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Side-2:最悪へと向かう風上

旋律、暴走

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 視界は白に染まった。
 モニター越しだから、ヴェンデッタが見ているから———とか何とかも関係なく、一点の濁りなしに全てが白く染まった。

『ハイパーゾーン、完全消滅を確認! ヘヴンズバーストも起きていない、どうなった?! 第0機動小隊各員、状況は?!』

「こちらコーラス2……まえがみえませぇんっ!」

『アホかっ!』

「光が……光がピカーって来たんです、ピカーって!」

『他! 現状が分かる者は?!』


『こちらコーラス14、ランド。同じく閃光で目を眩まされました。……依然前方には何も見えず、他の隊員も同じかと』


 ……と。ようやく視界が晴れてきたので、それを報告しようと回線を開いた直後、私は見てしまった。



「……え、うそ……アレ、まさかベーゼン……?」


 白の閃光。その残り香が舞う中、スラスターをも使わずに浮いていた機体があった。

 頭上に天使のモノと思しき円環を携え。胸部より這い出たもう2つの腕を足して、合計4本もの腕を獲得した———異形とも呼べるサイドツー。

 ところどころに昔の面影は残しているものの、基本的に鋭く尖ったモノへと変貌した各部装甲。

 ———だが、顔面部にあるバイザーと、その奥より覗かせる単眼は———ソレが紛れもなく『ベーゼンドルファー』であることを意味していた。


「……前……よりカッコいい……けど、何アレ……?!」

『コーラス2、どうした?! 応答を願う!』

「ベーゼン……ドルファー、です。……生まれ変わっています、アレは———元のベーゼンドルファーじゃありません……!

 ……パイロットに、通信を試みてみます」


 生まれ変わったベーゼンドルファーは、未だに微動だにしていなかった。まるでソレに意味があるかの如く、今までの姿勢、高度を維持し続けていたままだった。


「ベーゼンドルファーのパイロットさん、聞こえる?……こちら第0機動小隊のリコ・プランク! 何の目的でベーゼンドルファーを持ち出したのか———」

 言い終わる前に、その声は話し始めた。


『コレハ祝福ダ。……我々ト私ノ中デノ規約ニ則ッタ正当ナ行為ダ。貴様ラニ邪魔立テヲスル権利ハナイ』

 ブランの声———だったが、話し方が異様だ。サイドツーの機械音声を聞いている———いや、それ以上に無機質で機械的な声だった。

「……ブラン、一体どうしちゃったの……?」

『祝福ダ。祝福ノ音楽。奏デシ旋律、越神伴奏。我々ニ名付ケラレタ名ダ。

 コレハ、祝福ダ』

 その言葉を聞いた瞬間、ベーゼンドルファーの周囲に魔法陣と思しきモノが出現し始める。……何をする気だ……?

『祝福ヲ受ケヨ。死ト言ウ名ノ、祝福ヲ!』

 ベーゼンドルファーの周囲に展開された、16もの魔法陣。その全ての正面が、こちらへと向けられる。
 その時にはすでに、16もの巨大な神力反応がレーダーに映っていた。

「まず……っ!」


 ———だが、慌てふためく私の眼に映ったものは、一面に広がる鉄のような何かだった。

 ……まさか、盾?


『……リコちゃん、遅くなってごめんなさい。

 コーラス10、ニンナ・イスペル、ただ今より戦闘に合流します!……あと、他の第0機動小隊のみなさんも……』

『ヒュー、あぶねーーっ!……間に合ってよかったぜ…………秀徳、戦闘に合流だぜ!』
『……僕もいる。……けど、コレは少し危なそうだね』

 第0機動小隊メンバー……間に合った!

「みんなありがとう!……ただ、どうするの……?」


 ニンナが持ってきた盾により、ベーゼンドルファーの放った低出力神力光線は防げた。
 ……だが、ベーゼンドルファーは未だにそこにいる。……中にいるであろうブランだって、どこか様子がおかしい。

『我々ノ祝福ヲ拒ム……?
 ……ソンナニ死ガ怖イカ、貴様ラハ』


「とりあえず、アイツのユニットコンテナを強制的に射出させる……近づいて直接するのは私がやる、他の全員は陽動……でいいよね?」

『ああ、先行は僕がするよ。……秀徳のやつには任せておけない』

『何だとランドこのやろーーっ!……クッソ、俺にだってできるところ見せてやる……!』

『やめてよ、こんな時に喧嘩なんて……』


「じゃあ決まりね……止めるよ、ブランのヤツを!」
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