上 下
101 / 237
罪の雨。

追憶ノ正体

しおりを挟む
 ゴルゴダ機関。
 聞き慣れないその組織名は、僕の中にいるの僕を表すのだと言うことは、言われなくても分かっていた。


 クーデター事件中に(僕の中だけで)発覚した、僕ではない僕。

 オリュンポスのスパイにして、ゴルゴダ機関とか言うそこの組織の部隊の隊長。

 の神技———超能力を用いて、『ケイ・チェインズ』に寄生し、その後その体と魂を乗っ取った、

 その本当の名を『』。
 ケイ・チェインズに入り込んだ、僕で僕じゃないけど僕だった、誰かだった———。


「……ゴルゴダ機関にいた時の記憶は、ほとんどありません。だから、ヘンな名前で呼ばれることには慣れてません。……僕から言うのもヘンですけど、ケイ……と呼んでくれれば……」

『分かりました、ケイさん———ケイさんと呼びましょう』
「仮称……って……ああいや、確かにそうか……」

 自分の中には、トゥルースの魂までも混同している。ケイとトゥルースの共存状態、ソレで何とか生命を保っているのが今の僕なんだ。

『まず、貴方の身柄はこれから数週間……あるいは拘束させていただきます。貴方はその間、与えられた使命をただこなしていただければそれでいいです。
 ……何をされるのかは知りませんけど、ただ1つ。


 もう貴方に自由は、よ』


 その声に驚いて右を向いた時。僕は今この部屋にいる2人の人影を認識した。

 1人は太り気味にして、子供……くらいの背の高さをした、僕より二回りくらいちっちゃい男。
 もう1人は白衣を身に纏った、かなりデカい女性だった。

 ……どこがデカいかと言われると、具体的に3つくらい挙げられるけど。


「自由はない、ってどう言うことですか」

『そのままの意味だよ、申し訳ないけれど、もう君には自由行動をさせてはいけないんだ。……特に、ヴェンデッタ2号機に会わせるのだけは、絶対に』

『ブドゥー博士の言う通りです。…………もう、もうダメなんですよ……貴方は、もう戦ってはいけないんです……!』


 戦ってはいけない———だと?
 自由はない、戦ってはいけないなんて……いやでも、それは……

 従うしか、ないのか?
 何が起きたか分からない、そもそも何で僕がここにいるのか、なぜあのような惨状が起きて———僕がそれを引き起こしてしまったのか。

 何もかも分からないことだらけ。思えばいつもこうだが、もはやそんなこと今の僕にはどうでもよくなっていた。


 それよりも聞きたいことがあった。
 よく思い出してみれば、最後。意識が途切れる寸前に、僕は確かに———あの白い謎の物体に押し潰されたはずだ。

 なのにここにいて、そしてなぜかその場所で謎の現象が起きている。

 分からない。だからこそ、聞く必要があった。僕の手に入れたものは、ちゃんと残っていてくれているかを。


「……リコ…………は、リコは、生きていますか……?」


『リコ……リコ・プランクのこと……ですか、あの方は…………身体的な異常———はありませんでしたが、日常生活にやや支障をきたすような精神疾患が認められる……とのことで……』

「じ……じゃあ、元気に生きてるってことで……いいんですよね?!」

『……はい。彼女に関しては、の影響を受けていないと推測されています。彼女は、ですが』

「じゃあ、やっぱり……僕は…………」


『貴方もそうですが、受けた影響が色濃く残っているのは———の方です。
 先程の写真の白い柱。アレを構成する成分は塩で間違いはないのですが、その塩はもともとでした』

「は……?!」

 塩。
 そう、塩。海の底とか、色んなところに埋まってたりするあの、塩。
 魔物の肉に付けたりして食べる、あの調味料としての、塩。

 ソレの元が人間……だって……?


『意味が分からない……か、そうなるのも無理はない、そもそも人が塩になるなぞ、普通はあり得ない話だ。普通は、な。

 だがソレが、ヴェンデッタの引き起こしたヘヴンズバーストの、超極限空間内の事であれば、『普通』とは話が変わってくるのだよ』
しおりを挟む
感想 239

あなたにおすすめの小説

基本中の基本

黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。 もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。

GIGA・BITE

鵤牙之郷
SF
「鷹海市にはゾンビがいる」 2034年、海沿いののどかな町で囁かれる奇妙な都市伝説。 ごく普通の青年・綾小路 メロは、ある日ゾンビのように変貌した市民の乱闘に遭遇し、重傷を負う。そんな彼を救ったのは1人の科学者。彼はメロに人体改造を施し、【超獣】として蘇生させる。改造人間となったメロを待っていたのは、1つの町を巻き込む邪悪な陰謀だった…。 ※2024年4月より他サイトにて連載、既に完結した作品を加筆・修正したものです。

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

謎の隕石

廣瀬純一
SF
隕石が発した光で男女の体が入れ替わる話

処理中です...