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Side-1:希望と贖いの旅々(前)
死人のように
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「…………すごい、なあ」
郊外にサイドツーを降ろし、町までに足を進めた。ここに来るまでに見たちょうどいい大きさのシートを盗んで、それをフード代わりに被りながら町の大通りを歩く。
町の至る所で煙が上がっており、どうやら製鉄を行なっている町っぽいなという印象が真っ先についた。
だからだろうか、どこもかしこも完璧に『綺麗』と言えるような場所はなく、若干汚れているような雰囲気がどこにでもまとわりついていた。
「……ごはん……と、言っても、なあ……」
どこか炭がかった、石造りの道。人が覆い尽くすその道に接するようにできた、立ち並ぶ石造りの建物。
どこがどう言った役目を果たすのか、そんなことも何一つ分からずに、それでも足を進める。
町行く人々。そのどれにも話しかけることもなく、逆に不審がられて話しかけられることもなく。ただ腹を空かせて歩き続けた結果、いつのまにか夜になってしまっていた。
「……もう、夜、か……」
空腹は収まらない。何も食べるものすらなく、ただ座り込んで、虚無の空腹感の前に屈服する。
「ごはん…………が……ん……」
意識すらも朧げになってきた。今寝たら、自分の身がどうなるのかすらも分からない。座り込んだまま、何もかもが失われていくように。
「いい、や…………戻ろっ……かな……」
世界が暗闇に包まれる中、未だ焔を閉ざさぬ町。喧騒が胸を掻き立てるその町から、出ていくことを決心した。
何せ何もない。その町にいたって自分の今の状態が回復するわけでも、贖罪ができるわけでもない。このままじゃ、そんなものをする前に自分が死ぬ、と危機感を覚えたからだ。
だからと言って、依然鮮明としない意識を引きずって郊外に出る。
林の中。もはや暗闇で、目が慣れなければ何を見ているのかすら分からない林の中に、僕のサイドツーは隠されている。
———そして、手を伸ばした時。
1発の銃声が鳴り響いた。
「ひっ!」
銃弾は地面に当たった。牽制のつもりなのだろうか。
「やや、やっぱりな……おめぇも税金取りかよ!」
背から聞こえたのは、少しおどけた中年の声。やめてほしい。今は空腹で何もできないんだ。
「そったら鉄塊を持ち出して……またオイラたちから、多分に税金を奪い取る気だろ…………
誰が作った鉄で、テメェらのサイドツーができてるって思ってんだ……おい! なんか言ったらどーだよ、ええ?」
もう、何も聞きたくなかった。何も話したくなかった。それどころじゃ、なかったんだ。
「シカトかよ! おい!……ああ、あったまにきた……撃つぞ!
反応しないのなら撃つぞ! おい、聞いてるのか?!」
瞬間。
意識がぐらっと揺れて、何もかもが崩れ去った。
「…………アレ? オイラ、撃った……いや、撃ってない、オイラ撃ってねえのに……コイツ、なんで倒れてんだ……?」
頭から地に伏し、横になりながら。その状況に困惑する、小太りの中年を凝視する。
その、意識が、薄れ、ながら。
郊外にサイドツーを降ろし、町までに足を進めた。ここに来るまでに見たちょうどいい大きさのシートを盗んで、それをフード代わりに被りながら町の大通りを歩く。
町の至る所で煙が上がっており、どうやら製鉄を行なっている町っぽいなという印象が真っ先についた。
だからだろうか、どこもかしこも完璧に『綺麗』と言えるような場所はなく、若干汚れているような雰囲気がどこにでもまとわりついていた。
「……ごはん……と、言っても、なあ……」
どこか炭がかった、石造りの道。人が覆い尽くすその道に接するようにできた、立ち並ぶ石造りの建物。
どこがどう言った役目を果たすのか、そんなことも何一つ分からずに、それでも足を進める。
町行く人々。そのどれにも話しかけることもなく、逆に不審がられて話しかけられることもなく。ただ腹を空かせて歩き続けた結果、いつのまにか夜になってしまっていた。
「……もう、夜、か……」
空腹は収まらない。何も食べるものすらなく、ただ座り込んで、虚無の空腹感の前に屈服する。
「ごはん…………が……ん……」
意識すらも朧げになってきた。今寝たら、自分の身がどうなるのかすらも分からない。座り込んだまま、何もかもが失われていくように。
「いい、や…………戻ろっ……かな……」
世界が暗闇に包まれる中、未だ焔を閉ざさぬ町。喧騒が胸を掻き立てるその町から、出ていくことを決心した。
何せ何もない。その町にいたって自分の今の状態が回復するわけでも、贖罪ができるわけでもない。このままじゃ、そんなものをする前に自分が死ぬ、と危機感を覚えたからだ。
だからと言って、依然鮮明としない意識を引きずって郊外に出る。
林の中。もはや暗闇で、目が慣れなければ何を見ているのかすら分からない林の中に、僕のサイドツーは隠されている。
———そして、手を伸ばした時。
1発の銃声が鳴り響いた。
「ひっ!」
銃弾は地面に当たった。牽制のつもりなのだろうか。
「やや、やっぱりな……おめぇも税金取りかよ!」
背から聞こえたのは、少しおどけた中年の声。やめてほしい。今は空腹で何もできないんだ。
「そったら鉄塊を持ち出して……またオイラたちから、多分に税金を奪い取る気だろ…………
誰が作った鉄で、テメェらのサイドツーができてるって思ってんだ……おい! なんか言ったらどーだよ、ええ?」
もう、何も聞きたくなかった。何も話したくなかった。それどころじゃ、なかったんだ。
「シカトかよ! おい!……ああ、あったまにきた……撃つぞ!
反応しないのなら撃つぞ! おい、聞いてるのか?!」
瞬間。
意識がぐらっと揺れて、何もかもが崩れ去った。
「…………アレ? オイラ、撃った……いや、撃ってない、オイラ撃ってねえのに……コイツ、なんで倒れてんだ……?」
頭から地に伏し、横になりながら。その状況に困惑する、小太りの中年を凝視する。
その、意識が、薄れ、ながら。
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※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります
※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます
※この小説は国家資格である『毒劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。
参考文献
松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集
船山信次 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり
齋藤勝裕 毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで
鈴木勉 毒と薬 (大人のための図鑑)
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