141 / 237
Side-2:第一次真珠海作戦(前)
開幕の狼煙
しおりを挟む
◆◇◆◇◆◇◆◇
『ベーゼンドルファー、反応消失しました』
人界軍、王都司令部。
そのレーダーは、あの場に起こった異常を感知し続けていた。
『神力反応点も、魔力反応点も消失。反転作用も無効化され、元の世界に戻っていきます』
淡々と、その現状が報告されていく。
ベーゼンドルファーの引き起こした異常、終わる世界の一瞬の一幕、ハイパーゾーン。
その明らかな異常が収まり、そしてベーゼンドルファーが失踪するのを、誰もが指を咥えて見ていることしかできていない中。
その非常事態は、間髪入れずに迫ってしまった。
『……おい、嘘だろ……?!』
『なん……なんで、コレ……?!』
暗闇のレーダーに、湧き上がる反応点。
次第にその数は増していき、そのあまりの異常事態に皆が皆気付いてゆく。
『神話的生命体と断定、神力波長パターン……一致しました!』
『Ξ標的、多数出現! 真珠海直上です!』
Ξ標的。
第一次王都防衛戦にて猛威を振るった、神力光線を放つ最強の神話的生命体。
サイドツーパイロットとなった人界軍兵士の、その大半の命をたった2体で奪い去った、人類の仇。
そんなΞ標的が、多数。
『数は———千っ!』
多数。千体。
たった2体で人界軍を壊滅寸前にまで追い込んだ最悪の化身が、千体。
『せ……千っ?!』
『おい! 聞き間違えてない……よな、Ξ標的……だよなぁ?!』
『嘘だろ……勝てっこないぞ、せっかくサイドツーカスタムも建造が進んだってのに……!』
怨嗟に包まれる人界軍司令室。
オペレーターの人々も、正常な判断を失いかけたその時。
「ヒノカグツチだ、火之迦具土神・壱式を出すぞ!
魔導大隊機関荷電粒子砲の試し撃ちの時だ!」
そう発したのは、現人界王にして、人界軍総司令たる『黒』だった。……が、その言葉にオペレーター一同は驚愕する。
『いや……でも、アレはまだ試作段階で……』
「一応完成はした、と聞いただろう!
試しに撃ってみるんだよ、そのためのいい的が都合よく現れてくれただろう!」
『いい的……って……』
『非常事態なの分かってて……!』
「逃げても死ぬ、進んでも死ぬ。ならばせめて進んで、行けるとこまで行って死んでみようか!」
「…………前の人界王ならば……そのようなことは言わなかったはずですよ」
どこか熱く自論を話す黒を静止するのは、人界軍副司令たるフリー・ラナメルという名の女だった。
「せめて、せめてもう少しだけでも冷静になりましょう、現人界王。そのような特攻に近い作戦というのは———」
「ならば何もせず死を待つのみか? 冷静になって考えようと、まずはこの窮地を乗り切るのが先決なはず。
それにな、ここまでΞ標的を放ってきたということは、敵も本気でこちらを潰しにきていることの証なんだ。
……だからこそ、ここで俺たちは逃げちゃいけない。ここで逃げれば、所詮はその程度のヤツらだと思われ、全戦力を投入されてお終いだ。
強大な敵が慢心しているうちに、その隙を突く。でなければ、俺たち人界軍に勝利はない。そうだろう? フリー・ラナメル」
『ベーゼンドルファー、反応消失しました』
人界軍、王都司令部。
そのレーダーは、あの場に起こった異常を感知し続けていた。
『神力反応点も、魔力反応点も消失。反転作用も無効化され、元の世界に戻っていきます』
淡々と、その現状が報告されていく。
ベーゼンドルファーの引き起こした異常、終わる世界の一瞬の一幕、ハイパーゾーン。
その明らかな異常が収まり、そしてベーゼンドルファーが失踪するのを、誰もが指を咥えて見ていることしかできていない中。
その非常事態は、間髪入れずに迫ってしまった。
『……おい、嘘だろ……?!』
『なん……なんで、コレ……?!』
暗闇のレーダーに、湧き上がる反応点。
次第にその数は増していき、そのあまりの異常事態に皆が皆気付いてゆく。
『神話的生命体と断定、神力波長パターン……一致しました!』
『Ξ標的、多数出現! 真珠海直上です!』
Ξ標的。
第一次王都防衛戦にて猛威を振るった、神力光線を放つ最強の神話的生命体。
サイドツーパイロットとなった人界軍兵士の、その大半の命をたった2体で奪い去った、人類の仇。
そんなΞ標的が、多数。
『数は———千っ!』
多数。千体。
たった2体で人界軍を壊滅寸前にまで追い込んだ最悪の化身が、千体。
『せ……千っ?!』
『おい! 聞き間違えてない……よな、Ξ標的……だよなぁ?!』
『嘘だろ……勝てっこないぞ、せっかくサイドツーカスタムも建造が進んだってのに……!』
怨嗟に包まれる人界軍司令室。
オペレーターの人々も、正常な判断を失いかけたその時。
「ヒノカグツチだ、火之迦具土神・壱式を出すぞ!
