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其は天命の刻、誰が為の決意
改めて
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「…………ん……んん……」
ブランはなんだかヤキモキしている。もどかしそうに顔を歪めて、今のウルプスさんの話について考えているようだ。
「ブラン少年よ、苦悩し迷う君に、とっておきの呪文を教えてやろう。
謝るんだ。自分の過去の過ちを認めて、謝ることこそ、理解につながる一歩だ。謝って、互いの事情を聞いて、そして納得できるところで『いいよ』と許せばいい。そんな簡単なことで、人間は分かり合えるはずなんだ」
でも、そんな簡単には行かない。簡単に謝ることができたのなら、簡単に納得することができたのなら、今こうはなっていない、と。
それでもウルプスさんは、せめて身近な課題からでもいいから、そこからでも『分かりあうこと』を始めようと言っているんだ。
———理解し、分かりあうこと……か。
「……ご……すまん……色々と…………魔族だからって、色々言ったのは……悪かった」
まさか。本当にブランが、ヤンスに対して頭を下げるなんて……!
みんなの視線は釘付けだ。そのように変わったブランを見て、まるで見直したような目線で皆はブランを見つめていた。
「お……んふ、分かったならいいでヤンスよ、どーせそこまで気に留めてもいないでヤンスから」
「そうだ、それで……そんな子供くさい方法でだって、人間は分かり合える。それを、いつまでも忘れないでくれ。
……最も、今反乱を起こしているヤツらには、そんなこと言っても聞かないだろうが」
今の一連の話を聞いていて、僕は僕自身を肯定されたような気がした。
『人を殺さずに戦闘を終える』、そんなことだけでも、分かり合える一歩には繋がるはずだ、と。
僕たちが本当に立ち向かわなくちゃいけない敵は、同じ人間じゃない。本当の敵は神なんだ、人間の力じゃ到底及ばない存在なんだ。
だからこそ、こんなところで殺し合いなんてしてる場合じゃない。みんなが分かり合えば、それでいいはずなのだから。
だからこそ僕は、これからも不殺を徹底する。たとえそれでどんな結末になったとしても、僕は受け入れるつもりだから。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「では、再度改めての現状の確認だ。ヤンス、気が済んだのならば報告を頼む」
「……まず、この空間の外は、西大陸のどこかの森だったでヤンス。どこか湿っぽくて……おそらく、南部の沼地じゃないかと思うでヤンス。
周りにサイドツーと思しきニオイはなし……だったでヤンスが、ちょっとばかり時間が経ったので今はどうなってるか分かんないでヤンス」
「……そうか、ご苦労だった。……南部と来れば都合がいい、目的地までかなりのショートカットになった。……20分後に出発だ、私のように……排泄などに時間を要するのであれば、早めに終わらせるが良い。以上だ」
……まあ、とりあえず。これからも僕は戦わなくちゃいけないのは確かだ。……この、ヴェンデッタに乗って。
人界王を送り届ける……ただそれだけでいいんだ、だけども……僕は心配なんだ、色々と。
前教官もだし、離れ離れになっちゃった隊長もそうだけど……何より、アイツの———リコのことが。
姿が見えないから……なのもあるけど、アイツは不審な言動を何回も繰り返していた。……もしかしたら……信じたくはないんだけれども、僕の敵に回ってしまってるかもしれない。だから———、
……いや、でも……そんなに気にかけることなのか?
そもそもなんで僕は、あんなヤツのためにここまで考えてるんだ。……本当に、どうでもいいはずだろ。
たとえ、もしアイツが既に死んでいたとしても。僕には何も関係のない話じゃないか。……なんで僕は、そんなに……
「何を思い詰めた顔をしておる」
ん……あれ?
ブランはなんだかヤキモキしている。もどかしそうに顔を歪めて、今のウルプスさんの話について考えているようだ。
「ブラン少年よ、苦悩し迷う君に、とっておきの呪文を教えてやろう。
謝るんだ。自分の過去の過ちを認めて、謝ることこそ、理解につながる一歩だ。謝って、互いの事情を聞いて、そして納得できるところで『いいよ』と許せばいい。そんな簡単なことで、人間は分かり合えるはずなんだ」
でも、そんな簡単には行かない。簡単に謝ることができたのなら、簡単に納得することができたのなら、今こうはなっていない、と。
それでもウルプスさんは、せめて身近な課題からでもいいから、そこからでも『分かりあうこと』を始めようと言っているんだ。
———理解し、分かりあうこと……か。
「……ご……すまん……色々と…………魔族だからって、色々言ったのは……悪かった」
まさか。本当にブランが、ヤンスに対して頭を下げるなんて……!
みんなの視線は釘付けだ。そのように変わったブランを見て、まるで見直したような目線で皆はブランを見つめていた。
「お……んふ、分かったならいいでヤンスよ、どーせそこまで気に留めてもいないでヤンスから」
「そうだ、それで……そんな子供くさい方法でだって、人間は分かり合える。それを、いつまでも忘れないでくれ。
……最も、今反乱を起こしているヤツらには、そんなこと言っても聞かないだろうが」
今の一連の話を聞いていて、僕は僕自身を肯定されたような気がした。
『人を殺さずに戦闘を終える』、そんなことだけでも、分かり合える一歩には繋がるはずだ、と。
僕たちが本当に立ち向かわなくちゃいけない敵は、同じ人間じゃない。本当の敵は神なんだ、人間の力じゃ到底及ばない存在なんだ。
だからこそ、こんなところで殺し合いなんてしてる場合じゃない。みんなが分かり合えば、それでいいはずなのだから。
だからこそ僕は、これからも不殺を徹底する。たとえそれでどんな結末になったとしても、僕は受け入れるつもりだから。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「では、再度改めての現状の確認だ。ヤンス、気が済んだのならば報告を頼む」
「……まず、この空間の外は、西大陸のどこかの森だったでヤンス。どこか湿っぽくて……おそらく、南部の沼地じゃないかと思うでヤンス。
周りにサイドツーと思しきニオイはなし……だったでヤンスが、ちょっとばかり時間が経ったので今はどうなってるか分かんないでヤンス」
「……そうか、ご苦労だった。……南部と来れば都合がいい、目的地までかなりのショートカットになった。……20分後に出発だ、私のように……排泄などに時間を要するのであれば、早めに終わらせるが良い。以上だ」
……まあ、とりあえず。これからも僕は戦わなくちゃいけないのは確かだ。……この、ヴェンデッタに乗って。
人界王を送り届ける……ただそれだけでいいんだ、だけども……僕は心配なんだ、色々と。
前教官もだし、離れ離れになっちゃった隊長もそうだけど……何より、アイツの———リコのことが。
姿が見えないから……なのもあるけど、アイツは不審な言動を何回も繰り返していた。……もしかしたら……信じたくはないんだけれども、僕の敵に回ってしまってるかもしれない。だから———、
……いや、でも……そんなに気にかけることなのか?
そもそもなんで僕は、あんなヤツのためにここまで考えてるんだ。……本当に、どうでもいいはずだろ。
たとえ、もしアイツが既に死んでいたとしても。僕には何も関係のない話じゃないか。……なんで僕は、そんなに……
「何を思い詰めた顔をしておる」
ん……あれ?
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