターは全速力、どちらも気軽に引けるような力の入れようではなかった。
『引くがいい、第0機動小隊、そしてトランスフィールド! ここは貴様らが手を出すべき問題ではないのだぞ!』
敵機……の、クーデター軍……日ノ國を含めた近衛騎士軍の声か……!
「知るかよ……テメェらを行かせるわけにはいかねえんだよ……!」
『……何がしたくて、貴様らは戦うのだ!』
「そっちこそ何がしたいんだよ、俺たちが前線に出て、死ぬような思いして戦っている間に、テメェらはぬくぬく反乱計画を練ってたってのか、ああ!
命を……張る場所、間違えてんじゃねえぞ!」
『ぬくぬく……だと……馬鹿にするのも大概にしろ……っ!』
互いの刃が反発し合う。しかしスラスターは互いに全速力、そのまま何度も何度も剣先は触れ合い、次第に空へと舞い上がる。
『国を売って……トランスフィールドなんぞに隷属した売国奴共がっ!』
「サイドツーなんぞを使ってるテメェらに、それを言う資格はねえだろ!」
『それはこっちの台詞だ……トランスフィールドにこのまま権力を握らせるつもりか……!
クーデターを収めた———その事実だけで、トランスフィールドの発言力は跳ね上がる……結果、人界軍は王都諸共ヤツらに乗っ取られ、我々の自由は失われる羽目になるのだぞ!
……既にサイドツーの供給という事実がある中で、これ以上ヤツらの好き勝手にさせるつもりか?!
ヤツらの狙いは戦争だ、このままであれば、オリュンポスとの戦争が終わった後も、カイラ国以外のトランスフィールドともやり合う羽目になるのだぞ……!
それでも……それがいいと言うか、それとも貴様は日和見主義者か?!』
「っるせーなぁ……んなもん気にするより、まずはやることがあるだろつってんだよ、いい歳こいてなんで分からないんだよクソババアッ!」
『オリュンポスは後回しで構わない、だが、コレは今の問題だ! 今我々が直面している魔族と、そして国の実権をかけた戦いなのだ、分かったのならそこをどけぇっ!』
「どいてたまるか……国のためだなんだって言うが、オリュンポスを倒すためだけに団結できないような国なら滅んだ方がマシだババアッ!」
『またババアっ……やはり貴様、そのクチだったか……っ! 腐りきった性根、その機体諸共斬り捨ててやろうっ!』
「言っても分かんねえようなら、実力で打ち負かしてやるよおおおおおおっ!」
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