魔導大隊機関荷電粒子砲の試し撃ちの時だ!」
そう発したのは、現人界王にして、人界軍総司令たる『黒』だった。……が、その言葉にオペレーター一同は驚愕する。
『いや……でも、アレはまだ試作段階で……』
「一応完成はした、と聞いただろう!
試しに撃ってみるんだよ、そのためのいい的が都合よく現れてくれただろう!」
『いい的……って……』
『非常事態なの分かってて……!』
「逃げても死ぬ、進んでも死ぬ。ならばせめて進んで、行けるとこまで行って死んでみようか!」
「…………前の人界王ならば……そのようなことは言わなかったはずですよ」
どこか熱く自論を話す黒を静止するのは、人界軍副司令たるフリー・ラナメルという名の女だった。
「せめて、せめてもう少しだけでも冷静になりましょう、現人界王。そのような特攻に近い作戦というのは———」
「ならば何もせず死を待つのみか? 冷静になって考えようと、まずはこの窮地を乗り切るのが先決なはず。
それにな、ここまでΞ標的を放ってきたということは、敵も本気でこちらを潰しにきていることの証なんだ。
……だからこそ、ここで俺たちは逃げちゃいけない。ここで逃げれば、所詮はその程度のヤツらだと思われ、全戦力を投入されてお終いだ。
強大な敵が慢心しているうちに、その隙を突く。でなければ、俺たち人界軍に勝利はない。そうだろう? フリー・ラナメル」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイニング・ソルジャー
立花 Yuu
SF
世界の人々が集うインターネット上の仮想世界「ユグド」が存在するちょっと先の未来。
日本の沖縄に住む秦矢は今時珍しいエンジンバイクの修理店兼スクラップ店を営んでいる。副業で稼ぐために友達から勧められた「マイニン・ワールド」に参加することに。マイニング・ワールドとは仮想世界「ユグド」で使用されている暗号通貨「ユード」の「マイニング(採掘)」競争だ。エイリアン(暗号化技術でエイリアンに化けた決済データ)を倒してこ使い稼ぎをする日々がスタートさせるのだが、見知らぬ人物が突然助っ人に⁉︎
仮想世界と暗号通貨が織りなす、ちょっと変わった友情劇とアクションありのSF小説!
異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜
福寿草真
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】
何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。
魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!?
これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。
スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。
採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~
一色 遥
SF
スキル制VRMMORPG<Life Game>
それは自らの行動が、スキルとして反映されるゲーム。
そこに初めてログインした少年アキは……、少女になっていた!?
路地裏で精霊シルフと出会い、とある事から生産職への道を歩き始める。
ゲームで出会った仲間たちと冒険に出たり、お家でアイテムをグツグツ煮込んだり。
そんなアキのプレイは、ちょっと人と違うみたいで……?
-------------------------------------
※当作品は小説家になろう・カクヨムで先行掲載しております。
お兄ちゃんの装備でダンジョン配信
高瀬ユキカズ
ファンタジー
レベル1なのに、ダンジョンの最下層へ。脱出できるのか!?
ダンジョンが現代に現れ、ライブ配信が当たり前になった世界。
強さに応じてランキングが発表され、世界的な人気を誇る配信者たちはワールドクラスプレイヤーと呼ばれる。
主人公の筑紫春菜はワールドクラスプレイヤーを兄に持つ中学2年生。
春菜は兄のアカウントに接続し、SSS級の激レア装備である【神王の装備フルセット】を持ち出してライブ配信を始める。
最強の装備を持った最弱の主人公。
春菜は視聴者に騙されて、人類未踏の最下層へと降り立ってしまう。しかし、危険な場所に来たことには無自覚であった。ろくな知識もないまま攻略し、さらに深い階層へと進んでいく。
無謀とも思える春菜の行動に、閲覧者数は爆上がりする。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
ジュラシック村
桜小径
SF
ある日、へんな音が村に響いた。
ズシン、ズシン。
巨大なものが村の中を徘徊しているような感じだ。
悲鳴もあちこちから聞こえる。
何が起こった?
引きこもりの私は珍しく部屋の外の様子がとても気になりはじめた。
毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー活劇〜
天海二色
SF
西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。
珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。
その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。
彼らは一人につき一つの毒素を持つ。
医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。
彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。
これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。
……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。
※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
特別展「毒」 公式図録
くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ
ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科
その他広辞苑、Wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる