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屍山血河〜王都防衛戦〜
勝利の舞
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夜なのに、その暗闇よりも深き深き暗闇に染まる西の空。
全てが、光が、王都外壁方面に位置する『あるモノ』に向かって収束していた。
光はただその一点にあり。
そこにただ有ったのは、紅き線の彫られた暗黒の銃身。
———直後、朝のように辺りが輝き、そしてまた途端に暗くなる。
今度はどこにも光はなく、暗く、暗く。どこまでも広がる夜空のような暗闇が、その空間を覆った。
暗闇の混沌の中に一閃。雷鳴のように轟いた。
閃光のように煌めいたソレは、確実に———貫いた。
白く染まった視界が開けるにつれて、Ξ標的2体の巨体が見えてくる。
……ソレはまさに、球体の中に太陽でもできたかのような、そう思わせるほどに紅く、そして山吹色に染まりつつ、溶けながら崩壊を始めていた。
『———ちら、…………指揮……機!…………ラス1に……達! 新旧Ξ…………の完全破……に成功、繰り返す、新旧Ξ標的、2機の完全破壊に成功! 全部隊、第二次防衛ラインまで後退との命令が出た!
アヴェンジ小隊及び第0機動小隊Ξ標的攻撃班の3機は、ヤツらの群れを迂回して最終防衛ライン付近に後退、そして補給を行え! 王都作戦司令部からの命令は以上だ!』
雑音ばかりのノイズから回復した今の声———は、ライ教官の声だ。
そ……っか、僕たち……やったんだ、もはやどうなったのか、そんなの分かんないけど……がんばったんだ……!
「っ、はあ……あ……あぁ……生きた……生きた、生きた、生きてる……! 生きて、ヤツを……倒したぞ……!」
『コーラス7、無事だったか……!……君は僕の手で連れて帰る、今までよく耐えたな……!』
見上げれば、閃光に紅く染まりつつある空。
しかして東より姿を晒すは、黎明の暁。白く瞬く太陽が、もはや平野と化した地平線の先より出でる。
「もう、朝……か、そんなに……戦ってた、のか……」
唖然とするも、まあそんなことは気にはならなかった。
「———あ、ありがとう……ございます」
視界が回転する。
見下ろした先には、僕のサイドツーの腰を片手で持ち上げている機体があった。……隊長の機体だ。
『気にするな、本作戦の功労者は……多分君だ、ならば僕には君を無傷で連れて帰らせる責任がある、というものだろう』
「……もう既に、僕は傷ついてますし、貴方は隊長なので元からその責任があるは———」
『今の言葉は聞かなかったことにしてくれ、隊長命令だ』
◆◇◆◇◆◇◆◇
———眠っていた。
あんなことがあった直後に寝れる———普通はそんなワケないのだが、それでも僕は眠っていた。
終わった、という安堵。
落ち着きと、安寧を取り戻した僕の心は、ようやく自身の疲労を認識してくれたらしい。
『……もう……着いたけど』
「あ———」
ぼやけて見えづらい視界。
見上げた空は、既に青白く澄んでいた。
『……君は機体の損壊がすごい、君がいいなら格納庫まで直接送り届けるけど———』
「お願い……します、わがまま……ですけど、もう…………動けそうにないので……っ?!」
見下ろした先、防衛線の下側には、未だ戦い続ける数百機ものサイドツー、そしてそれらに押し寄せる神話的生命体の大群が。
しかしサイドツーはその各々がコンビを組み、自らの死角をコンビによって補いながら戦い続ける中。
そんな中で、僕の目を一際引くとあるモノがあった。
「人……人、が、生身で戦ってる……」
『……アレはイレギュラー。魔王軍との戦争などで生身で戦い続け、極限まで身体能力、または魔術的技能を極めた者のみがああして生身で戦場に立つ事を許される。
そしてその、戦場に生身で立ったものこそイレギュラーと呼ばれる存在。……人でありながら、人とは違う力を持ち、民衆とは違う理で生きる者たち。それがイレギュラー』
「じゃあ、セン隊長は……違うんですか、あなただって、魔王を倒したパーティ中の1人だって……」
『———僕は……確かに君よりかは強い、けど……今の僕は存在覚醒に至ってないが故に、その実力を満足に発揮することができないんだ。だから今は……ここにいる。
……君を格納庫まで連れて行くのが僕の役目だからね、もうちょっとだけ待ってくれ』
全てが、光が、王都外壁方面に位置する『あるモノ』に向かって収束していた。
光はただその一点にあり。
そこにただ有ったのは、紅き線の彫られた暗黒の銃身。
———直後、朝のように辺りが輝き、そしてまた途端に暗くなる。
今度はどこにも光はなく、暗く、暗く。どこまでも広がる夜空のような暗闇が、その空間を覆った。
暗闇の混沌の中に一閃。雷鳴のように轟いた。
閃光のように煌めいたソレは、確実に———貫いた。
白く染まった視界が開けるにつれて、Ξ標的2体の巨体が見えてくる。
……ソレはまさに、球体の中に太陽でもできたかのような、そう思わせるほどに紅く、そして山吹色に染まりつつ、溶けながら崩壊を始めていた。
『———ちら、…………指揮……機!…………ラス1に……達! 新旧Ξ…………の完全破……に成功、繰り返す、新旧Ξ標的、2機の完全破壊に成功! 全部隊、第二次防衛ラインまで後退との命令が出た!
