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其は天命の刻、誰が為の決意
自惚れのエイユウ
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そうして、レイの戦いが佳境に達したころ。
ヘヴンズバーストが起きる数分前。いまだにケイたちは、クーデター軍との戦いに明け暮れていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ケイ、左後ろからも来てる!」
「大丈夫わかってる、僕に任せて!」
ヴェンデッタに乗ること。
ソレは、ヴェンデッタ自身と一心同体となることを示していた。
目の前の鉄の壁に透けるようにして見える、ヴェンデッタの外の風景———いや、これこそがヴェンデッタが見ていた風景だったんだと。
ヴェンデッタに追随する僕自身の感覚。外の風景をその肌に、装甲に感じているヴェンデッタの感覚、後ろからさりげなく僕の手をずっと握ってくれているリコの———僕の感覚。
その全てを鋭利に研ぎ澄まし、眼前より迫り来る敵を無力化する。なんてことはない、このヴェンデッタなら、造作もないことだった。
「でやぁぁぁぁあっ!」
スラスターを吹かして急接近してきた敵サイドツーの長刀を右に逸れて避け、そのまま長刀を振り回し、その武器を持っている方の腕だけを斬り落とす———このような単調の作業を、ただひたすら繰り返すだけだった。
サイドツー用小銃を持っていようがいまいが関係ない、攻撃を避け、隙間を縫うように攻撃を繰り返す。もはや何回目かを数えることすら忘れてしまうくらいに何度もやった。
もう、いろいろとハイになってたんだと思う。
後ろに彼女を乗せて戦っているという惚気もあれば、ヴェンデッタの片腕が無いという状況下でこれだけ戦えてるんだって余裕感もあったし、とにかく色々と浮かれてた。
自分がちゃんと戦えていること、自分の考えた綺麗事を本当に実現することができたということに、調子に乗ってたんだ。
リコにいいところを見せられた。カッコいいところを見せられた。それだけで。
カッコいい自分に。強い自分に、思いっきり自惚れていたんだ。
『……コレで終わり、か……コーラス7———いやケイ、よくやったな。まさか敵の全機体を、殺さずに無力化してみせるなんて…………』
「あ、セン隊長!……ありがとうございます。……僕自身もできるかどうかは不安でしたけど、今は———なんだってできる気がするんです。
……みんなが、ついてくれてるから」
気恥ずかしくはあったけれど、それは本当だった。
今回の一連の騒動の中で起きたこと。リコが僕を信じてくれたこと、僕がリコを信じると決めたこと、僕がヴェンデッタを信じると決めたこと。
……そして、僕が今の僕を信じると決めたこと。
その全てがなければ、今僕はこの場にいなかったのだから。
目の前に転がる、人界軍近衛騎士部隊のサイドツー。
しかしその全てが、武器破損や腕部破損によって無力化されているだけで、中の人間が死んでいるわけでは無いのだ。
……僕がそのようにやってみせたから。
できたんだ、僕にだって。実感はそんなに湧かないけど、コレは多分すごいことなんだって、そう言い聞かせる。そうでもしなければやっていけなさそうだった。
帰ろう、もうこんな場所にはいたくない、事後処理は誰がするか聞いてないけ———、
「……っまって、ケイッ!」
真後ろのリコの叫びにハッとする、何だと思って真後ろを向いた瞬間。
……地べたに突っ伏した、脚と片腕のないサイドツーが……もう片方の銃を装備している腕をこちらに向けているのを確認した。
直後。と言うより、僕がそれを視認するほんの少し前。
その音は、たった一瞬だけ鳴り響いた。
ヘヴンズバーストが起きる数分前。いまだにケイたちは、クーデター軍との戦いに明け暮れていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ケイ、左後ろからも来てる!」
「大丈夫わかってる、僕に任せて!」
ヴェンデッタに乗ること。
ソレは、ヴェンデッタ自身と一心同体となることを示していた。
目の前の鉄の壁に透けるようにして見える、ヴェンデッタの外の風景———いや、これこそがヴェンデッタが見ていた風景だったんだと。
ヴェンデッタに追随する僕自身の感覚。外の風景をその肌に、装甲に感じているヴェンデッタの感覚、後ろからさりげなく僕の手をずっと握ってくれているリコの———僕の感覚。
その全てを鋭利に研ぎ澄まし、眼前より迫り来る敵を無力化する。なんてことはない、このヴェンデッタなら、造作もないことだった。
「でやぁぁぁぁあっ!」
スラスターを吹かして急接近してきた敵サイドツーの長刀を右に逸れて避け、そのまま長刀を振り回し、その武器を持っている方の腕だけを斬り落とす———このような単調の作業を、ただひたすら繰り返すだけだった。
サイドツー用小銃を持っていようがいまいが関係ない、攻撃を避け、隙間を縫うように攻撃を繰り返す。もはや何回目かを数えることすら忘れてしまうくらいに何度もやった。
もう、いろいろとハイになってたんだと思う。
後ろに彼女を乗せて戦っているという惚気もあれば、ヴェンデッタの片腕が無いという状況下でこれだけ戦えてるんだって余裕感もあったし、とにかく色々と浮かれてた。
自分がちゃんと戦えていること、自分の考えた綺麗事を本当に実現することができたということに、調子に乗ってたんだ。
リコにいいところを見せられた。カッコいいところを見せられた。それだけで。
カッコいい自分に。強い自分に、思いっきり自惚れていたんだ。
『……コレで終わり、か……コーラス7———いやケイ、よくやったな。まさか敵の全機体を、殺さずに無力化してみせるなんて…………』
「あ、セン隊長!……ありがとうございます。……僕自身もできるかどうかは不安でしたけど、今は———なんだってできる気がするんです。
……みんなが、ついてくれてるから」
気恥ずかしくはあったけれど、それは本当だった。
今回の一連の騒動の中で起きたこと。リコが僕を信じてくれたこと、僕がリコを信じると決めたこと、僕がヴェンデッタを信じると決めたこと。
……そして、僕が今の僕を信じると決めたこと。
その全てがなければ、今僕はこの場にいなかったのだから。
目の前に転がる、人界軍近衛騎士部隊のサイドツー。
しかしその全てが、武器破損や腕部破損によって無力化されているだけで、中の人間が死んでいるわけでは無いのだ。
……僕がそのようにやってみせたから。
できたんだ、僕にだって。実感はそんなに湧かないけど、コレは多分すごいことなんだって、そう言い聞かせる。そうでもしなければやっていけなさそうだった。
帰ろう、もうこんな場所にはいたくない、事後処理は誰がするか聞いてないけ———、
「……っまって、ケイッ!」
真後ろのリコの叫びにハッとする、何だと思って真後ろを向いた瞬間。
……地べたに突っ伏した、脚と片腕のないサイドツーが……もう片方の銃を装備している腕をこちらに向けているのを確認した。
直後。と言うより、僕がそれを視認するほんの少し前。
その音は、たった一瞬だけ鳴り響いた。
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