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Side-1:希望と贖いの旅々(後)
困惑のはじまり
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『……なあ、そろそろ開けてもいいよな?』
『さあ。……オレには分かんねえよ、兄貴……』
『いいや! ここまでしてやったんだ、むしろ俺の方は感謝してほしいくらいだ!
開けてみせるぜ、出てこいトゥルース! お前の本当の姿を見せてみろ!』
え———。
バゴンッ!
鉄の板は歪んで、轟音を奏でながらひしゃげ、その表面より外れゆく。
「おっ、お~……いやあ、コイツ……もう死んでんじゃね?」
「食料をやってみるのはどうすか、兄貴?」
「食料……か、ならパンだな! ちょっと待ってろ!」
……?
何だ、この声。
さっきからゴンガンゴンガンと鉄がうるさいと思ったら、まさかこの声のせいなのか……?
「ほぉ~れ、ほほほぉ~れ、コイツが欲しいか~?」
匂い。嗅いだ瞬間分かった、コレはパンだ、僕の頬に押し付けられたコレはパンだ!
「ハムっ!」
犬のように。ソレを待つ家畜のようにかぶりつく。瞬間、視界が持ち上がった。
「いよっしゃ~、釣れたあっ!」
「完璧な作戦、恐れ入るっす!」
………………なにこれ?
パンを口に頬張った瞬間、視界と体が持ち上がって、まるで釣られた魚のようにその2人の顔を凝視する。
赤い服を着た少年……と、青い服を着た黒人の大男だった。
「ふへはっ?」
「っははははっ、コイツ口にパン頬張りながら喋ってるぜ! おかしすぎだろ、なあ!」
「っぷ、くくくくくっ……!」
「…………笑われてる……」
何で僕はここから引きずり出されたのか、何のためにコイツらがそんなことをしたのか。
僕には何も分からないままだった。
「よお、トゥルース!……ああいや、お前とは初対面なんだがな、お前のことは話で聞いてるぜ、街の英雄さん!」
「街の……えい、ゆう……ですか、僕が」
「ああ、そうだ!……っと、まだ自己紹介がまだだったな……俺の名前はガス! そして、俺の横にいるこの青いヤツが……ジェールズだ!」
「どうも、ジェールズです。よろしくぅ」
は、はあ……とため息混じりの困惑の声を漏らすこともなく。
僕はただ、その状況に流されることしかなかった。
「どうした?……なんか浮かない顔だな……そうだ、お前腹減ってんだろ? うちに来ないか? 色々とこっちは暇してるんだ、お前みたいなのがいるとこっちにとっても嬉しいんだが……」
「僕が……僕が行ってもいいんですか。……僕は…………人を、殺して……そして……」
「人を殺して……ってああ、あのサイドツーに乗ってた人界軍のヤツらのことか。
……まー……んー、気にすんな! んなもん気にしたもん負けだ! いつまでも引きずってないで、さっさと俺たちの家に行こうぜ? な?」
気にすんな……って、そんなこと……は……
「……兄貴は、お前のことを心配してくれている。……今のお前は哀れだ。……人を殺した、なんてことに囚われていても、何も始まらない」
「だってさ。……ああ、ちなみに家つってもすぐそこだから。
俺たちでサイドツーをここまで運んで、挙げ句の果てに修理までしてやったんだぜ? 感謝こそすれど、文句を言われる筋合いはないってもんだ!」
「は———、はあ……ありがとう……ございます……」
「メシは用意しとく———しといてるはずだから、気が向いたら家ん中来いよ! じゃあな!」
『さあ。……オレには分かんねえよ、兄貴……』
『いいや! ここまでしてやったんだ、むしろ俺の方は感謝してほしいくらいだ!
開けてみせるぜ、出てこいトゥルース! お前の本当の姿を見せてみろ!』
え———。
バゴンッ!
鉄の板は歪んで、轟音を奏でながらひしゃげ、その表面より外れゆく。
「おっ、お~……いやあ、コイツ……もう死んでんじゃね?」
「食料をやってみるのはどうすか、兄貴?」
「食料……か、ならパンだな! ちょっと待ってろ!」
……?
何だ、この声。
さっきからゴンガンゴンガンと鉄がうるさいと思ったら、まさかこの声のせいなのか……?
「ほぉ~れ、ほほほぉ~れ、コイツが欲しいか~?」
匂い。嗅いだ瞬間分かった、コレはパンだ、僕の頬に押し付けられたコレはパンだ!
「ハムっ!」
犬のように。ソレを待つ家畜のようにかぶりつく。瞬間、視界が持ち上がった。
「いよっしゃ~、釣れたあっ!」
「完璧な作戦、恐れ入るっす!」
………………なにこれ?
パンを口に頬張った瞬間、視界と体が持ち上がって、まるで釣られた魚のようにその2人の顔を凝視する。
赤い服を着た少年……と、青い服を着た黒人の大男だった。
「ふへはっ?」
「っははははっ、コイツ口にパン頬張りながら喋ってるぜ! おかしすぎだろ、なあ!」
「っぷ、くくくくくっ……!」
「…………笑われてる……」
何で僕はここから引きずり出されたのか、何のためにコイツらがそんなことをしたのか。
僕には何も分からないままだった。
「よお、トゥルース!……ああいや、お前とは初対面なんだがな、お前のことは話で聞いてるぜ、街の英雄さん!」
「街の……えい、ゆう……ですか、僕が」
「ああ、そうだ!……っと、まだ自己紹介がまだだったな……俺の名前はガス! そして、俺の横にいるこの青いヤツが……ジェールズだ!」
「どうも、ジェールズです。よろしくぅ」
は、はあ……とため息混じりの困惑の声を漏らすこともなく。
僕はただ、その状況に流されることしかなかった。
「どうした?……なんか浮かない顔だな……そうだ、お前腹減ってんだろ? うちに来ないか? 色々とこっちは暇してるんだ、お前みたいなのがいるとこっちにとっても嬉しいんだが……」
「僕が……僕が行ってもいいんですか。……僕は…………人を、殺して……そして……」
「人を殺して……ってああ、あのサイドツーに乗ってた人界軍のヤツらのことか。
……まー……んー、気にすんな! んなもん気にしたもん負けだ! いつまでも引きずってないで、さっさと俺たちの家に行こうぜ? な?」
気にすんな……って、そんなこと……は……
「……兄貴は、お前のことを心配してくれている。……今のお前は哀れだ。……人を殺した、なんてことに囚われていても、何も始まらない」
「だってさ。……ああ、ちなみに家つってもすぐそこだから。
俺たちでサイドツーをここまで運んで、挙げ句の果てに修理までしてやったんだぜ? 感謝こそすれど、文句を言われる筋合いはないってもんだ!」
「は———、はあ……ありがとう……ございます……」
「メシは用意しとく———しといてるはずだから、気が向いたら家ん中来いよ! じゃあな!」
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