アヴェンジ小隊及び第0機動小隊Ξ標的攻撃班の3機は、ヤツらの群れを迂回して最終防衛ライン付近に後退、そして補給を行え! 王都作戦司令部からの命令は以上だ!』
雑音ばかりのノイズから回復した今の声———は、ライ教官の声だ。
そ……っか、僕たち……やったんだ、もはやどうなったのか、そんなの分かんないけど……がんばったんだ……!
「っ、はあ……あ……あぁ……生きた……生きた、生きた、生きてる……! 生きて、ヤツを……倒したぞ……!」
『コーラス7、無事だったか……!……君は僕の手で連れて帰る、今までよく耐えたな……!』
見上げれば、閃光に紅く染まりつつある空。
しかして東より姿を晒すは、黎明の暁。白く瞬く太陽が、もはや平野と化した地平線の先より出でる。
「もう、朝……か、そんなに……戦ってた、のか……」
唖然とするも、まあそんなことは気にはならなかった。
「———あ、ありがとう……ございます」
視界が回転する。
見下ろした先には、僕のサイドツーの腰を片手で持ち上げている機体があった。……隊長の機体だ。
『気にするな、本作戦の功労者は……多分君だ、ならば僕には君を無傷で連れて帰らせる責任がある、というものだろう』
「……もう既に、僕は傷ついてますし、貴方は隊長なので元からその責任があるは———」
『今の言葉は聞かなかったことにしてくれ、隊長命令だ』
◆◇◆◇◆◇◆◇
———眠っていた。
あんなことがあった直後に寝れる———普通はそんなワケないのだが、それでも僕は眠っていた。
終わった、という安堵。
落ち着きと、安寧を取り戻した僕の心は、ようやく自身の疲労を認識してくれたらしい。
『……もう……着いたけど』
「あ———」
ぼやけて見えづらい視界。
見上げた空は、既に青白く澄んでいた。
『……君は機体の損壊がすごい、君がいいなら格納庫まで直接送り届けるけど———』
「お願い……します、わがまま……ですけど、もう…………動けそうにないので……っ?!」
見下ろした先、防衛線の下側には、未だ戦い続ける数百機ものサイドツー、そしてそれらに押し寄せる神話的生命体の大群が。
しかしサイドツーはその各々がコンビを組み、自らの死角をコンビによって補いながら戦い続ける中。
そんな中で、僕の目を一際引くとあるモノがあった。
「人……人、が、生身で戦ってる……」
『……アレはイレギュラー。魔王軍との戦争などで生身で戦い続け、極限まで身体能力、または魔術的技能を極めた者のみがああして生身で戦場に立つ事を許される。
そしてその、戦場に生身で立ったものこそイレギュラーと呼ばれる存在。……人でありながら、人とは違う力を持ち、民衆とは違う理で生きる者たち。それがイレギュラー』
「じゃあ、セン隊長は……違うんですか、あなただって、魔王を倒したパーティ中の1人だって……」
『———僕は……確かに君よりかは強い、けど……今の僕は存在覚醒に至ってないが故に、その実力を満足に発揮することができないんだ。だから今は……ここにいる。
……君を格納庫まで連れて行くのが僕の役目だからね、もうちょっとだけ待ってくれ』
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